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自業自得だ、俺は関係ない

「おい、ここって」


クラリスに連れられて街中を進むとある方向に向かっているのがわかる。


「まぁ見てなさい、とびっきりの場所に案内してあげるから」


それから何も聞くなと言い足を進める。


そしてたどり着いたのが


「神樹だよな?」


俺たちは現在神樹の根元にいる。


「そうよ、そして登るのよ!」

「お前以前『神樹はこの国の中心』とか言ってなかったっけ?」


その樹に登るって……………


「いいじゃない傷つけるわけじゃないし」


言って蔦を足場に登り始めるクラリス。


「怒られても知らないからな」


仕方なく俺もついていく。





神樹は雲にすら届きうる高さの樹だ、なので登るにはかなりの時間がかかる。


そしてその神樹には幾重にも蔦が巻き付いており螺旋階段のように歩きながら少しづつ上に上がることができる。


(…………もうすぐ日の出か)


最初の枝まであと少しというところで日が昇りそうだ。


「やば!?早く上がるわよ」


クラリスは遠慮がなくなったのか【身体強化】を使い強引に蔦をけり距離を短縮する。


本来なら一周して少しづつ上に上がるところを一気に上の蔦まで駆け上がる。


「はぁ~『飛雷身』」


クラリスの先にある蔦の部分まで飛んでいく。


「ずるいわよ!!!」

「ならお前も使ってみろよ」


クラリスは俺に抜かされないように懸命に樹の凹みを足場にしてけりあがってくる。


(慣れているんだな)


普通、ある程度は躊躇するはずなのだが、その様子が一切見られない。


(こいつ、日ごろからこうして登っているんじゃないか?)


予想してその光景を思い浮かべるとくっきりとその場面が思い浮かべられる(付き人の苦悩した表情付き)。


「どうよ!!」


考え事をしているとクラリスが一番大きな枝の部分まで登っていた。


俺もすぐに『飛雷身』でその場所まで飛ぶ。


「へぇ~こんな風になっているのな」


神樹は車枝という形状になっており、上を見るとそれが何層にもなっている構造だった。


枝の元の部分には円環のように枝が交差しており、まるでひとつの階層にも見える。


「ほらこっちよ」


クラリスが指示したのは太陽の日の出の方角にある枝だった。


「ほら早く」

「わかったって」


クラリスと駆け足で枝先に向かう。


「ここよ」


成人サイズくらいある花びらを退かし、その先の景色を見せてくる。






その景色は何とも言えなかった。


地平線の先から太陽が昇り、大地に色が付き始める。


草木の緑、桃色の花、川の青、雲の白。


それらに風が吹くと目に見える形で動いていく。


「クラリス」

「なに?」

「ありがとうな」


何やらクラリスの視線を感じるが今はこの景色を見ていたい。


「喜んでくれたようで何よりよ」


声が柔らかくなっていくのがわかる。









「クラリス~」


後ろから声が聞こえたと思った瞬間、クラリスは後頭部をガシッとつかまれていた。


「ねぇクラリス、この場所は王族以外立ち入り禁止だって言ったよね」

「あ、アニキ!?」


声をかけてきたのはアルムだった。


「こ、これは!?そう!バアルがゆっくりできる場所に行きたいって言ってたから!」

「案内を頼んだだけで、ここを選んだのはクラリスだぞ?」


危うく売られそうになったので、責任はクラリスにあると弁明する。


「へぇ~」

「ひっ!?」


クラリスが悲鳴を漏らすのも理解できるぐらい、今の声には暗い感情がこもっていた。


「バアル」

「わかっているよ、俺も知りたくないことを知って殺されるのはごめんだ」


これ以上深入りはしないと告げる。


「ならいい、とりあえず今はこの愚妹のお仕置きからだね」

「アニキ!?今日は祭りがあるんでしょ?なら私にかまっている暇なんてないって!」

「大丈夫、すでに準備はもう終わらした、だから祭りが始まるまでは暇だ」


クラリスの顔から血が引いていくのがわかる。


「安心していいよ、バアルたちの案内の件もあるからそこまで強くはしないから」


クラリスを見れば、その言葉のどこに安心できるんだって顔に書いてある。


「バアルとりあえずは戻ってもらえるかな、祭りが始まるまではクラリスを戻すからさ」

「ああ、わかった」

「!?待って話を聞い、モゴモゴ」


クラリスが何かをしゃべろうとすると口がふさがれる。


「それじゃあ後でね」

「もご!?もごごご!!」


おそらく助けを求めているのだろうが、俺は知らない。


日が昇り変化を見届けてから神樹を降りていく。

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