揃い始めた情報
僕たちは急いでアズリウスに戻る。
「あら戻って来たの?」
教会ではエルダさんが待っていた。
「アネットちゃんは無事に届けられたの?」
「はい、それと」
僕は持ってきた白い粉をエルダさんに見せる。
「これが何かわかりますか」
するとエルダさんの反応がない。
「あのう」
「いい、良く聞きなさい、今からガルバの元に向かいなさい」
拒否を許さぬ声色でそう告げてくる。
「わ、わかりました」
「それとこれのことを誰にも言ってはいけません、いいですね」
「「「「「は、はい」」」」」
「では、行きなさい」
荷物を置く暇もなく僕たちはベルヒムさんの元に向かった。
「ベルヒムさん」
「ん?ああ、アークかどうした?嬢ちゃんは無事に届けたか?」
「ええ、それとガルバさんはいますか?」
「ああ、奥に部屋がある。そこでクアレスの爺さんとラインハルト殿と会談しているぞ」
「今入っても問題ないですか?」
「ああ、大事な話し合いじゃないから問題ないはずだ」
ベルヒムさんは僕らを案内してくれる。
「誰じゃ」
「すまんが入るぞ」
「ベルヒムかよい、入ってこい」
中に入ると三人が様々な書類を見ていた。
「お、アークたちか、おかえり。で、どうだった?アネットは無事帰れたかい?」
「ええ」
「じゃあ何があったかを教えてくれるか」
僕たちはアネットを届けてここに戻って来るまでどのようなことがあったかを説明する。
「なるほど、君も運がいいのか悪いのか……」
「まさかノストニアで犯人と遭遇からの戦闘」
「さらには裏切り者に出会い戦闘、その後、裏切った原因を持ってきたのか……」
「あれ?皆さんこの粉のことを知っているので?」
なぜだか皆はあの粉のことを知っているようだ。
「ああ、既に連絡は来ておるからな」
「いつのまに……」
ルーアさんの言う通り、あまりにも早すぎる。
「あ~ちなみにバアル様は裏切っていないぞ」
犯人だから理由を知っていると思ったがそうではないらしい。
「私はゼブルス家の騎士です。なので任務に必要である魔道具はある程度支給されるのですよ」
その中に素早く連絡を取ることができる魔道具があるのだとか。
「そんなものがあるなら俺たち要らなかったんじゃ……」
「そうでもない、現物がないので断定はできなかったんだ」
老人は粉を見ると一摘みしてじっくりと観察する。
「ふむ、儂の知っている快楽薬ではないな、何らかの改良がされておるな」
裏の世界に詳しいクアレスは何度かこうゆうものを見たことがあり、ある程度の知識はあるのだとか。
「ふむ、ベースは普通の快楽薬だが……どんな改良をされているのかはよくわからんな。デッド殿が帰って来るのを待たぬとダメか」
「?デッドさんは今いないのですか」
このメンツの会議ならデッドさんも居そうなのだが。
「あやつならせわしなく動いているわい」
「どういうことだ?」
現在、デッドはネンラールのアルア商会とウニーア子爵を調査しに行っている。
「ベルヒム、デッドがいつ戻ってくるのかわかるか?」
「調査は終わったみたいで今戻ってくる最中と聞いていますが」
するとタイミングよく扉が開く。
そこには見慣れたローブ姿の男が立っていた。
「デッド様よくぞお戻りで」
「ああ」
ベルヒムに何かを渡すとそのままテーブルに何やら書類を置く。
「洗い出せるだけの情報は出た」
「ほぉ、ほぉ、さすが情報屋と言われるだけあるのぅ」
ウニーア子爵の書類にはどのような商会が通過したのか、積み荷の大きさと種類、倉庫の中身がびっしりと記載されており。
アルア商会の方では売値買値、通過ルート、積み荷の種類と大きさ、従業員や人員の数、さらには背後のマフィアのことまで記されてあった。
「ふむ……」
「へぇ~……」
クアレスさんとガルバさんは紙を見て思うところがあるのか反応している。
「何かおかしな点でも?」
「ああ、あるぞい」
「そうですね」
カリナの質問に二人は答えてくれる。
「アルア商会で運んでいる積み荷がおかしいんじゃ」
「おかしい?」
「そ、馬車一台に乗っけている荷物の量と大きさがあってないんだ」
ガルバさんはこの量だと一つの木箱に半分程度しか入れてないという。
「つまりアルア商会がエルフの誘拐に関わっていると?」
「可能性があるというほどじゃな」
僕たちが良くわかっていないのを見ると説明してくれる。
「空の木箱を運ぶのはそこまでおかしいことではないんだよ」
「ああ、こっちに来て、売り買いをするからな」
荷物を売った後に大量に何かを買い込んで今度は自分の場所で売ったりする場合があるのでそれほどおかしいことではないと言う。
「ではなんでお二人はおかしいと思ったのですか?」
ソフィアの問いに笑いながら答えてくれる。
「ああ、馬車はなんとなく怪しい程度で済むがな」
「おかしいのは期間のことだよ」
二人は紙の一部分を見せてくれる。
「えっと~アズリウスに来るのは前からだったけど~………最近になってめちゃくちゃ多くなっているね~」
「リズの言う通りさ」
「そしてその期間はちょうどエルフ達が良く売買されているタイミング、おかしいと思うだろう」
つまり可能性は高いと二人は判断している。
「ただ、このような簡単な手段で検問所を突破できるとは思えんのだが……」
クアレスさんもガルバさんも共に難しい顔をしている。
確率は高いのだが、肝心のアズリウス内に運べるとは思っていない。
「こっちの貴族の方はどうなんですか?」
「「黒」」
二人は即答する。




