何人かに一人はいるよな、サボろうとするやつ
「…………本当に引きが強いな」
一度聞いたセリフをもう一度聞くことになった。
僕たちはローグから聞いた話をラインハルトさんに説明する。
「なるほど、君たちはどうするつもりだ?」
「明日ローグにその場所に案内してもらうつもりです」
「明日か……」
明日はラインハルトさんとガルバさんはウニーア子爵に面会する予定だ、なので僕たちについてくるなんてことはできない。
「エルフのみんなも出払っているし……」
なんとか護衛を付けたいと思っているラインハルトさんだが今は人手が足りない。
エルフの八人は二つの道に二人ずつ配置されて、ローテーションで動いている。
ガルバさんも偽装工作でこの街の商人に挨拶に行ったりしているし、部下も忙しそうに動いている。
ラインハルトさんは明日のウニーア子爵の面会に備えて準備をしている。
自由に動けるのは僕たちのみだ。
「……いいかい、危険だと思ったらすぐさま目立つような行動をしなさい、そうすれば私がどんな時でも駆け付けるから」
(ラインハルトさん…………ただの痛い人じゃないんだ)
道中、たまに独り言が多い人だと思っていた。
「わかりました」
「じゃあ、今日は寝なさい、明日は忙しくなる」
僕たちは明日に備えて早めに寝ることにした。
翌朝、早速して準備をするとギルド前に移動する。
「来たか、依頼票は用意してあるぞ」
ローグの話によると、とある依頼を受けないとその場所には入ることができないのだ。
「じゃあ、これお願いします」
「え?この子たちも?」
「そうっす、俺が責任取りますんで」
「う~~ん、ま、大丈夫か」
受付のお姉さんは適当に考えて、受理した。
「ほらさっさと行くぞ」
ローグは急くようにギルドから出ていく。
「なんで急ぐの?」
「後で説明する」
ギルドからある程度離れるとローグが話してくれた。
『ミレイアさんは適当で有名なんだよ、だからなんかある時はあそこに並ぶんだ』
代わりにそこに訪れた奴らはマークされるけどとローグは言う。
「ほら着いたぞ」
旧倉庫は新倉庫と違って街の外側にあった。
大きさは三分の一程度なのだが数が3つある。
「おい、ローグそいつらは?」
「ああ、昨日意気投合してな今日だけ手伝ってもらうことになった」
「だが」
「問題ない、信用できるのは保証するから」
そういうと渋々だが先にきていた同業者は倉庫の方に向かっていく。
「いいのか?」
「ああ、俺からしたらエルフにこの街が壊される方がヤバいからな」
まぁいられなくなったらネンラールにでも行くとする、とローグは言う。
「集まった冒険者は報告してくれーーー」
役人がそう言うと全員が列になって並ぶ。
「いろんな人がいるんだね」
「そうみたいですね」
僕たちと同じくらいの年もいれば成人したてほどの人も、おじさんと言っていい人もいる。
「次!」
「はい」
「ローグか……その後ろの6人は?見ない顔だけど」
「昨日意気投合してな、この仕事を紹介したんだよ、なに今日だけだからさ」
「はぁ~今日だけだぞ、次からはお前ごと追い返すからな」
ということで僕たちもこの仕事を受けることができた。
「よし、倉庫の中の物を馬車に運べ」
この声と共に皆が動き始める。
「ルーア?」
ルーアさんは外に配置してある馬車に視線を向けている。
「……なんでもないわ」
「???」
僕たちも中に入って作業を始める。
「それでローグ、どこでエルフに会ったんだ?」
「倉庫の中のある場所でだ、今は動けないから昼めしの時に動くぞ」
なので僕たちは昼食時間まで働く。
カン、カン、カン
「昼食だ、お前ら一度戻ってこい」
「今だ行くぞ」ボソッ
僕たちは人混みの中、ローグに従って倉庫内の壁際に移動する。
「ほらここだ」
ローグが床に何かをすると板が外れる。
そしてその先には階段とどこかへ続く道がある。
「ここを進んだところにいたんだよ」
ローグは入り口を閉めて先に進む。
「にしてもこんな道、良く見つけたな」
「いや、それがな」
以前に同じ依頼を受けたんだが昼飯の後に昼寝をしたらしい。
「で、気づかれないようにしたせいで倉庫に置き去りにされていたんだ」
「「「「「「…………」」」」」」
「で、何とか出ようとしても正面の扉は閂が掛かっていて開けられないし、窓から出ようとしても、高すぎて飛び降りれなかった、で必死に何かないか探すとこの場所を見つけたんだ」
皆はあきれて声も出ない。
「お、見えて来たぞ」
暗い道を進むと先に光が見えてきた。




