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王家の監視

「では、リチャード・セラ・ゼブルスよ今回の大使に任命する」

「はは!承りました!」


王都にやってくると、早速父上は俺を連れて王宮に訪れた。


部屋に王座の場所に通されると俺と父上は陛下の前で跪く。


「宰相」

「はい、ゼブルス卿、今回お主に頼みたいのはノストニアがどんな国か確認してもらいたいのだ」

「というと」


父上はどの部分を知りたいのか宰相に問う。


「うむ、具体的に知りたいのは三つ。一つはノストニアの勢力圏、二つ目はおおよその戦力、三つめは不足しそうな物資をお願いしたい」


宰相が出した最初の二つは国家の安全のため必要な物、そして最後の内容は交易でどれが売れそうか調べてこいと言うものだ。


「承りました、このリチャード、陛下のご期待に添えるよう全力を尽くします」


こうして陛下との面談は終了した。
















「さっむいーーー!」


馬車の中で父上がそう叫ぶ。


「だからあれほど厚着をしてくださいと言ったのに」

「いや、ではなぜバアルは薄着で大丈夫なのだ?」


父上は俺のように魔力が豊富ではないので身体強化で耐寒対策することはできない。


「それにしても二人まで連れてきて大丈夫ですか?」


俺は母上の腕の中にいる二人を見て心配する。


「貴方がそう思うのも分かるわ、だけど大丈夫よ」


そう言うと母上が二人に何かの魔法を掛ける。


「それにね、あの家に二人だけ残すのも気が引けない?」

「………まぁ」


二人だけ残すのもかわいそうではあるな。


(メイドも完全には信用はできないし)


どこまで行ってもメイドや執事は家族という枠組みには入ってこれない、下手すれば二人を害する可能性もなくはない。


「ですが母上が二人の世話を?」

「大丈夫よ、これでもバアルちゃんも世話したことがあるのよ」

「……………」


否定はしないが…………不安だ。


「セレナ」

「なんですか?」

「今回は母上の面倒を頼む」


前世の記憶をもっているセレナだったら子供の世話はある程度できる…………はずだ。


「あら、ふふ、じゃあセレナちゃん私と一緒にこの二人の世話をしましょう」

「はい!!!」


セレナは母さんからシルヴィアを受け渡される。


「ふぁああぁあ~~」


セレナはシルヴァを受け取りご満悦だ。


「あのぉ」

「リンも俺が近くにいる間は母上のことを気にかけてくれ」

「了解です」

「じゃあ、リンちゃんもこの子たちを気にかけてあげてね」

「はい」


そう言うとリンはセレナに抱かれているシルヴァの面倒を見始めた。


『…………また遊ばれるのか…………』


足元で憂鬱につぶやくウルが印象的だった。









「ほう、これが交易町ルナイアウルか」


目線の先では急造だがしっかりとした町が見えてくる。


(木製の柵と家か、時間がないからそれでもよくやったほうか)


本来なら石壁をまずは作り、そこから中を作っていくことになるのが村づくりの基本だ。


「ほらバアル、挨拶しに行くとするよ」

「わかりました」


町に入ると町長の元に向かう。







「ようこそおいでくださいました!!」


町長の元に訪れると手厚く歓迎される。


「私はエウリッヒ・セラ・ヒナイウェルと申します、リチャード様!」

「おや、意外に歓迎されているようだな」


町長に任命された貴族は父上と固く握手を交わす。


「もちろんですとも、なにせこの町はゼブルス卿が作ったと言っても過言ではないのです」

「そうか、だが私と仲良くするのはアズバン卿はいい顔をしないのでは」


父上も伊達に長く貴族をやっているだけある、聞きにくいことも顔色変えずに訊ねていく。


「実は私は王家よりの人間なのですよ」

「ほぅ」


つまりは王家からの看視者というわけだ。


「なので、基本的にアズバン家からの横やりは無いと思ってもらっても構いませんよ」

「それはありがたい」


なんでこんなに心配されているのかと言うと、まぁ一言でいえばゼブルス家とアズバン家は仲がいい方ではないからだ。


(日ごろから仲が悪いのに、今回の一件で出しゃばったからな)


なにせ南の貴族が自分の担当の地域に出入りして問題を解決していたのだから。


「それでもう一つの交易町はどのような感じだったのだ?」

「それが面白いとしか言いようがありませんでしたよ」


父上と町長はもう一つの交易町のことを話し合っている。


「エルフの作る町は面白い物ばかりで」

「ほぅ、どのようなものがあるのだ」

「そうですね、家が大樹の洞ですし、夜間は何やらヘンテコな木が灯りになっていたり、町の柵がすべて茨の蔦だったりしますね」


(ノストニアの中で見たことあるな)


既にある程度見慣れているので新鮮味はない。


だが話を聞いて俺とリン以外は目を輝かせている。


ブルルルルル


通信機が反応する。


「父上、私は少し外の様子を見て回ってきます」

「ああ、わかった」


許可をもらい部屋を退室する。


「誰だ?」

『僕だよ』

「……アルムか」


通信機からアルムの声が聞こえてくる。


「どうした?」

『いやね、今どこにいるのかなと思ってね』

「(……………付き合いたての彼女かよ)気持ち悪い」


俺は普通に女性が好みだ、そっちの気はない。


『ひどっ!!』

「さっきの言葉だとそうとられてもおかしくねぇぞ」

『いや、そんな気はないよ僕はすでに結婚しているし』

「そうなのか?」


それは初耳だ。


「で、なんで居場所を聞きたいんだ?」

『実は妹がバアルを町まで迎えに行こうとしているんだよ』

「クラリスがか?」

『そう、君たちは国賓だからね、交易町から持て成したいのさ』

「…………で、本音は?」

『そりゃ~人族(ヒューマン)との交流を新王たる僕が望んだんだ、ここで歓迎しないことには矛盾してしまう』


だろうな。


政治家と同じで掲げている表明を反故したら面目丸つぶれだ。


なのでアルムは俺たちを持て成さなければいけない。


(もちろん、これがやらかした貴族なら全く歓迎はされないだろうが)


ゼブルス家は友好関係を結べているので問題ない。


「予定では明日の昼にそっちの交易町に入る」

『了解、じゃあクラリスに伝えとくよ』


そう言うと通信機の魔力が消える。


(さて、許可も取ったし周囲を見てくるか)

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