二組の動き
まず出品されていたエルフから得られた情報なのだが。
出品が決まると牢に入れられ、中には7人のエルフの子供がいた。
子供たちから詳しく聞くとほとんどがアネットと同じく、気絶された状態で運ばれてきたらしい。
だが数人だけ道中に目が覚めたらしい。
「その子の話だと、太陽が落ちるのとは反対の方向に運ばれて行ってのを覚えてる、と言っていた」
「つまり東か」
「容疑者二人の方向と同じだな」
辻褄は合う。
ほかには檻から出されると首輪を嵌められて箱に詰められて連れていかれたのだとか。
「それと道中に箱から外を確認できたのが一人だけいたらしい」
「ほぅ~」
「なんでもでっかい門をくぐっていくのが見えたと言っていた」
「でっかい門か」
「子供たちからの情報は以上だ」
残念ながらこれだけしか知らなかったみたいだ。
「で、本命は?」
「……数人の子供から共通の魔力を確認した、これはあらかじめ確認してもらったどの組織の人間にもないものだった。これにより魔力による誘拐犯の特定がしやすくなった」
誘拐犯はどうやっても一度エルフの子供に触らないといけない。よって時間がさほど立っていなければ魔力追跡が可能になる。
「よし、これで当初の目的は達成されたな」
クアレスの狙いはこれである。
残念ながら確保したエルフの子供たちでは時間が立ちすぎて魔力追跡ができなくなっていたのだ。
「まぁ本音を言えば誘拐犯が直接オークションに出品してくれれば問題なかったのだがな」
幾つかのダミーを挟んでおり誘拐犯は未だに追跡できない。
「それで賢老、この後はどうしますか?」
「そうだな、当初の予定通り疑わしき二人を探りに行くかのぅ」
すでにこの領地で得られる情報は少ないだろう、とクレアスは付け加える。
「そこは任せてもらおう」
いつの間にかデッドが後ろにいた。
「お主一人で問題ないのか?」
「少なくともお前らみたいな闇組織に調べさせるよりはたしかだ」
「なら、お手並み拝見させてもらおう」
こうして僕たちは当分の間派手には動かずにデッドの情報待ちとなった。
『というわけなのですがよろしいですか?』
「ああ、問題ないよ、そこまで特定できたのならあとはデッドに任せておけ」
一つの貴族と一つの商会を調べるなんて裏の騎士団からしたら簡単な仕事だろう。
「それとそろそろ荒事になりそうだから、各員に準備をしておけと言っておけ」
『!?わかりました、どの位の規模でしょうか?』
「大規模な盗賊団の討伐程度に考えておけ」
『了解です』
そういうと連絡を切る。
「さて準備はいいな?」
「もちろんです、アルム様が下さった償いの機会を逃しはしません」
「よし、じゃあ頼む」
「はい」
僕たちはルーアさんが次に訪れる村にきていた。
「村には入らないの?」
今いるのは目標の村の周辺だ。
「当然警戒されないためよ」
犯人に疑われていると思われた時点でアウトだ。
その場合はせっかく手に入れた情報が無駄になる。
「このまま出てくるのを待つの」
ということで僕たちは夜まで張り込む。
「………!でてきたわ」
夜になると村から一人の男が出てきて走っていく。
「追うわよ」
僕たちに小声で伝えると見失わないくらいの距離でついて行く。
するとその人物は途中で止まると周囲をキョロキョロと見渡している。
そしてなにやら文字を書き込む。
「……黒だったのね」
「どうしますか」
同胞が裏切っていたことに悲しみを覚えるルーアだが、いまは感傷に浸るときじゃない。
「そうね、ひとまずは止めるわよ」
ということで僕たちはエルフの背後から急を仕掛ける。
「縛れ」
ルーアさんの言葉でエルフの足元から土が這い上がり下半身を拘束する。
「!?」
その間に僕とオルドが接近して上半身を押さえる。
「お願いします」
最後にカリナの精霊魔法で顔全体に水を覆い、気絶させる。
「……なんだかあっけないな」
上半身から力が抜けたエルフを見てオルドは思わず口に出す。
「そうね、赤葉だから戦闘は随一のはずなんだけど……」
ルーアさんも不思議に思ったのだが、とりあえず頭の隅に置きルーアさんの指示通り彼を拘束する。
「さて話を聞かせてもらうわよ」




