ふたたびノストニアへ
二日後~
ノストニアの首都である神包都エルカフィエアは中心に神樹が聳え立つ。
そしてその神樹に以前とは違う点が出来ている。
「すごいわ!!桜みたい!!!」
セレナも窓の外を見て興奮している
神樹は桃色の花を咲かせており、前世の桜を思い出させる。
しかもエルカフィアにある木々すべてが桃色の花を咲かせている。
「どうすごいでしょ!!!」
クラリスが隣で胸を張っている。
「…………………綺麗だ」
俺の言葉に気をよくしたのか饒舌になり、クラリスが説明してくれる。
神樹はこの時期になると膨大な魔力を生み出し、花を咲かせて開花する。
そして開花すると同時に魔力を放出して、神樹を中心に魔力が届く範囲の木々総てをあのような桃色の花を咲かすようにするのだとか。
「すごいな」
「ですね」
俺の意見にリンも同意してくれる。
時折風が吹くと、地面に落ちた花びらが舞い上がり綺麗な光景を見せてくれる。
「ほぉ~~~~」
「はぁ~~~~」
父上と母上もその光景をじっくりと眺めている。
そのまま馬車は進み、以前来たことがあるアルムの別荘にたどり着いた。
「祭りが終わるまではこの屋敷を使ってください」
案内してくれたエルフの一人が全員を引き連れて中に入っていく。
「部屋割りだけど、どうする?全員一人部屋とかにできるわよ?」
「そうだな………」
考えた末に、父上+母上+弟妹、セレナ+リン+ウル、カルス達、そして俺が一人部屋となった。
そして亜空庫に入れていた荷物をそれぞれに渡し、ゆっくりとすることになった。
コンコンコン
「ちょっといいかしら」
「いいぞ」
入ってきたのはクラリスとあの黒い子ライオンだ。
『ひさしぶり!!』
子ライオンが胸に飛び込んでくる。
「お!アグラの子供か」
『ネアグラクだよ!』
(なんかアグラに似た名前だな)
そして飛び乗ってきたネアを掴み上げる。
「大きくなったな」
『うん!』
以前はチワワサイズだったのだが今は柴犬サイズになっている。
「それでクラリスはどうしたんだ?」
「あっそうね、明日には父様に面会してもらう予定なんだけど」
「ずいぶんと急だな」
「祭りが始まったら父様たちはとても忙しくなるわ、だからそれまでに面会してもらいたいのよ」
と言うことで明日の予定は決まった。
ということで翌日俺と父上で城まで案内される。
「他のみんなは大丈夫かな?」
「おそらく大丈夫でしょう」
女性陣はクラリスに連れられて前夜祭に行っている。
護衛もかなりの数がおり、さらには全員女性だ。
「では、こちらへ」
城の中をエルフの先導で進むと玉座の間に案内される。
「では中へ」
中に入ると自然と調和し木漏れ日が玉座を照らしている空間に出る。
(何度見てもきれいだな)
豪華絢爛ではなく安穏とした空間、それでいて質素と言うことはなく品良さを伺いさせる。
「私はグロウス王国ゼブルス公爵家当主リチャード・セラ・ゼブルスです。この度招待していただき感謝を申し上げます」
父上は玉座の前で跪き口上を述べる。
「顔を上げよ」
俺達は顔を上げる。
「よくぞ来られた人族の方々よ」
玉座に座っているのはアルムによく似た顔の青年だ。
「我はルクレ・ルヴァムス・ノストニア、アルムの父にして現森王だ、こちらこそ子供たちを救出してくれたことを感謝する」
正直アルムの少し上の兄と言われても違和感がないくらいだ。
「いえ、感謝は必要ありません、元は同じ人族の失態でこのような事態に陥ったことですので」
「それでも子供を救ってくれたことに変わりはない、礼を言う」
こうして誘拐の件は終わった。
「では、生誕祭が終わるまでゆっくり我が国で観光でもされよ」
「ありがとうございます」
それから父上と森王が様々なことを話し合いこの場は終了だ。




