盗賊共の末路
「様子はどうですか?」
あの檻からウライトが戻ってくる。
「見ての通りだ、大量に摂取させたおかげかもう効果が出始めている」
足元ではもがきながら床を舐めている盗賊共がいる。
「さて、お前たち、薬が欲しいか?」
すると全員がこちらを見上げる。
「ゲハッ、ガハッ、……いるか」
頭領は吐血しながら拒否する、だが視線は俺の手にある白い粉に向かっている。
「あ、そう、じゃあこんなのいらないね」
「「「「「!!!!」」」」」
地面に白い粉を撒く。
そして芋虫みたく這いながら、粉が巻かれた地面を舐める盗賊共。
「さて残りは素直に言うことを聞いてくれた奴にやろうと思うが」
ちらりと横目で見ると頭領以外が我慢できなさそうになっている。
「さて、どうする」
「俺が!」
「いや、俺が!!」
「俺がここのことに一番詳しいぞ!」
「古参の俺が一番詳しい!」
四人が争うように這い寄ってくる。
「じゃあ一人ずつ話を聞く、一番情報を話した奴に粉を全部やろう」
一人ずつ一番奥の檻に連れて行って、情報を吐かせる。
全員に話を聞き終わる。
「よし、ある程度情報はそろったな」
メモにはここから出るルートや組織の全体像、エルフの出荷先、ほかにも様々な情報が出てきた。
「さて、諸君は素直に話してくれた」
俺は檻に入れた四人をみる。
「残念ながら出てきた情報はすべて似たようなものだった」
そしてら薬を貰えないと思ったのか騒ぐ騒ぐ。
「安心してくれ、俺も嘘をつくのは本意ではない、だからこの粉はお前たちでよく考えて分けてくれ」
白い粉を入れた袋をおりに投げ入れる。
「寄越せ!!」
「ふざけるな!」
「ここは年上を優先させろ!!」
「年寄りは邪魔だ引っ込んでいろ!!」
檻の中では醜い争いが起こる。
「さて、どうだ、お仲間があんな姿になって悲しくないか?」
「………あいつらはどうなる」
頭領は檻の中を見ている。
「さぁな、仲良く薬を分け合うのか、はたまた自分以外を殺してすべて独り占めにするのか、まぁ飯は与えないから餓死するのは確定だな」
「……悪魔め」
俺はこの言葉に大笑いをする。
「自分のしたことに自覚が持てねぇのかな?エルフにした仕打ちはこんなものじゃすまないよ」
俺は頭領の目をのぞき込むがそこに映っているのはとてもいい笑顔で笑っている自分の顔だった。
「……俺はどうなる」
「ん~、まぁここに残った方がましだという扱いにはなるだろうな~」
「っく!?」
「おいおい、暴れるなよ、変に動いたらここで殺さなければならなくなるからな~」
なんとか逃げようとするが縛ってあるので地べたを這うことになる。
「おい、おい、そんなに急ぐなよ、楽しい時間はもっと後だからさ」
とりあえず猿轡を嵌めて転がしておく。
そして檻の中を見ているウライトを見る。
「ウライト、檻の中の奴らはどっちみち死ぬ、だから」
「好きにしてよい、と?」
「ああ、怒りのまま嬲ろうと俺たちは関与しない好きにしろ」
ウライトに四人を好きにする権利をやった。
死ぬのは確定しているんだ、それなら有効活用するに限る。
しばらくすると檻のある場所からウライトが出てくる。
「終わったか?」
「はい、一思いに殺しました」
「……それでよかったのか?」
薬漬けにされたのだからやり返しても文句は言われないだろう。
「いいのです、エレナの思いを知れただけで」
「そうか」
何も言わずにクラリスの元に戻る。
「どう終わった?」
「ああ、にしても嫌われたな……」
クラリスの周りにいる子供たちが怯えた目を向けている。
「いや、まぁね……(あんな顔をすれば幼い子は怯えるわよ)」
エルフの子供たちには先ほどの景色は見せてない。
三人からやめろと言われている。
(クラリスと少ししか違わないと思うんだが)
身長も5センチほどしか変わらない。
下手をすれば俺の方が年下まであり得そうだ。
「バアル様、賊の荷物をすべてまとめました」
「ご苦労」
リンの後ろにある木箱を亜空庫に仕舞う。
「それじゃあここに用はない戻るぞ」
残念ながらこの先はあまり干渉しない方がいいだろう。
不安は残るが俺が動いている本分を忘れるわけにはいかない。




