窮地の脱出とエルフの村
「!!!」
極光盾で防ごうにもあの軽い男の術で使えない。
盾にできる剣も先ほど吹き飛ばされてしまった。
あとは回避なのだが既に剣は振り下ろされており回避が間にあうタイミングでもない。
とっさに体を後ろに背けるが全く意味がない。
「アーク!!」
何とか助けに入ろうとするルーアさんが見えるが間に合わない。
ヒュン
男は急に体勢を変えて僕から離れる。
「うぉ!」
するともう一人もなにやら体勢を崩し、エルフの子供から手を放した。
「もらい!!」
すると茂みから赤いオーラを出したオルドが現れ、エルフの子供を引っ手繰る。
「っち」
軽い男は腕を振るおうとしたのだが、また音がしたので、その方向に向けて腕を振るった。
「あ~二度目はないか~」
すると茂みの奥から弓を構えたリズたちが姿を現した。
「やられたね、ずっと視線があるのは分かっていたけど、その二人は囮だったか」
するとリズたちとは別の方向からソフィアとカリナが姿を出す。
「おい、何やっている」
「いや~ごめんごめん」
双剣の男は文句を言うが、軽い男は軽く流す。
「で、どうする?」
「う~ん、やり合ってもいいけど…………ここは退こうか」
「どうしてだ?」
双剣の男は心底不思議な顔をする。
「全員殺してしまえばいいのではないか?」
「できなくもないけど、少し手間がかかる、だから今回は退く、わかった?」
「……お前がそう判断したのなら文句はない」
そういうと双剣は剣を納める。
「逃げます、で、はいそうですかとでも言うと思いますか?」
ルーアさんはそういうと剣を構える。
「まぁそっちは逃がしてくれないみたいだけど、それならやり合うだけだよ?実力の違いは理解できない?」
「…………」
相手の言う通り、僕たちの中で最も地力があるルーアさんが手も足も出ないのだ。
当然僕たちも苦も無く殺せるだろう。
「じゃあ、問題ないようだね~」
「「「「「「!?」」」」」」
二人は不自然に舞い上がり空を飛んでいく。
「君たちとはまた会うかもね~」
そう言い残し、去っていった。
「で、その二人がこの子たちを攫おうとしたのだな」
僕たちはたどり着いた村で聴取を受けている。
「はい、村長」
「で、この子たちは……」
エルフの村長は僕たちを睨む。
「人族の子供か」
忌々しいものを見るような目でこちらを見てくる。
「村長、大丈夫ですよ、この子たちは問題ないです」
ルーアさんが僕たちのことを弁護してくれるがそれでも村長の視線は少し緩くなったぐらいだった。
それから僕たちは村長の計らいで空き家の一つに寝泊まりすることになった。
「にしても視線が痛かったな……」
ベットの上でオルドがつぶやく。
「そうだね……」
この家に来るまでの視線は害獣の子供を見る目だった。
(まぁ人族が子供攫いをしていたからな)
その視線もしょうがないだろう。
すると家の扉がノックされる。
「「おにいちゃん!!」」
扉を開けると先ほどの子供エルフが飛び込んできた。
「こらこら、恩人にとびかかるなんて」
すると後ろから男性のエルフがやってきた。
「君がアーク君たちだね」
男は僕に手を差し出してくれる。
「この子たちを助けてくれて感謝するよ」
「あの、貴方は?」
「ああ、僕はイクル・ルハオ・アベスフト、フィアとハウの父親だよ」
「「「「「父親!?」」」」」
どう見ても成人したての青年にしか見えない。
「息子たちのお礼に食事でもどうかと思ってね」
そういうと見たことがない植物や鳥が入っている籠を見せてくれる。
グツグツ、コトコト
家のキッチンでルハオさんが料理をしてくれていて、フィアとハウもそれを手伝っている。
「この光景は人もエルフも変わらないんだな」
三人が料理しているのをみてそう漏らす。
「こういうのは変わらないですよ」
ソフィアやカリナ、リズはあの光景を見て微笑んでいる。
「そういえばルーアは?」
「なんか、報告があるからって明日までいなくなるって」




