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これからの動き始め

「理由は何ですか?」


カリナは純粋に疑問に思う。


紙を見る限りではおかしいところは何もないと思うが……


「そうだな紙を見る限りでは普通に仕事をしている領主にしか思えんだろうな」

「ではどこで?」


クアレスさんは一つの部分を指す。


「この食料の運搬だ」

「???」


僕は言いたいことがわからなかった。


「えっとね、この大量に食料を運搬した記事があるでしよ」

「はい」

「これがかなりおかしいんだよね」

「おかしい?」

「そ、ここまで大規模に買い込むのは不自然なんだよ。もちろん理由があるなら普通なんだけど」


書いてあるものを見る限りそのようなものは無い。


「収穫を終えてから大量に買い込み、春まで持たせるそれがここら辺の領主のやり方だ。だから普通は余計な出費を押さえて春まで耐えるはずなのだがな」

「冬の間はどうしても食料の値段が上がるからね」


これらの理由でまずウニーア子爵は何かをしていると考えてもいいようだ。





「……それとアーク、例の物を持ってきたのか?」

「はい、えっと、これのことですよね」


僕は亜空袋に入れておいた白い粉の袋をデッドさんに渡す。


「……これがか」

「「「「「!?」」」」」


デッドさんは手に取り確かめると、白い粉を摘み舐めた。


「なにやっているんですかあぁあ!?」


僕だけではなくガルバさんも声を上げる。


「……ん、問題ない」


頭を押さえながら答えるデッドさん。


「……たしかに大部分が快楽薬、それに依存性がとてつもなく高いアジャカラとウバナカも配合されているな」


何やら小声でブツブツと何かを喋っている。


「あの、デッドさん」

「……ああ、すまない。これの正体だったな」

「ええ、これは一体何なの?快楽薬って言葉を何度も聞くけど」


ルーアさんの任務はこれの正体を確かめることだ。


「……これは快楽薬で間違いない、さらには依存性が強く改造されているな」

「それは普通の快楽薬とどう違うの?」

「………簡単にいえば操り人形を作るのに最適な薬だ」


一度使わせれば何を犠牲にしてでも、もう一度使いたいと思わせる薬らしい。


「この国ではこんなものが出回っているの?」

「……普通は出回ってない。かなり厳しく規制されているはずだ」

「じゃあなんでこの薬のことを知っているの?」

「……俺も情報屋だからな、場合によっては禁薬の情報も必要になる」

「使ったことはあるの?」


これにはデッドは何も答えない。


情報屋という裏の組織なので使ったことがないとは断言できないからだ。


「まぁまぁまぁ、デッドさんも情報屋なんですから言えないこともあるでしょう」

「そうじゃ、この世界にいるなら手に取ることも多々ある」


二人がそういうがルーアさんは納得しそうにない。


「で、これの出所は」


ルーアさんは不機嫌そうに尋ねる。


「……快楽薬はネンラールから流れてきている物だ。さらには改良に使われている物もネンラールから流れている」

「じゃあネンラールが主導でやっているってこと?」

「……国が関わっている可能性は驚くほど低いと思うがな」

「なんで?」

「ノストニアと戦争になるのはどこの国も避けたいだろうからな」


デッドさんに代わりラインハルトさんが答えてくれる。


「ルーア殿はどうしますか?薬のことが分かったのです。ノストニアに戻りますか?」

「……貴方たちはこの後どう動くつもり?」

「今後はこの二つを軸に探索を進める」


ラインハルトさんが今後の方針を話してくれる。


「まずは三つ配置する」


そう言うとおおざっぱな地図に書き示す。


「まずはこのままアズリウスに残るのはエルダ殿とジェナ殿とクアレス殿」


呼び出されたのはこの三人。


「君たちには引き続きアズリウスで捜索をつづけてもらう」


アズリウスの場所に三人の名前が書かれる。


「うちの者はどうする?」

「アズリウスの裏社会に一番詳しいのは貴方たちだ、なので引き続き裏社会の監視と網を張ること」

「つまりは現状維持だな」

「その通りです」


次にウニーア子爵の領地にラインハルトさんと僕たちの名前とルーアさん、それとエルフの数名が書き記される。



「次にウニーア子爵の領地の人員だ」

「あの、そこで何をするんですか?」


僕たちは怪しいと聞いてはいるがどうするのかはわからない。


「ウニーア子爵ではアズリウスに向かう馬車の監視、それとウニーア子爵の周囲の調査だな」

「なぜ?」

「簡単だ、ウニーア子爵領はネンラールからアズリウスに向かうためには必ず通る道だから、アルア商会もこの道をよく使っている」


そのために仮にアルア商会がエルフの誘拐に関与しているなら道中にウニーア子爵領を経由しているはずだと。


「そのために警戒心が薄くなりそうなアークたち、それに魔力を見ることができるエルフが担当する」

「ラインハルトさんは?」

「私は監督役です、エルフや君たちに監督を任せるわけにはいきませんし」


ということでウニーア子爵領ではラインハルトさんが舵を取る。


「最後にアルア商会にはガルバくんとエルフの数名、それとデッド殿で当たってもらう」

「……少なすぎないですか?」

「いや、少なくする必要があるんだよ」


僕が不思議に思っていると担当であるガルバさんが答えてくれる。


「アルア商会があるのはネンラールの中だからね、大人数で侵入ってのがまず難しいんだよ」

「……そうだな、俺でもネンラール内では自由には動けない」


情報屋であるデッドさんですら思うように動けないという。


「……そんな状況で大人数を動かしてしまえばどこかで不自然になる」

「だから少人数で動きやすくするんだよ」


ここまで説明されてようやく理解できた。


「ガルバはアーゼル商会として接触を」

「わかった、護衛にエルフの一人を連れていくから、確かめさせてもらうよ」


こうして僕たちはそれぞれ動くこととなった。

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