ようやくの終息
あれからラインハルトさんやガルバさんデッドさんがせわしなく動き騒動が終結した。
倉庫を封じた後、僕たちは宿に戻りみんなと合流。
その後、いつの間にか近衛騎士団がこの屋敷を囲むと次々に中に押し入り制圧していった。
そして現在、僕たちは領主の館で成り行きを聞いている。
「今回は助かったよ」
僕たちの目の前にいるのは近衛騎士団長のグラス様だ。
「そして今回のことは済まなかった」
そういってエルフのみんなに頭を下げる。
「……頭を上げてください」
その言葉を受け取るとゆっくりと頭を上げるグラス様。
「それで、どうなったかを説明してくれますか?」
「もちろんだ」
まず騎士団の調べた結果子爵は完全に黒だった。
「奴らの手順はこうだ」
まずはノストニアからエルフの子供攫い、洞窟にある拠点を抜けて、ネンラールのある地点でアルア商会の馬車と合流。
協力者であるウニーア子爵の倉庫にてエルフを監禁。
その後、アズリウスまで運んでいた。
「ウニーア子爵はオークションの利益の3割で手を貸していたそうだ」
そしてオークションの状況に応じてエルフを流す作業を受け付けていたらしい。
「でも、アズリウスにはどうやって侵入していたんだ?」
エルフの質問にも答えてくれる。
なんでもあの二人が関係するようだ。
「ああ、アズリウスから少し離れた地点でエルフを入れた積み荷を降ろし、自由に飛ぶことができるあの二人組が夜中に空中から侵入していたようだ」
「そんな方法で?」
「ああ、しかも魔力反応もなかったから誰も気づかなかったみたいだ」
こうして謎は解けた。
「それでこれからはどうなるんでしょうか」
「ああ、私たちはこのまま子爵領で調べものだ。そしてエルフ達だがな」
ジッ
「えっと何か?」
「実はエルフの戦士達にはまだ協力してほしいことがある。なので子供の輸送を君に任せたい」
「?!僕にですか!?」
「ああ、幸い良好な関係だろうからな」
これにはエルフ達も反対意見が出ずに僕たちが担当することになった。
「えっと、グラスさんたちは何をするのですか?」
「……ここから先は子供は知らない方がいいよ」
そういうとやんわりとした言動で僕たちを宿に戻す。
「ということで僕たちがみんなをノストニアに案内することになったんだけど」
「そう、じゃあお願いね」
オルド、ソフィア、カリナ、リズ、ルーアに説明する。
「いや、ここは大人に任せた方が」
「その大人が忙しいんだろ?」
「そうだな、別に私たちもまだ暇なのだから」
「そうそう」
ということで誰からも反対意見が出なかった。
そして翌日にはノストニアに向けて出発するんのだが。
「なんでいるの?」
「いや~ルリィが一緒に来てほしいっていうからさ~」
「言ってない!」
そう言ってルリィにシバかれるローグ。
ローグは自分もノストニアまで行くというのだ。
「だってよ、お前らだけだと少し不安だからさ」
そうは言うがルリィのことが心配なのはこの場にいるみんなに伝わっている。
ルーアやみんなから反対の声が出なかったのでそのまま馬車に乗りノストニアに向かうことになった。
「行ったか」
「……はい」
領主の一室でグラスとデッドが対面している。
「ご苦労だったデッド」
「はっ」
そう言ってデッドは跪く。
「これでひとまずは問題が解決に向かってくれるだろう」
「……ですが真犯人はそのまま野放しですがね」
あの二人のことも含めている。
というか、ほとんどの工程をあの二人が賄っていた。
ノストニアでエルフの子供を攫うのに二人が必要になり、アズリウスに輸送するのに必要にもなる。
逆に言えばあの二人がいなくなれば組織を壊滅に追いやったと言っていい。
「で、そっちはどうだった?」
ここ数日でアルア商会のことをデッドに調べさせていた。
「子爵の証言通り、アルア商会は足としてのみ使われていたようです」
「ふむ、それでは一つの疑問がまだ残っている」
解決されたとされている事件にまだ一つだけ謎がある。
「早急に見つけろ」
「御意」
こうしてすべてが解決したわけではなかった。




