革命の障害
その夜、いつも通りキラの方でアルガに会いに行く。
「それで話ってなんだ、しかもこんな場所で」
今来ているのはスラム奥深くの隠れ家ではなく、息のかかった店の一つだ。
「実は勝手ながら件の輩と接触しまして」
なんでもあちらから接触があり、なにやら依頼があるらしい。
「安全か?」
「ご心配なく、周囲に組の者を100人以上配置しておりますので」
キラの体に備えているセンサーで店の中だけでなく隣の建物にも多くの人員がいるのが見て取れる。
そしてしばらくすると俺たちのいる席に腰掛けてくる存在がいた。
「エールとミルクどっちが好みだ?」
「どっちでもない、しいて言えば血のようなホットワインだな」
このやり取りは符号と同じ役割をしている。
「あなたですか、よろしければ顔を見せてもらえませんか?」
「……もう少し人目のない場所じゃなければ無理だ」
「わかった」
アルガが店員に話を付けるとローブとその護衛と共に奥の空間に移動することとなった。
「ここならどうでしょう?」
返答代わりにローブを脱いでくれる。
「さて、では自己紹介と行きましょうか、私は『夜月狼』の副総督、アルガです」
「……フシュンだ」
ローブを脱いだ男はどことなくフォンレンに似た装飾品を身に着けている。
「それでは早速話し合いに入りましょうか」
フシュンの護衛である二人が何かを取り出し机に置く。
「これが交渉のものです」
机に置かれたのは前世でずいぶん見慣れたものだった。
「名はヒナワジュウといい魔力を使わずに人を殺す道具です」
フシュンの護衛はそれを20丁取り出し、使い方を説明していく。
「まずは火薬を込めて、次に弾丸を込めます」
棒を取り出し、火薬、鉄弾という順番で筒の中に込めていく。
「次に火縄を火ばさみにはさみます、本来ならこの時点で縄に火をつけておきます」
今は説明のみなので火はついていない状態だ。
「あとは狙いを付けて引き金を引く、これだけです」
「ほう」
アルガはこちらに視線を向けてくる。
「これだけか?今の話だと火薬の部分が重要になるだろう?」
「もちろん、それなりの火薬もつけてますよ」
「なるほど、ではそちらの要求を聞きましょう」
すると一つの細かい男の絵を差し出してくる。
「我々が依頼したいのはこの男を暗殺してほしい」
「詳細をおねがいできますか」
「……名前はフォンレン、ロンラン商会の現会長だ」
「一応暗殺の理由をお聞きしても?」
すると護衛の一人が刀を抜こうとするがフシュンが止める。
「受けてもらえるなら話しましょう」
「困りましたね、こちらとしてもどんな人物かわからない段階で暗殺の依頼を受けることはできないのですが」
双方がにらみ合う。
俺達はどんな勢力に属していてどの立ち位置にいるのかわからない相手には極力触れたくない。
相手側も対象の素性を放すことにより自分たちがどの陣営にいるのかを教えてしまうため話したくない。
「「………」」
両者とも均衡を保つように思われたが。
「フォンレンはロンラン商会会長。そしてロンラン商会はアジニア皇国での王族御用達商人に抜擢されております」
重い口を開き素性を放してくれる。
「へぇ~王族と縁があると?」
「はい、フォンレンは現皇帝が即位する前、革命する際に支援する商人の一人でした」
そこから説明が始まる。
フォンレンは革命当初から協力していた人物の一人で、この人物がいなければ革命はできなかったと誰もが口をそろえるほどの人物だ。
「へぇ~」
「陛下の覚えがめでたいそんな存在を暗殺ですか」
なんとなくこいつらの素性がわかってきた。
「おそらくある程度は予想で来ていると思いますが、我々は先代皇帝に忠誠を誓っていた者どもです」




