解き放たれた、すごい?奴
『おい、もうすぐ修復できるようだぞ』
アグラの声を聞き、壊れている精霊石を取り出す。
するとひび割れていた箇所はほとんど直っていて、残っている内部のひび割れが今まさに直ろうとしている。
『ほれ、最後にお主の魔力を注いでみよ』
というので俺の魔力をいれる。
すると精霊石が帯電し始める。
「って止まらねぇんだけど!?」
精霊石の放電量がどんどん大きくなっていき、終いにはプラズマのようになってしまった。
「バアル様!!」
リンが心配して声を掛けてくる。
「リン!全員に被害が無いようにしろ」
リンは即座に風を操り俺の周りに真空の壁を作り被害を抑える。
『そのまま魔力を注ぎ続けろ』
「いや、どうなっているか理解しているのか!?」
『無論だ、お主ならそれぐらい痛くもないだろう?』
たしかに俺は雷に対してかなりの耐性を持っている。
本来なら感電死しているはずなのに俺には意味がないほどだ。
『問題ない』
アグラは寝そべり様子を窺っている。
(くそ、とことんやってやるよ)
そのまま魔力を流し続ける。
精霊石の放電量はさらに増していき、俺を囲んでいる空間内はどこを見ても雷だらけになっている。
そして終わりは唐突にやってきた。
バチッバチッシュウウゥゥゥゥゥッゥ
放電が収まり、精霊石も落ち着きを取り戻す。
「バアル様!!」
放電が収まったのを確認してリンが近づいてくる。
「大丈夫なんですか!?」
「ああ、最後辺りはさすがに痺れてきていたけどな」
最後の大雷は耐性を突き抜けてきていた、おかげで腕が少し痺れている感覚がする。
「それよりこっちはどうなってい」
『いや~助かったわい』
声の元を確認すると精霊石の上に手のひらサイズの金色エリマキトカゲがいる。
「アグラこいつのことか?」
『ああ、久しぶりだな』
『うぬ……どこかで…………』
エリマキトカゲはアグラを見上げる。
『おお!お主は泣き虫白猫か!!』
『殺すぞ』
アグラは牙を抜きエリマキトカゲを威圧するが、トカゲは全く動じない。
『ほぅ、儂に牙抜くか、覚悟はできておろうな』
『そっちこそ中級まで成り下がった身で俺に勝てると?』
会話からこの二人はお互いのことを知っているみたいだ。
『は?…………なんじゃこれは!?』
エリマキトカゲは自身の手足を見ると絶叫する。
『おい!!どうゆうことだ!?』
俺の目の前に飛んで来ると胸元を掴み揺らそうとしてくる。
「知るか、その前にお前は誰だよ」
『儂は大精霊【虹掛け雨蜥蜴】じゃ』
「知っているか?」
「知らないわ」
クラリスに聞いてみるがクラリスも知らないみたいだ。
『がっ!?』
そのことにショックを受けたのか地面に墜落していく。
『なぜじゃ……一時は信仰の対象にすらなった儂が………』
『爺がいた時から既に700年ほど経っているからな、仕方がないだろう』
エルフの寿命でも300年なので覚えている奴らはまずいないだろう。
『ようやく石から出れたと思ったら大精霊だった面影もない………今やこんな中級になりたての体なんて……………』
涙を流しながら地面でいじけているダイセイレイ。
俺達は何が何だかわかっていない。
『はぁ~4度転生したことがある精霊が今やこんな姿か』
アグラも憐憫に思っている。
『いや!儂はあきらめん!いずれまた大精霊になってやる!!!』
何やら一人で元気になると、足元から駆けあがり肩に乗る。
『ということでよろしく頼むぞ』
「……は?」
事態が飲み込めない。




