意外なつながり
生誕祭最終日。
「さてじゃあセレナちゃん!頑張って精霊と契約するわよ!」
「はい!!」
朝早くからセレナとクラリスは意気投合する。
(クラリスに関してはエルフとしての矜持があるからわかるとして、なんであんなにセレナは精霊と契約したがっているんだ?)
すこし不思議に思うが気にせず祭りを楽しむ。
初日はいかにも祭りの雰囲気に合っている売り物をしている通りを散策し、二日目は食料が多く売られている通りを散策した。
この最終日なのだがなんでもアグラが来ているらしいので挨拶しに行こうと思う。
場所は東南にある広場だと聞いている。
『あ、ぱぱ~』
東南の広場に近づくとネアが先に行ってしまう。
追いかけようとするが母上と父上を置いていくわけにもいかないのでゆっくりと進む。
東南の広場にたどり着くとアグラベルグがいた。
(図体がでかいのも不便そうだな)
距離を保たれてはいるが人混みが邪魔そうだ。
「お久しぶりです、アグラベルグ様」
『クラリスか、昨日ぶりだな、ぬ?』
アグラはクラリスに視線を飛ばした後、こちらを見て驚いている。
『いいのか?』
「何がだ?」
『クラリスと敵対していたのではないのか?』
……そういえばアグラにはクラリスと敵対していると伝えたままだっけ。
「何とか和解できたよ」
『それはよかったの、時に頼みがあるのだが』
「なんだ?」
『今度リベンジさせてくれ』
そういって口を開けて笑う。
「(………こいつもクラリスとおんなじか?)なぜ?」
『当然、聖獣の矜持からして負けたままでは納得がいかん』
理由はどうあれ、結局は悔しいだけかよ。
「バアル!?」
後ろで父上が叫び、リンが刀に手を当てて警戒する。
『そっちは?』
「俺の父上と母上、そして弟と妹、あとは護衛だな」
『ほぅ』
アグラベルグは全員を眺めて。
『おぬしがバアルの父親か?』
「はい、グロウス王国でゼブルス公爵家当主をさせてもらっています。リチャード・セラ・ゼブルスといいます以後お見知りおきくださいませ」
『…………』
「…………あの?」
アグラはなぜだか父上と俺の間に視線を行ったり来たりさせる。
『本当に父親か?』
「なぜそのようなことを?」
『髪や瞳は同じだが、強さが違う。近縁のものならある程度強さは似るものだろう?』
………どう説明したらいいのか。
「俺が特別強いと思ってもらえればいいよ」
『そうか………人族とは奇妙なものだな』
よしうまく再戦から外すことができた。
「にしてもなんでアグラはこんなところにいるんだ?聖樹のところにいなくていいのか?」
『問題ない、この時期になるとここに訪れるのが習わしだからな』
どうやら儀式的な理由でアグラはこの場所にいるらしい。
『しかし、おぬしは一段と強くなったのう』
「今のアグラに言われてもうれしくないんだが」
眼前にいるのでアグラの気配が嫌でもわかってしまう。
(明らかに俺より強いよな)
鑑定するまでもない強さがにじみ出ている。
サルカザの時、出会ったあの大蛇と同じ威圧を感じる。
「残念ながら俺にも立場がある、今は勘弁してくれ」
『ふむ……そうだな』
アグラが理解してくれてよかった。
『ふむ、そっちの二人は精霊と契約できたのか』
アグラはノエルとカリンを見ている。
「ああ、本当は他の二人が精霊と契約したがっていたんだが……」
セレナはアグラそっちの気で精霊石と周囲の精霊を気にしている。
『みたいだな』
アグラも誰なのか分かっただろう。
『しかし、懐かしい気配を感じるな』
「懐かしい?」
全員に視線を送るが心当たりがないのか全員首を横に振る。
「誰のことを言っているんだ」
『そこの狼だ』
『………俺か?』
なぜアグラはウルに懐かしい気配を感じているのか。
(………あれか?)
一つの可能性が浮かび上がる。
「それって千年魔樹のことか?」
『ほう、進化していたのか………三百年前に少し縁があってな』
長命の種族同士だ、長い年月で知り合っていることもあるのだろう。
『それで、あやつは元気にしているか』
『………じいちゃんは………いなくなった』
ウルの念話を受けてアグラは止まる。
『………死因はなんだ?』
「呪いだよ」
『呪いだと?』
信じられないと顔に書いてあるのがわかる。
「正確には森全体に敷かれた呪いを総て受けたんだ」
『……そこまでしてもあやつに効くとは思えんのだが』
「ああ、そこまでなら問題なかった。だがその呪いの元凶を叩き潰そうとしたときに……」
ここから先を言うかどうか迷う。
なにせウルの身代わりになって死んだようなものだ。
『じいちゃんは…………俺の、呪いを、肩代わりして』
『そうか………』
アグラも察してくれたのだろう。
『そうか、あやつは還って行ったか』
寂しそうな、それでいて嬉しそうな複雑そうな感情が伝わってくる。
「嬉しそうだな」
『………あやつは常々自身が長く生きる意味を考えていたからな、その答えが見つかったようで何よりと思っただけだ』
「???」
『わからぬか?答えはそこの狼、ウルにある』
ウルに?
『あやつがいかに大事にしている、理解できる。なにせそこまで強力な加護を授けているのだからな』
そういえばウルは【樹霊の加護】というスキルを持っていた。
これは千年魔樹の想いなのだろう。
『ウルよ、我が子ネアと仲良くしてやってくれ』
『わかりました』
『じゃあ!あそぼーー!』
アグラの背中で遊んでいたネアがウルの上にとびかかる。
そしてウルの悲鳴が上がる。




