神樹の実の力と副作用
「はぁなんだかすごい存在みたいだね」
『じゃろう、小僧儂を敬ってもよいぞ』
「…………」
笑顔は変わってないが心象はだいぶ変わった。
「とりあえずこいつは置いておいて、俺を呼び出した本当の理由は?」
新しく森王になった存在が忙しくないわけない、俺の精霊を見たいというのは方便だろう。
「そうだよ、僕から君に頼みたいのはグロウス王国の内情を話してほしい」
堂々と情報をよこせという。
「もちろん見返りも用意するよ」
すると紙に包まれた果実を取り出す。
「鑑定してご覧」
お言葉に甘えてモノクルで鑑定する。
―――――
神樹の果実・翡翠
★×6
『魔力染色』『魔力拡張』
一年に一度、神樹にささげられた魔力を栄養に生まれた実。ささげられた魔力により色が変わる、自身の色を理解している物には多大な恩恵が生まれるであろう。なお色を理解していないものは苦痛が与えられる。
―――――
翡翠色のほかに紅色、深青色、焦茶色とそれぞれ違うものがある。
「『魔力染色』と『魔力拡張』か」
「その通り、『魔力拡張』は食べた者の魔力を増やしてくれる」
「なんで俺に?アルムが食えばいいだろうに」
すると肩をすくめる。
「実はそれができないんだよ」
「どういうことだ?」
「理由はもう一つが関係している」
説明によると『魔力染色』とは魔力の属性を強制的に変えてしまうものらしい。
「同じ色の場合はただ魔力が増えるだけで変化がない、むしろ今までより魔力の質が上がる」
多くの恩恵を得られるのだが自身と全く同じ色の果実を見つけるのは難点だという。
「反対に全く違う色の果実を食べたとしよう、その場合は魔力は増幅するのだが、根本の魔力が書き換えられていく」
そのため契約していた精霊は全く力を出せなくなり、果ては契約破棄されることもあるのだとか。
なので精霊は自身にあった色合いを確保し、契約主に食べてもらうという。
(あれだな、家畜の肉質をよくするのに似ているな)
思わずその光景が頭をよぎる。
「それにあれ、めちゃくちゃ痛いんだよ」
「どれくらい?」
「…………体を切り開かれて内臓を無造作にかき混ぜさせるような痛み」
やけに具体的な答えが返ってきた。
「……体験したのか?」
「……………一度だけね」
だがそのおかげで四体と契約できたという。
そしてここで一つの疑問が浮かび上がる
「アルムはどんな色なんだ?」
「僕?僕は四色持ちだよ」
意味がわかない。
「たまにいるんだよ色が混ざらず、複数の魔力を持っているエルフが」
イメージで説明すると、水性の絵の具で満遍なく色付けされた紙があるとしよう、その色合いが属性比重だとする。
通常は一枚の紙しか持たないのだが、まれに複数色持ち合わせる存在が生まれる。
例えば右側が赤で、左が青色といった具合にだ、それは混じることがなく双方違う色として存在できる。
それでいうとアルムは四つ均等に分かれており、それぞれに精霊に適した色になっているのだとか。
「だからこの比重を崩したくないんだよ」
だが『魔力染色』とは紙全体に新たに色を加えることと同じだという。
いまちょうどよく調和した状態に色を加えてしまえば、せっかくの精霊が使えなくなるかもしれない。
「じゃあ全部食えば?」
「それもできない」
もちろん食べることはできる、だが『魔力染色』は区分関係なく染色される。
なので結局は比重が崩れて精霊が弱くなるという。
「これが父さんみたいに一体の精霊だったら関係ないんだけどね」
なのでアルムは食べることができず、これに使い道がない。
「じゃあ部下に下賜すれば?」
「いや、主だった部下はすでに確保しているんだよ」
部下は部下で各々実を得ている、そこに下賜しても意味がないらしい。
「だけど人族からしたら魔力比重なんて気にしないでしょ?」
「たしかにな」
精霊と契約しようと思わなければ、食べれば魔力が上がる実でしかない。
「それで何が聞きたいんだ?」
「グロウス王国で第一王子と第二王子が争っているといったでしょ?その具体的な背景が聞きたい」
少し考えこみ、話しても問題ないと判断する。
「リンにも聞いたがなんで後継者争いが起きているんだと思う?」
「それを聞いているんだけどね……………第一王子が生まれてからユニークスキル持ちの第二王子が生まれた?…………違うね、それだったら第一王子が第二王子を取り込めばいい話だ」
リンと同じ答えを出そうとするがすぐに修正する。
「無理!情報が足らないよ」
まぁ俺がアルムの立ち位置でもギブアップするだろうな。
「正解はだな―――」




