力を持たせること
陛下との面会の準備が済むと、外務系の貴族が呼び出され王座の間に集まる。
ちなみにだが、俺はその中に参加せず少し離れた場所からそれを静観している。
ここは、貴族の子弟に見学させる場として作られたところだ。
もちろん王座の間からはとても見えづらい場所であり、拝謁者がこちらに気付くことはまずない。
今回はグラスに頼んで俺以外がいないようにしてもらった。
「アジニア皇国、外交政務官フシュン殿がお見えになりました」
衛兵がそう告げると扉が開いていく。
そして、アジニア皇国の伝統衣装に着替えたフシュンとフォンレン、その部下数人が入り、王座の前まで進み、跪く。
「陛下におきましてはご機嫌麗しゅう、私はアジニア皇国外交政務官フシュン・セン・ギジュンであります」
定例の口上を述べる。
もちろん、その他も同じように名前とどのような身分かを説明する。
「長旅、ご苦労」
陛下の口があくと同時にとてつもなく大きな気配を感じる。
(王の威厳か)
長年、王座に君臨してきた重さを感じさせる。
「それで、フシュンよ、此度我が国を訪れたのは魔道具を買うためのみか?」
「いえ、もう一つ、魔道具の製作者にお褒めの書状を渡すように言いつけられております」
「ほぅ、では、もう会ったのか」
「はい」
すると陛下の顔がほころぶ。
「どうだった、アレは次世代の傑物だったであろう」
「真に」
………毎度思うけど、なんで陛下は俺に対して好印象なんだよ。
その後も、道中での食事や風景、アジニア皇国での生活での雑談をいったん挟む。
そしてついに本題に入った。
「バアルに聞いたのだが、お主たちはバアルを国に招待したいらしいな?」
「残念ながら、私はそのような言を陛下より賜っておりません」
すると二人の視線が跪いている、フォンレンに向く。
「発言をお許しください」
フォンレンがそういい陛下に許可を取る。
この場ではフォンレンは一介の商人でしかない。
なのでこのような場では許可を取る必要がある。
「話すがよい」
「はい、我が皇帝は魔道具の製作者に甚く興味をお持ちです、なのでもし機会があれば我が国にとのことです」
「では招待したというわけではないのだな」
「こちらにぜひ来てほしいという意図があるのはご理解お願いします」
フォンレンはそういい陛下に物申すが。
「では国からの正式な招待ではないのだな?」
「ええ、今は」
もちろん、場合によっては国から正式に招待されるだろう。
「さて、先ほど言った通りバアルはこの国の大事な宝だ」
「お聞きしました」
「はっきりというがお主の国の現状が知れないまま、要請を許可できない」
これにフォンレンは何かを言おうとするが、再び口を閉ざす。
心証を悪くしてでも擁護するタイミングではないと思ったのだろう。
「だが、もちろん交友を取りたいとする部分はやぶさかではない、そこでだこちらからも大使を派遣しようと思う」
「それでは!」
「待て、こちらとしても大使の選定やなどで時間を取られるゆえ、すぐにはとはいかん、だからの
こちらが準備を整ったときにフシュン政務官に人を送る」
これで俺の予定通りに話が進めることができた。
「陛下一つだけよろしいですか?」
するとフォンレンが陛下に声をかける。
「なんだ?」
「フシュン殿のみですと万が一にも連絡取れない場合があります、私も窓口に加えていただけないでしょうか」
当然ながらフォンレンからしたらフシュンが力を持つことは歓迎しない。
「お主は商人だろう?」
この言葉にはフォンレンは何も言えない。
それほどまでに立場というのは大事なのだ。
「フォンレン殿、貴殿の国の現状はある程度調べている、ただでさえ人手不足な中で貴重な人材を事故や病でなくすことを良しとするのかね」
今度は宰相が話しかける。
この言葉には、『自分たちの首を絞めると分かっていて、それを行うのか?』と言っているのだ。
「もちろん、我が国からしたら数人選んだほうがいいだろう、だが
要人一人守ることができないで他国の要人を招待できると思っていないであろうな」
この言葉により、アジニア皇国はグロウス王国とつながりを持つためにフシュンを殺すことができなくなった。
「それでは、フシュン殿、後程に陛下より書状が送られますのでお残りください」
これにより俺の予定通りフシュンに力を持たせることに成功した。




