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食文化の驚き

二日目、昨日通った場所とは違う場所を見ることになった。


「ひぇ!?」


セレナがある露店を見ていると悲鳴を上げた。


「どうした?」

「ば、バアル様、む、虫が売られています」


俺も露店を覗くとコオロギやバッタに似た赤い虫が売られている。


「これはなんだ?」

「知らないのですか?これはデッセッスという虫ですよ」


一つ摘み見せてくれる。


「食料なのか?」

「まぁ食料みたいなものですが、これはどちらかというと調味料ですね」


そういうと使い方を教えてくれる、といっても。


「この虫を粉末状にして料理に混ぜるんですよ、ちなみに粉末状にしたのがこれです」


一つの壺を見せてくれる。


中には赤い粉末が入っており、原料が虫だとは思えない。


「一口なめてみますか?」

「いただこう」

「「「「!?」」」」


リン、セレナ、ノエル、カリンはぎょっとするが俺は気にせず一つまみし、口に入れる。


「~~~~~ん、なるほど」


口の中にあっさり目の辛みが広がる。


「肉につけたらおいしそうだな」

「そうでしょう、どうですか?」

「粉末状のやつを一壺もらおう」


ということで調味料をひとつもらう。


「……あれ?」


後ろでセレナが何かを思い出す。


「そういえば、ここに来てからの食事って…………」


何かを想像したのか顔色が青くなる。


「セレナ、あれは普通の調味料です」

「でもリンさん――」

「調味料です」


リンは想像したくないのかセレナにそう念を押す。


「もしかして人族(ヒューマン)の口には合いませんでしたか?」

「いや、味は問題ない、問題があるのはこっちだ」


俺は店主に人族(ヒューマン)では虫を料理に使うことはないと教える。


「そうなのですか?ここの調味料はほとんどが「「イやぁあ――――――――」」…………」


二人の悲鳴で店主は何も言わなくなった。


そして目線で


(どうします?本当に買いますか?)

(…………買うよ)


というやり取りが行われる。


「では一壺なので5000リフです」


ノストニアの通貨で支払いをする。


ちなみにだがノストニアで使われている通貨は前世同様紙なのだ。


なので最初は両替商も交渉が難航したらしい。


こうして二日目の祭りは女性陣にトラウマを残して無事終えた。







「あはははははははははは」


クラリスにそのことを伝えると腹を抱えて爆笑している。


「ひぃひぃ、な、なに人族(ヒューマン)はあんなのも食べられないの~」


クラリスは用事があったのか今日は一緒に回ってないため露店のやり取りを知らない。


「知った仲だからいいけど、知らないやつにやるなよ」

「それくらいの分別はあるわよ」


そういうと二人に軽く謝り今回は終了した。


「それでどう?誰か契約できた?」

「いや、今回はだれもできなかった」


今日も頑張って精霊と契約しようとしていたセレナだったが、案の定無理だった。


「それでアルムの儀式のほうはどうだ?」


今日はクラリスは朝方にエルフの使いに呼ばれて行った。


その要件がアルム関係であるとにらんでいる。


「順調と聞いているわ、私が呼び出されたのはあなた達のことと聖獣についてよ」


俺たちに関してはいまだに人族(ヒューマン)との交易には反対している連中が報告を欲しがって。


聖獣は明日の新王に合うために到着しているので王族として挨拶しに行ったらしい。


「俺たちのことをよく思っていないやつらのことか」

「そう」


アルムは俺達を歓迎してくれているが、そうでないものも、もちろんいる。


そしてそいつらは今朝クラリスから俺たちの報告を聞いていたのだろう。


「いいのかよ、そんなはっきり言って」

「いいのよ、私はもともとアニキよりだから」


ということで報告を求めたやつらをよく思っていないらしい。


「さてじゃあ私も明日のために精霊石に魔力を籠めるとするわ」


そういって取り出した精霊石に魔力を籠め始める。


「あ、私も」


セレナも隣で魔力を籠め始める。


『なぁ………助けてくれ』

「ん?」


いつの間にか足元に来ていたウルが助けを求めてくる。


「どうし」

『あそぼーーーー!!』


すると横から黒い子ライオンがウルに飛びついてくる。


『先ほどさんざん遊んだだろ!?』

『まだまだ!!』


そういって庭に出て追いかけっこを始める。


「あら、楽しそうね」


母上がそれを見て笑っている。


「まぁそうですね」


俺からしたら弟妹に引っ付かれ、果てはネアに追い掛け回されるウルを少し哀れに思う。


「バアル」

「なんですか」


母上の声が少し真面目な声色になっている。


「あなた、クラリスとは仲がいいの?」

「……………はぁ?」


言葉の意味を飲み込むのに少し時間がかかった。


「まぁ険悪なほうではないでしょうね」


お互いに理解しているし、尊重もしていると思う。


「なぜそんなことを聞くんですか?」

「母親の勘かしら」

「はぁ?」


もう一度気の抜けた声が出た。


「要件はそれだけですか」

「まぁ、バアルは私との会話は楽しくないのかしら」

「そんなことはないですけど…………アルベールとシルヴァはどうですか?」

「もうぐっすりと寝ているわ、昼間も精霊を見て興奮していたようだから」


子供に精霊か、なんか童話にありそうだなと思ってしまう。


「母上は精霊と契約したいと思いますか?」

「う~ん、あの人(リチャード)の力になれるなら手に入れたい気もするけど、正直契約してもどうしたらいいかわからないわ」


今の生活で満足しているらしく、精霊を手に入れたいとは思わないらしい。


「バアルちゃんは?」

「俺は………どうなんでしょうね」


契約したい気もするがしなくてもいいと思っている。


「もう、遅いから眠りなさい」

「はい」


なぜだか今夜はぐっすりと寝ることができた。

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