そりゃ~壊したら怒られるよ
「はぁはぁはぁ」
「ふぅ~~~」
お互い魔力が切れるとともに元の姿に戻る。
「……終わりだな」
「ですね」
名残惜しいがこれで模擬戦は終了だ。
「バアル様、すみませんが『慈悲ノ聖光』を掛けてもらえますか」
リンの手を見ると火傷を負っていた。
とりあえず言われた通り『慈悲ノ聖光』を使いリンの火傷を治す。
「それにしてもいつの間に」
「気づいておられないのですか?」
「ん?」
「『真龍化』の際に出る雷は武器から伝ってきて、少しずつダメージを与えていくんですよ?」
「あ~なるほどな」
『真龍化』はステータス上昇がメインなので、あまり気にしていなかった。
「それよりもリンも使える幅が増えたな」
「はい!!」
リンは度々訓練場でユニークスキルの練習をしている。
ただその際には人払いして貸し切り状態で行う必要がある。
「全員強くなったな」
俺がそう言うと全員がうれしそうな顔になる。
「……あの、お話し中すみません」
「どうした」
「これは…どうすれば…」
騎士のこれとは訓練場の惨状のことだ。
大きな亀裂、無視できないほどのクレーターで訓練できる様子ではない。
「……とりあえず公費から修理費を用意する」
ということで俺に仕事が増える結果になった。
母上からの説教のおまけつきで…………
それからしばらく、何事もない日々が続いたのだが。
「バアル、手紙が来ておったぞ」
珍しく父上が俺の部屋まで来ている。
「手紙?」
父上が持ってくるってことはイドラ商会関係ではない、父上経由で手紙が来るということは政務関係だ。
「……自分宛ですか、どちらから?」
「陛下からだ!」
目の前にずいっと差し出された手紙には確かに王家の紋様が入っていた。
「中身は何と?」
「しらん、というかバアルなら見当がついているのではないか?」
「いえ、心当たりがありません」
魔道具なら既にノストニアの交易に向けて動いている、それを把握してないグラス殿ではないはず。
「とりあえず中身を見てみますか」
ペーパーナイフで封を切り、手紙を取り出す。
長い時候の挨拶をすっ飛ばし本分を読む。
「へ~~」
「何と書いてあった?」
「えっと、ノストニアとの橋渡しの際に掛かった費用を王家に補填してもらう約束に関するものです」
内容を要約すると
『ノストニアに掛かった費用はもちろん全額こちらで負担する。だがすぐにというのはできないので、できれば分割で支払いをしたい。そのための話し合いの場を設けたい』
というものだ。
(まぁ金貨7000枚は普通に掛かっているからな)
エルフの子供の落札代金、エルダさんを通して教会に協力してもらったお布施(賄賂ともいう)、Aランク冒険者ジェナの依頼金、その他デッドが使った費用などもこちらで用意した。
(王家と言ってもすぐさま準備はできないか)
俺も二年間でイドラ商会で得た金貨を使用しなければ足りなかっただろう。
業務に支障が出ないギリギリの資金だった。
「と言うわけで、俺は王都に向かう準備をします」
「待て待て」
「なんですか?」
今からまた準備して行こうと思っているのだが。
「もう少しで王都でパーティーが開かれる、その場でいいのではないか?」
「……そうですね、ではそのような旨の手紙を出すとします」




