判決は確実に死刑だろうな
バチッ
雷の音が鳴ると用心棒の二人は倒れこむ。
「ひぃ!?」
その様子を見て豚は腰を抜かす。
「衛兵!!!衛兵ーーーーーー!!!!!!!!!!」
すると店員の一人が店の外で衛兵を呼ぶ。
「ははは、どうする、跪いて許しを請うなら許してやらんでもないブッ」
あまりにもうるさいので店の外に蹴り飛ばす。
「衛兵!!はやくわれを助けろ!!!!」
すると衛兵がやって来て豚を守り始める。
「はは、覚悟しろ、謝るだけで許してもらえると思うな!!!!」
衛兵で守られているからか気が大きくなった豚。
「さてどうするか」
「あ~よかったら手伝おうか?」
エルフ達からそんな提案を受ける。
「いや、いいよ、ここで皆さんが出て行ったらややこしくなる」
「……………わかった」
エルフ達は素直に引き下がってくれる。
そのまま外に出ると衛兵に囲まれる。
「さてどうしてやろうか」
豚は衛兵の後ろで大きい顔をしている。
「何をやっている!!!!!!」
野次馬の外から声が聞こえてくる。
「おお、この声は!!!!!」
やってきたのはこの町の町長エウリッヒ・セラ・ヒナイウェルだった。
「お助けください、エウリッヒ様!!!」
豚はエウリッヒに縋りつく。
「馬鹿者!!!!!!!!!!!!!!!!」
「…………へ」
エウリッヒは顔を青くしながら豚を引き離す。
「失礼しました、何があったのかお話していただけますか」
跪きながらそういう。
「エウリッヒ様、こんなガキに跪く必要など」
「黙れ!衛兵!!!こいつを捕らえろ!!!」
「なっ、おい、やめろ」
豚は衛兵に取り押さえられる。
「何をする、われはゼブルス家の息のかかっているイドラ、グムッ!?」
「少し黙れ」
顔を踏み、しゃべらせないようにする。
「ではお話をお聞きしてもよろしいですか」
「ああ、おい、そこの馬鹿をイドラ商会の事務所に連れてこい」
「まずは自己紹介させてもらおうか」
俺は事務所の椅子で足を組む。
「俺はイドラ商会会長、バアル・セラ・ゼブルスだ」
「ムグ!?」
豚は汚い顔がさらに醜くなる。
「さて、それじゃあ話を聞かせてもらってもいいですか」
「ああ、まず陛下からこの町でのイドラ商会には免税をお約束してくれました」
「…………そうなのですか?」
「知らなかったみたいだな」
「お恥ずかしながら」
「そして俺はノストニアの新王との約束で出来るだけ安価で売り出すことが確定している、そしてそれは新しく作ったここの商会にも、その通達はしていたんだがな」
「ブータス、それを守らなかったと」
エウリッヒも豚を睨む。
「で、こいつの処罰はどうしましょうか?」
「う~ん、ま、死罪だな」
「ムグッーーーー!!!」
豚は暴れるのだが衛兵が押さえつける。
「まずは会長の俺の命令違反、陛下の条例の反故、アルムと俺の顔に泥を塗った。さらには帳簿にも細工がしてあるはずなのでその件でも………………当たり」
机の引き出しに帳簿がある。
「うん、俺が出した値段で帳簿は書かれているな、だけどさっきの件であったように金額はだいぶ誤魔化されている」
俺は立ち上がり蹴りつける。
「さて、裏帳簿はどこだ?」
「………………」
何もしゃべろうとしない。
(俺から譲歩を引き出そうとしているのだろう)
俺の命令もそうだがノストニアとの友好関係に罅をいれかけたのだから、まず死罪から逃れることは通常はあり得ない。
なので命と引き換えに裏帳簿を差し出そうというの魂胆だろう。
「ああ、そうだもう一つ俺が頭に来ていることがあるんだった」
もう一度豚を蹴り飛ばす。
「てめぇの情報が偽装して流れてきた、これについては会長として看過できない…………まぁお前のことだからそこまで複雑なところに隠したりはしないはずだな」
この部屋の中をくまなく探す。
部屋には机と書類をまとめている冊子の本棚、それと窓しかない。
(こいつの性格上目の届く範囲に隠すはずだ)
こいつの反応を見ながら周囲に手を付けていく。
(…………本棚…………書類………………机。うん、机だな)
机に近づくと目がほんの少しだけ見開く反応を示した。
「………ここかな」
引き出しの中身を総て出し、机の裏や引き出しの底を調べる。
「使い古されている手口だな」
案の定一番下の引き出しの底の裏に裏帳簿があった。
「はぁ~やっぱり中抜きしていたか」
俺の報告は指示通りの値段なのに売り出しているのは超高額。
つまりその差額の分がこいつの懐に入っていたわけだ。
「罪が確定したな、弁明はあるか?」
猿轡を外すように指示する。
「貴様のようなガキに商売の何がわかる!!!」
俺の身分を知りながらも暴言を吐くくらい、豚の理性は無いのだろう。
「てめぇが指示を無視したのがそもそもだろうに」
「黙れ!!われが居てようやくこの店は成り立つのだ!!!」
何言ってんだこいつ。
「反省がないようだな」
「!?」
「ではエウリッヒこの豚を檻の中に入れておけ」
「入れておくだけでいいのですか?」
「ああ、そいつは戻って来た時に罰をあたえる」
「わかりました、では連れて行け」
衛兵に引きずられて豚は退室していくことになった。
「はぁ~明日にはノストニアの方に行くってのによ」
書類を見ながらぼやく。
「では私はこれにて」
「ああ、助かった、それとだが俺たちが戻って来るまで逃すなよ。それが出来なければお前が」
「わかっていますとも」
エウリッヒは邪魔しないように事務所から出ていった。




