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落としどころ

「反応がありませんでしたね」


リンが馬車の中で言う。


「ああ、本当に通り魔の可能性が出て来たな」


信じたくはないが、そんな偶然もあるかもしれない。


「それで一つ気になっていることを聞いていいですか?」

「なんだ?」

「バアル様の落としどころはどこなんですか?」


リンは、俺の意図が読めないという。


「再発防止なら今回の聴取で十分釘を刺せたと思います、ですがバアル様はそれで終わらそうとは微塵と思っていない様子、これ以上何を望むのかと」


リンは俺を見つめ返す。


「そうだな、俺としてもこれで終わらせてもいいとは思っている、だがな」


俺は皇帝から受け取った書状を見る。


「これに隠された意図が友好的なものだとは限らないからな」


俺と、この皇帝が殺し合う可能性がないわけではない。


もしあったとして、相手側は俺の情報を持っているが俺が持っていないじゃ話にならない。


「だから俺は向こうの情報源となる存在を作ろうとしているんだよ」

「それがあの二人だと?」

「いや、一人だな」


現状、情報源となりえそうなのは一人しかいない。


「フシュンですか」


俺は肩をすくめる。


裏の騎士団が協力するのは他国の争いを持ち込んでほしくないこととと国益につながる有益た情報を入手すること。


俺の目的は襲撃を阻害することと、敵になるかもしれない皇帝の情報言を集めたい。


「さて、セレナの襲撃が誰なのか知りたかったのだが、完全に頓挫(とんざ)することになるな」

「ですね」


二人への容疑は晴れたが、な微妙に納得がいかない。


「とりあえず、フシュンと接触する」















ということで次の日に俺はフシュンを呼び出す。


だが、今回は王城ではなく、王都にあるゼブルス家の屋敷に呼び出した。


「今回は何の御用でしょうか?」


何度も呼び出しをしているので印象はあまり良くない。


「実はフォンレンから皇帝に会ってほしいと要請がありまして、そのことについてのお話です」


一瞬フシュンの顔に驚きが走った。


「どうやら知らなかったようですね」

「お恥ずかしながら」

「ですが、政務官である貴方がこの話を知らないということはフォンレンの独断による話なのでしょうか?」


フシュンは答えづらそうにする。


それはそうだろう、彼は国に尽くすが現皇帝に尽くしているのではない、むしろ未だに前皇帝に対して忠誠心を持っていると言っても過言ではない。


「それは分かりかねます、本当皇帝がそのようなことをおっしゃったのかは……書状などあるなら話は別でしょうが」

「そうですね、私も現皇帝からお褒めの書状を受け取りましたが、招待に関してはフォンレンの口からしかきいていないので」

「では、やはり確証とは言えません」


フシュンの表情に戸惑いの顔が浮かぶ。


なぜこのような話をしているのかと。


「なるほど、他国からの、それも皇帝からの要請を政務官ならいざ知らず一介の商人が持ってきたのですか」


言葉の裏に立場ある人間に不確かな招待に乗るわけがないと伝える。


「ええ、そうですね、何が何だか」


フシュンは未だに俺の意図に戸惑いを持っているのだろう。


「一言でいえば、俺はフォンレンが信用できないということだ」

「!?」


こういえばある程度はフシュンも理解しやすくなるだろう。


「もっと言えば俺は現皇帝も信用できない」

「不敬と考えないんですか?」

「は!この国でフォンレンを殺そうとたくらんだ奴が何言っているんだ」

「!?……気づいておいででしたか」

「やってきて数か月もしない者が長年この国で根を張った奴らにかなうと思っているのか?」

「そうでございましたね」


そう言うとフシュンは恰好を正す。


「バアルさまの言う通り、私は政務官でありながら、現皇帝をよく思っておりません」

「だから、現皇帝に近しいフォンレンを殺そうと?」


フシュンはゆるぎない瞳で頷く。


「それでバアル様、本題(・・)に入っていただけませんか」


フシュンも俺の本心をなんとなくだが理解している。


「じゃあはっきりと言おう













俺と手を組め」

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