引っかかる言葉
「さて」
「がっ!?」
目の前にいる男の頭を掴み持ち上げる。
「さて、あとはお前と外にいる5人か」
「!?」
既にサーモグラフィーとソナーで周囲の様子を把握積みだ。
組の者は俺が戦っているときはできるだけ遠くにいるようにしているので敵の数がわかりやすい。
「お前たちの目的はなんだ?まぁ大体予想はできるけどな」
ガシャン
腕の機関銃を収納し、今度は狙撃用の銃口に換装する。
「一人」
ドォン
窓を突き抜けてこちらを覗いている一人の脳天を弾丸が通過する。
「二人」
ドォン
次は木製の壁の向こうにいた一人の心臓を打ち抜く。
「三人目と四人目」
カシャン、ドォン
今度は弾を変更し、隠れている場所のすぐそばに打ち込み、弾丸を起爆させ散弾のように破裂させる。
「残りは一人か」
残念ながら最後の一人は直線的にも曲線的にも間接的にも攻撃しにくい場所にいるのでとりあえずは放置する。
「さて、とりあえず邪魔だから死んでもらおうか」
「っ!?」
だが頭を握りつぶそうと出力を上げた瞬間、何かが真下から迫ってくる。
突き出てきたのは四角い岩の塊だ。
それが腕に当たり、男が手から離れて距離を取られる。
「ゲホッゲホッ、はぁ~助かったぞ」
「おい、あんたたちがここまでやられるのは初めて見たぞ」
いつの間にか男の背後には同じ格好の男がたたずんでいた。
「時間になって来てみれば殺せてないみたいじゃないか」
「ああ、悔しいがこいつに俺ともう一人以外やられてた」
「へぇ~」
新しく現れた方の男はこちらを品定めする。
「とりあえず退くぞ」
「対象を殺せていないぞ」
先ほどまで掴まれていた方は再度挑もうとするがそれをもう一人が止める。
「やめだ、そっちよりも重要な対象が現れた、しかも少し厄介でな頭数が必要だ」
「了解だ」
逃げる体勢に入るので即座に距離を詰める。
「『闇隠し』」
何かしらの魔法を使用すると周囲に一切光が存在しない空間が出来上がる。
(ダメだ、普通の光だけじゃない赤外線全ても通さない)
なので光以外の探知方法で周囲を確認するが、既にどこかの人ごみに隠れたようなので追跡できない。
「仕方ない」
そのまま通路を戻り4人が無事か確かめる。
「だいぶ大きな音が聞こえましたが大丈夫ですか?」
「ああ、だがすぐに場所を変えるぞ」
少し戦闘で音が響きすぎた、多くの人員がこちらに向かってくる存在を感知している。
おそらく衛兵だろう。
「場所を移すぞ」
「そうですね、ここに居てもめんどくさいことになるだけですしね」
と言うことで全員で違う店に移動することになった。
結局、あの後場所を変えたが、戦闘の影響で様々な部分に衛兵が蔓延る事態に陥り交渉中断になった。
「で、話とはなんだ?」
今は自室でルナの報告を聞いている。
「実は少し前にスラム街で騒ぎがあったのをご存じですか?」
いや、知っているも何も現地でドンパチやったわ。
「一応報告には上がっているな」
「そして話は変わりますが、最近バアル様に接触したアジニア皇国の商会長と接触しましたね?」
「ああ」
この事からある程度俺について調べているのは確定した。
「で?それがどうした?」
「実はスラム街の事件でどうやらアジニア皇国のジュウという武器が使われていたようなのです」
おそらく死体のジュウを見聞したのだろう。
(まぁ死体まで片付ける暇はなかったからな)
だがこれで表の方でも動きやすくなる。
「つまり、フォンレンが今回の件に関与している可能性があると?」
「フォンレンというのですね」
ルナは俺の意図に気づいてくれたようだ。
(これでロンラン商会を調べてくれるだろう)
すでに数日前の件はキラでフォンレンとフシュンの内部分裂による事件だとわかっている。
だが最後につぶやいたあの言葉。
『やめだ、そっちよりも重要な対象が現れた、しかも少し厄介でな頭数が必要だ』
この言葉はつまりこの国でほかにやることができたということだ。
(裏の騎士団が警戒するなら奴らも動きにくくなるはずだ)
「では、続報があり次第また連絡しに来ます」
ルナが部屋を出ていく。
やはりルナだけでは少し不安だ。
(少しだけ手伝うとするか)




