よっしゃー!お酒だ!⇒ちょっとは気を使え!!!!
「そう言えば神樹の実は手に入れているんだよね?」
「ああ、既に食べたけどな」
「てことは花弁は手に入れてないのか?」
花弁?
「これのことか?」
亜空庫からイピリアが取ってきた花弁を見せる。
―――――
神樹の花弁・金糸雀
★×5
一年に一度、神樹にささげられた魔力を栄養に生まれた花びら。ささげられた魔力により色が変わる。色合いと同じ属性に対して耐性を持ち、加工するとそれその物に耐性が生まれる。
―――――
モノクルで見たらこのようになっている。
実よりは価値が低いがそれでも★×5の価値がある。
「それでこれがどうした?」
「いや、君はそれをどうするんだろうなと思ってね」
使い道か…………
「今のところ売る以外ないな」
薬品にもできなさそうだし、繊維にして加工という手段も知らない。
(あとは観賞用とかしか思い浮かばないな)
「もしよかったらこっちで加工しようか?」
「ん?いいのか?」
「もちろんさ、他のも一気にやっちゃうから一枚増えてもほどんど変わらないさ」
一枚も二枚も関係ないと言ってくれる。
「ちなみにノストニアは何にするんだ?」
「染料か酒だね」
話を聞くと染料は塗った者に対して少しだが耐性を付与するもので、酒は飲んだら一時的に色合いの属性の耐性が付くのだとか。
「それ、染料の方が良くないか?」
長く使える染料なら、短期間で終わる食用酒よりも価値があると思うんだが。
「あ~まぁ効果が同じならそうなんだけどね」
染料の方は耐性が激減するのだとか。
「酒の方は、お酒を飲んで酔っ払った一人が溶岩で泳いでいたって話があるくらい耐性が強くなる」
たしかにそれなら酒のほうが有用性ありそうだな。
「どれくらいかかる?」
「作るのに約二日ほど、そしてあとは熟成させるのに一年以上かな」
別に今すぐ飲む必要はない。
「うまいのか?」
「神樹の花弁で造ったお酒だよ、極上の甘露さ」
味も千差万別でとてつもなくおいしいのだとアルムは言う。
話を聞けば迷う。
「どの耐性になるかわかるか?」
「この花弁だと強力な【雷耐性】と若干の【風耐性】だね」
となると。
「酒にしてもらっていいか」
「了解だ、飲むときは僕も呼んでくれよ」
こうして酒ができるのが待ち遠しく思う。
それから数日、グロウス王国に行く日がやってきた。
「この度は招待していただきありがとうございます」
「楽しんでもらえたようで何より」
城の門前で僕たちは出立のあいさつに来ている。
(あの野郎)
今俺はアルムのことを睨んでいる。
理由はお酒だ。
(確かに俺は子供だがな!!そこはこっそりと俺に渡せよ!!)
よりにもよってアルムは両親がいる前でお酒を渡しに来やがった。
すると当然母上が見逃すわけがなく、没収と説教を喰らう羽目になった。
(いつかやり返してやるからな)
「バアル君」
父上とアルムが挨拶している間、俺の下に先王様がやってくる。
「クラリスを面倒見てやってほしい」
「はい、もちろんです」
先王の顔は心配そうだがうれしそうな顔になっている。
「クラリス、何かあったらいつでも戻ってらっしゃい」
「はい、ママ」
クラリスはクラリスで皇太后様と抱き合っている。
(なんか本当に嫁に出す雰囲気だな)
あくまで問題に巻き込まれないように婚約しているだけと知っているのか、と尋ねたくなる。
それほどまでに皇太后様の雰囲気が様になっている。
そして一通りのあいさつが終わったのか、俺たちは馬車に乗り込んでいく。
「ではまた来てくれ」
「お世話になりました」
こうして俺たちは国に戻っていく。




