三者三様
(さっきのウォーウルフよりも強いが…)
ステータスの値を見る限り俺の方が有利に見感じるのだが…
「オヌシラガチョウセンシャカ」
俺らがある程度進むと立ち上がり話始める。
「しゃべれるのか」
「イカニモ、ワレハコノサイオクヲマモルシュゴシャナリ」
「つまりここがダンジョン最後のステージなのか?」
「ソノトオリダ」
意外と少ないんだな。
「マスターニガイスルモノヲハイジョスル、イザ!ジンジョウニショウブ!」
この三面武者はぼやけると一つは短い刀と刀を、一つに槍を、一つに大きな日本刀を持っている武者へと分かれる。
「誰がどこを相手にする?」
俺がこう言うと自然と組み合わせが決まった。
「某はこの大刀を」
「では私はこの双剣を」
あとは残っている槍の奴しかないか。
「ドレヲアイテニスルカキマッタカ」
「ああ、じゃあ始めよう」
俺たちはいっせいに襲い掛かる。
「「「ショウシ!」」」
俺は繰り出される突きを紙一重でかわす。
「残念だけどこのスピードなら全然問題ない」
武者は50近いAGIを持つが俺は85にもなるから余裕で回避できる。
「……ダガギリョウハソコマデデハナイナ」
やっぱりそこは見破られるか。
ちなみにDEXは武器の技量に関係ない。あくまでこれは自分をどれだけイメージ通りに動かせるかの値だ。
「それでもお前に勝つことはできるぞ」
「ナラヤッテミセロ」
そういうと同時に槍が繰り出される。
「じゃあお望みどおりに」
俺は槍のギリギリの範囲で避けると、引くタイミングと同時に懐に入り込む。
「ナ?!」
「はい、終わり!」
俺はユニークスキルで瞬間的に強化して、掌底をぶち込み仮面を壊す。
すると槍を持っていた二本の腕が崩れ去る。
(さてほかの二人は)
「「「ショウシ!」」」
その言葉と共に大刀が私に向けて叩きつけられる。
「ム?!」
私は一番得意な技、『風柳』を使い受け流す。
「…ナニヲシタ」
「何もしてない、ただ受け流しただけでござるよ」
風柳、私が最初に覚えた翠風流の技だ。
この技は柳のように衝撃を受け流す。無論すべての衝撃を受け流すことは容易ではない、あくまでも衝撃を和らげるための技法だ。
だが私は自己流に改良し、ほとんどの衝撃を受けないようにできるようになった。それでも少しの衝撃は食らってしまう、その場合は特殊な足さばきをしてその衝撃を地面に逃がす。
これによりほぼすべての衝撃を無効化することができるようになった。
それからも何度も刀が振り下ろされるがすべてを風柳で受け流すことができた。
(ステータスが上がっているからか、そこまで強くは感じなくなったな)
これだったら一つ前の狼の方が手ごわいと思うリンだ。
「しまいにしましょう」
「ナメ」
リンは刀に魔力を流し『刀鋭』『風迅』をしようする。
前者は魔力を費やした分、刃は鋭さを増す効果を持ち、後者は高速移動と同時に切り終わるスキルだ。
なので武者は目の前にリンが現れたと思った瞬間に仮面は二つに割れ、斬撃上にもあった大刀もきれいに折られていた。
「……ミゴト」
「「「ショウシ」」」
(これは正直厳しいですよ若様!)
私はもらった魔剣と自前の剣を構え、防戦に徹する。
「チカラハマダマダダガギリョウハスバラシイナ」
「ありがとよ、これでも騎士の中では有望株で通っているんだ。自分の得意な双剣で負けたら立つ瀬がないだろう」
私は本来、双剣で通っていたのだがすこし前に一本剣を折ってしまって仕方なく剣一本で戦っていたのだ。
(だけど、このままじゃまずいな)
若様たちが勝負をつけて援護に来てくれるまで粘るつもりだったが予想以上にステータスの差がひどい。
『なんだよ~次はこんな軟弱な奴が俺の使い手かよ』
知らない声が聞こえるが、今はそんなことにかまっている暇はない。
『つれないな~これぐらい片手でいなして見せろや!』
すると勝手に魔剣が魔力を吸い上げる。
「なっ!?」
『ほらよ!闇魔装!』
狼の時とは違い勝手に魔装が発動する。
それと同時に何かが頭に入り込んで来る感覚がある。
「ちょ……やめ……」
『俺の復讐を終えるまで死んでもらったら困るんだよ~』
すると自然と体が動く。
「ム、サキホドヨリモツヨクナッテイル」
「ギャハハ、これくらいの腕で誇っているんじゃねえよ雑魚が!」
遂には勝手に口が回り始めた。
(なにが)
「そんなこと考えるよりも目の前の敵をよく見ろ!」
私は勝手に動く体に困惑する。
だがその動きはとてつもなく、経験、知識、予想すべてが完璧に行われている。
『いいか~ステータスで負けるんなら技能で勝て!技能も同じなら頭で勝て!頭も同じなら心で勝ちやがれ!こんなことも分からないならさっさと武人をやめちまえ!』
なぜだかこの言葉が頭に残る。
片手ずつ生きてるかのように動かし、時には逆手に変え、変則的にその時その時に合わせてスタイルを変える。
(こんな剣が…)
「知らないってか?てめぇの知識ですべてを決めるな、お前が思っている以上に剣の道は広く深いぜ!」
まるで未来が見えているように武者を追い詰めていく。
「しっかしここまで俺と適応するとはな」
(適応だと?)
「ああ、適応してないと俺が体を動かそうとするときに拒絶反応が起きて動けなくなるんだ」
(私の体では動きが止まるなどは一度も起こってないが?)
「だから、なぜだかかなり深いところまで適応できているんだよ」
なんか寄生されているようで嫌な感じがするのだが。
「適応できてないと様々な害が起きるが、高ければなんも問題ない」
(おい!安心できないぞ!)
「だから大丈夫だって俺の復讐に付き合ってくれるなら俺も邪魔しないからさ……それよりも終わるぞ」
私は再び武者に意識を向ける。
「ナニヲサッキカラブツブツト」
「すまんな、独り言だ。それよりも飽きたから終わらせるぞ!」
すると両方の腕と足に魔力がこもっているのがわかる。
「じゃあな!『レイジングクロス』」
するといつの間にか武者に背中を向けている。
「ナンノツモリダ」
「もう終わったからな」
するといくつもの剣撃が同時に仮面の部分で炸裂する。
(なにが…)
「俺が使える技の一つ『レイジングクロス』、まぁ簡単に言うと遅延する衝撃を敵に与え、衝撃を弱点の部分で集中させて炸裂させる技だな、双剣など一撃が弱い武器には最適だ」
すると体の感覚が戻ってくる。
「おっと、もう時間切れか。じゃあこれからもよろしくな相棒……おい待て!」
支配されている感覚が完全に消える。
(なんなんだあいつは…)




