エルフの戦闘
ルーアさんは水を生み出すと顔にぶつける。
「ガハッガハッ」
男は水を被ると目を覚ました。
「状況は理解できている?」
「……何の真似だ?」
男はルーアさんが生み出した樹の蔦で何十にも拘束されており動くことができない。
「あら、それはこっちのセリフなんだけど」
ルーアさんが静かに怒っているのがわかる。
「あなた、エルフの情報を誘拐犯に売っているわね」
「証拠があるのか?」
「さっきの『飛ばし文』が証拠よ」
だが男は未だに笑う。
「話にならないな、俺が上司に報告を上げただけだぞ?」
「嘘ね、事前に確認したけど赤葉で連絡を寄越すような用件は無かったはずよ」
「ああ、だが急に訪ねたいことが出来たんだ。だがら『飛ばし文』で連絡を取ろうとしたんだよ」
「ほんと、口が良く回るわね。戦闘じゃなく口論を鍛えていたのかしら」
その後もルーアさんが追求し、男が躱すという問答が何度も続く。
「ほら、もういいだろうさっさと解除してくれ」
「っく!」
既に攻撃できる部分はすべてはぐらかされた。
ルーアさんにもう追求できる場所はないはずだ。
「ほら、さっさとしろ!!」
すると不自然に男の体が震えてきた。
「チッ、おい、早く!!」
「…何か病気にでも?」
「が、俺のポーチに黒い袋があるそれを取ってくれ」
僕はルーアさんに確認を取り、エルフの腰にある袋を探る。
「これ?」
取り出した黒い袋の中には真っ白い粉が入っていた。
「それを寄越せ!!」
「ダメよ、アーク。それでこれは?」
「何でもいいだろう!早く寄越せ!!!」
そう言って踠く。
「てめぇそれに手を付けたら殺すぞ」
そう言うと周囲が熱くなる。
「やめなさい、アークそれを持って下がって」
「おい、俺がこんな軟な拘束で止められると思っているのか?」
そう言うと土の槍が伸びて拘束していた蔦を切り刻む。
「な!?」
「赤葉である俺は戦闘は得意なんだよ!!」
そういうと複数の火焔が男の周りに集まる。
「裏切った貴方に負けるもんですか!!」
今度はルーアさんの周りに水球が現れる。
そして始まるのは派手な魔法戦だ。
火焔と水球がぶつかると蒸気を発して消えていき。
次に起こったのは土が盛り上がるとそこから木の根がうごめき男を縛ろうと蠢く。
男は冷静に動かず腕だけを振るうと、風が巻き起こり木の根を切り飛ばしていく。
さらには何個もの風の刃となりルーアさんに襲い掛かっていく。
「舐めるなぁあ!!」
ルーアさんが土に手を着くと眼前に迫った風の刃を巨大な土の腕が受け止める。
「来なさい、地の胎児!!」
すると土が盛り上がりそこからトロールほどの土人形が出てくる。
「じゃあこっちも、現れろ焔狒々」
今度は男の前に炎が集まり人型になっていく。
そして始まるのが壮絶な殴り合いだ。
火の狒々が殴り掛かると土のゴーレムはそれを防御もせずに受け止め、ものともせず殴り返す。
そして当然二人もじっとしているはずもなく狒々と人形を盾にしながら魔法戦を繰り広げている。
魔力の豊富なエルフだからか見たことのない数の魔法が行き交う。
このまま長引くと思われたが決着はあっけなく訪れる。
「グハ!?」
男が急に地に膝を付けたのだ。
そしてそのまま倒れこみ意識を失う。
「……なにがおこったの?」
周囲を見渡すが誰も動いてない、それに魔法を使ったわけでもない。
近づいてみるが間違いなく気絶している。
「まぁいいわ、それよりアーク結局それは何なのかしら?」
「えっと、なんか真っ白い粉がはいってました」
(!?)
「ルーアさんは何か知っていますか?」
「いえ、私も良く知らないわ……ただ」
ルーアさんは男を見ている。
「こいつがやけに執着していたからかなり気になるわね」
とりあえず僕たちが男を担ぎ、村まで連れていく。




