現地調査
「それで、この場を選んだのには何か意味があるのか?」
クアレスは訪ねてくる。
「まず我々が調べた情報ですと」
拷問して得た情報をクアレスに話す。
「ふむ」
「話を聞いていると一つの疑問が出てきた」
「奴らはどうやって正確なエルフの売却値段を知っているのか、か」
「その通り、さすがは賢老だ」
僕が尋問中に感じた疑問がそれだ。
オークションの値段を偽られる可能性がどうしてもある以上、自ら確認しているか、何かしらの耳で確認している。
そこから追跡することができるのと考える。
「いい考えだ、では早速動くとしよう」
クアレスが視線を向けると手下の数人が動き会場を出ていく。
「何をするつもりだ」
するとおかしそうに笑う。
「エルフが頻繁に出てくるようになったのは今年からだろう、ならその時期から急に会場に現れるようになった、もしくは頻繁に表れるようになった人物が可能性が高いと思わんか」
これには私もほかのメンバーも確かにと頷いている。
たしかにその考えが的外れだとは思えない。
「それとそこのエルフ、ちょっと力を貸してほしい」
「で、調べはついたのか?」
『はい、黒霧が調べた情報では4人ほど怪しい人物が浮かび上がってきました』
オークションから1週間がたったころ。
ラインハルトからの連絡が入ってきた。
『浮かび上がっているのが、国外の貴族一名、国内の貴族1名、そしてネンラールの商人が一名にクメニギスの裏組織が一名です』
この四名がエルフが出始めてから出入りしているらしい。
「で、今は何をしている」
『はい、クアレス殿の意向でエルフの一名を裏オークションに潜入させています』
なんでも見せかけだけの手錠や首輪をして裏オークションに出品したみたいだ。
『情報を集め終わると次に始まる裏オークションで競り落とし回収します』
「だが子供たちが捕らえられているのを見て暴走しないか?」
『ご安心ください、デッドが金貨3000枚を用意したようなので、すべてのエルフを回収できるとのことです』
変に暴れるよりも我慢し、オークションで買い落すのが確実と言うことで暴れる心配はない。
さらには
(なるほど王家がバックアップするために動いてきたか)
裏の騎士団のデッドがそこまでの大金を用意できるはずがない、ならさらに裏の方から予算が回ってきたのだろう。
「詳細は分かった、ではいい報告を待っている」
通信を切ると部屋の外にでる。
「もういいの?」
「ああ、向こうもこの調子ならかなり早くに情報が集まりそうだ」
俺はアークが滞在している村に来ている。
名目は調査に来たクラリス姫の護衛だ。
「にしても、意外だな」
視線の先ではアークが村の子供たちと遊んでいる。
「評判も悪くないわよ、種族は違っても変な考えがない子供だからすぐ仲良くなれたみたい」
あれだな、種族の違う動物を子供のころから一緒に育てると争わないやつだな。
「(このまま良好な関係でいてくれよ)じゃあ例の場所に行くか」
「そうね」
俺とクラリス、リンは誘拐現場となった場所に向かう。
身体強化を発動すると森の中を駆けていく。
残念ながら自然豊かな森なので整備されている場所以外は馬車が使えない。
普通の人だったらかなり手間を取られるだろう。
ギシ
「おっと」
掴んでいた枝が軋む。
現在、パルクールみたく森の枝や岩を利用しながら高速で移動している。
(さすがエルフだな)
知り慣れているのか俺らよりもかなり早く移動している。
順序としてはクラリス、リン、俺の順番で走っている。
(慣れた地のクラリスは、まだしもリンにも負けるか……)
リンは【身体強化Ⅳ】を持っているので負けてもおかしくない。
【身体強化】はⅠからどんどん進化していく、Ⅱになれば効果は2倍に、Ⅲになれば4倍に、Ⅳになると8倍になり、このように指数関数のように上がっていく。
(まぁその分、次の段階になりにくいんだがな)
スキルが進化するのは何もレベルが上がればいいってことではない。
自分で次のステージに行くために努力し、改良していくことが必要なのだ。
さらに言えば才能も関わってくる。
「着いたわよ」
クラリスが止まると俺たちも止まる。
「ここがか?」
何の変哲もない場所にしか見えない。
「ええ、魔力が残っているもの」
(やっぱりエルフってのはずるいな)
人間では見ることのできない魔力を見ることができる。
だから何もない場所にしか見えないのに、クラリスにはここだとはっきりわかっている。
「なんにもないわね」
戦闘があったはずなのに道中の風景とほぼ変わらない。
「で、話では二人組は空に飛んでいったんだな」
「ええ、方向までは分からないみたいだけど」
木を登り、頂上から周辺を見渡す。
(見渡す限りただの森か……)
これじゃあ手掛かりも何もない。
「ん?」
視界の隅で何かが動いているのが見えた。
「どうしたの?」
同じく登ってきたクラリスが問いかけてくる。
俺の視線を辿って何を見ているのかを確認する。
「あれって……」
そう言うと木を下りて、その人物の元まで移動する。
「こんなところで何やっているの?」
クラリスが声を掛けたのは何やら植物を摘んでいるエルフの少女だ。
「あれ?おねぇちゃんたちは?」
「私たちはルーアの友達よ」
「じゃあ樹守様なの!!」
嬉しそうに訪ねてくるエルフの少女。
「私知っているわ!おねぇちゃんたちがフィアを守ってくれたんでしょ!!」
「それって誘拐されかけた子よね」
「うん!ともだち!」
そういうと楽しそうにフィアの話をする。
「そっか、それで何をしているの?」
「フィアが私のせいで怖い目に合ったから、綺麗なお花を渡して仲直りしようと……」
俺達は顔を見合わす。
「詳しく話してくれるかな」
「うん!」




