アズリウスでの情報整理
「じゃあ、お世話になりました」
村を出ようとするとフィアやハウ、二人の親であるルハオさんが見送りに来てくれた。
「いや、お礼を言うのはこっちだよ。なにせ二人が誘拐されそうになったところを助けてくれたんだから」
「お兄ちゃん!」
「ありがとう!」
二人とも抱き着いてくる。
「いえ、お役に立ててよかったです」
「これ、二人には及ばないが」
ルハオさんはそう言うと何かの薬品を渡してくれた。
「これは魔力回復を促してくれる薬だよ、残念ながら魔力回復薬のように急速に回復はしないが通常よりは速めてくれる」
これはありがたい、僕たちは魔力切れになる機会が多いから。
「じゃあ今から向かう村でもよろしく頼む」
「「「「「はい!」」」」」
こうして僕らはルーアさんの任務について行くことになった。
「はい……はい……わかりました」
「バアル様からですか?」
私はデッドさんの部屋でラインハルトさんと情報を見直していた。
「なんでもエルフを攫う手段が分かったそうだ」
「本当か!!!」
傍で一緒に作業をしていたエルフが声を上げる。
「して、その方法はどのような物じゃったんだ?」
「それは―――」
ラインハルトは内部に密告者がいたことを告げる。
そしてそこから攫いやすい子供だけを標的にしていたこと。
薬漬けにされて自制が聞かなくなっていたこと。
「そんな…………」
エルフは茫然としている。
まさか仲間に裏切り者がいるとは思わなかったのだろう。
「一応詳細は話しておきました」
「だろうな、しかし面白い物じゃな」
無事に次のオークションでエルフを買い戻すことができた。
その際にいろいろな情報を手に入れることができた。
「まず、可能性が最も高いのは国内の貴族だったな」
「ええ、名前はウニーア子爵、領地は北寄りでネンラールに接している場所にあります」
ネンラールからアズバン領に行くには必ず通る場所と言ってもいい。
「そして次に怪しいのはアルア商会だな」
「ええ、ここの正体はマフィアの商会ですからね」
私たちが手に入れた情報によるとこの二つのどちらかが誘拐組織と通じている。
「一つ質問だが、違法薬物を使っている可能性が高いのはどちらの組織だ」
急にラインハルトがそう聞いてくる。
「そうだな、違法薬物だとネンラールの商人が怪しいけど」
「ああ、実は貴族の方も黒い噂があるのだ」
「……ならば両方調べるしかないか」
そう思っているとデッドさんが部屋に入ってきた。
「今戻った、それで何か新しい情報は来たか?」
「はい、エルフの誘拐手順なんですが」
私はデッドさんに誘拐手順を話す。
「なるほど、裏切り者か、しかも薬漬け」
デッドは何か考え込む、仕草をする。
「それで今後どう動くか聞いたか?」
「いえ、とくには指示はありません」
「……では、俺は好きに動くが問題ないか?」
私とクアレスはラインハルトに視線を送る。
「すこし待て」
そういうと再び連絡用魔道具をとり連絡する。
「はい、ラインハルトです……はい、デッド殿が自身で動くようですが問題ないですか?………はい、了解です」
連絡用魔道具を切る。
「問題ないそうだ、だた連絡は密にしてくれとのことだ」
「わかった」
こうしてデッドは別行動となった。
「いいのか?奴の情報力はかなりのものだぞ」
クアレス爺さんの言う通りデッドの力はかなりのものだ。
「バアル様の言う限りでは問題ないそうだ」
「そうか」
なら問題ないそうだ。
「ちなみにデッドはどう動くつもりだ」
「標的がわかったんだ、なら調べるまでだ」
そう言って部屋から出ていく。
「さて、もう一度情報を整理しよう」




