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エレナの謝罪とウライトの心情

「なるほど、じゃあこいつらが当たりなのか」


俺は火にあたりながら報告を聞く。


「で、こいつらどうやって吐かせる」


生き残った5人は何も話そうとしない。


「どうする?見せしめに何人かむごく殺す?」


ビクッ×5


「できれば情報源は多い方がいい」

「なら拷問?」

「でも、こいつら見ている限りなんか希望を持っているんだよな~」


こいつらの表情が絶望していない。


なにか脱出手段があるのだろう。


「………そうだ」


俺は亜空庫からある物を取り出す。


「それって……」

「こいつならいずれ話すようになるだろう?」









五人にある物を使い、縛ったまま放置する。


「……あのバアル様」

「なんだ?」

「……来てもらえますか」


リンに従ってついて行く。


「これを見てください」


一番奥にある檻を見る。


「なにもな………ん?」


檻には湧き水とベット用のワラのみだ。


そして何もないと思ったワラの中に肌色の物体が見える。


中に入り確認する。


「……死んでいるな」


肉体は腐っていない、それゆえになぜ死んだかがわかるぐらい凄惨な傷跡が付いている。


「むごいな」

「そうですね」


肉体には多数の青あざ、片腕は深い切り傷があり、首には絞められたような跡すらある。


そして藁の中には手記が一つあった。


「どうしましょうか」

「クラリスたちに伝えよう、隠していてもいいことはない」


些細なことで亀裂が入るのはできるだけさせたい。







二人を呼んで確認させる。


「こいつが例の女性か」

「はい……………そうです」


今にも泣きそうな顔でウライトは頷く。


「それとこの手記があった」


ウライトにそのまま、渡す。


「俺たちは中身を見ていない………リン、奴らの様子を見に行くぞ」

「はい」

「私も様子を見に行くわ」









――――――――


盗賊団に攫われた。


村は焼かれて、兄や両親は殺された。


メリーもラルクもウィアも全員。


許せない、許せない、許せない、許せない、許せない


――――――――


どこかに運ばれ閉じ込められると何やら白い粉を嗅がされた、粉を嗅ぐと心地よくなり両親と家族に会うことができた。


たとえ幻覚とわかっていてももう一度会いたいと思うようになった。


だがアレを嗅ぎ続けると復讐する心が薄れてくる。それだけは絶対に嫌だ。


――――――――


ダメだ、あの薬から離れられなくなってくる。


――――――――


薬が欲しい、欲しい、欲しい、欲しい、欲しい


――――――――


薬が欲しいならある仕事をしろと言われた。


私は逃げるのに絶好の機会だと思い承諾する。


内容はその場に着いたらと言われた。


――――――――


洞窟を抜けると、どこかの山に出た。


見えるところに人の住んでいそうなところはなかった。


道中に冒険者と出会えば叫んで助けを求められるのに


――――――――


数日掛けて移動するとどこかの森にたどり着いた。


お腹が減る、洞窟から出てから水しか飲まされていない。


――――――――


目的の場所に着いたと言われたが、何もない場所だ。


ここで何をするのかと聞いてみると、ここで行き倒れ、エルフに保護してもらうように言われた。そしたら持っている白い粉を使わせろと言われた。


何も知らない人にと思ったが、もう私は逆らえない。


――――――――


言う通り、エルフの男性に私は保護された。


怖いほどきれいな顔のエルフだった。


予定通りお礼として薬を嗅がせることができた。


――――――――


エルフの名前はウライトと言った。


両親からエルフは怖い存在だと聞いていたのだがそうだとは私には思えなかった。


それに彼は家が無いという理由で小屋まで建ててくれた。


――――――――


彼は兄に似た雰囲気を持っていた。


だからかわからないけど、彼のそばでは薬なんて要らずに快適だと思えるようになった。


――――――――


だめだ、もう仲良くなっちゃダメだ。


彼は私が薬を手に入れるだけの存在だ。


――――――――


ごめんなさい、純粋なあなたを騙して。


なんど謝っても許される事じゃない、けどやっぱりあなたといる時間はとても楽しの。



――――――――


彼がおかしくなっていくのがわかる。


だんだんとイライラしやすくなっていて、薬をもらう回数も増えてきた。


――――――――


いつも薬を運んでくる人が今回は条件を付けてきた。


その条件がウライトにエルフの子供の誘拐を手伝わせるというものだった。


そんなことできるわけがない。


――――――――


私は薬欲しさに彼にある要求してしまった。


ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい


――――――――


何度死のうと思っただろう。


彼はもはや薬から抜け出せなくなっている。


そんな彼は誘拐に関わらせてしまった。


――――――――






それからいくつもの謝罪のページが続く。





――――――――


10日もウライトが来ていない。薬はもうとっくに無くなっているはずなのに。


何かあったのかな?


けど私はこの場を動けない。


心配は尽きないが、いまさら私がウライトを心配する資格なんて


――――――――




ここまでが小屋で見つけた手記に書いてあった内容だ。





――――――――


私は急に洞窟に連れ戻された。


幸い、日記の一部を隠すことができたのは良かった。


自己満足だけど誰かにあの日記を読んでもらいたい。


私がどんなにひどい女なのかを。


――――――――


あいつらの会話を聞いてウライトがエルフの王子に捕まったと聞いた。


それを聞いて安心した、彼は操られていたとわかれば死ぬようなことはないと思う。


そしてここに連れ戻されて私は良かったと思っている。


もう二度とウライトを騙さずに済む、それだけで私は満足だ。


――――――――


ここに戻されてからは私はおもちゃのように扱われている。


攫われたエルフの子供たちは商品価値が下がるから、不満は私に押し付けられる。


これが私への罰だろう。


――――――――


もう長くないことがわかる。


頭領から受けた暴力でお腹の痛みが消えない。


少しづつ力が入らなくなっている。


……最後にウライトに会いたかった。


――――――――


ウライト愛しています。


いかにあなたが私を憎悪しても、それでも私のことを覚えてくれるだけで私はうれしい。


願わくばウライトの記憶に私の存在が根付いてくれるように。


――――――――



最後のページは文字が崩れて、血のような跡がついていた。


「そうですか………忘れません、エレナのことは絶対に」


私はこの秘めたる思いを忘れないことを誓う。


そして二度と私とエレナみたいな存在が作り出されないように根源を滅ぼすと胸に刻む。

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