ラインハルトの方では
「……バアル様にも困ったものだな」
私はデッドから聞かされた方針を聞いてついこうこぼしてしまった。
なにせその方針がエルフの誘拐組織の撃滅という内容だ。
今いるのはアズリウスにある教会のいつもの一室だった。
「………参加メンバーは」
そこで以前活躍した皆が集められている。
アークたち五人と教会の修道女のエルダ、Aランク戦闘者のジェナ、そしてルーアさん含めて12名のエルフの戦士たち、それと商人である私、ガルバ・アーゼル。
他にはベルヒム、デッド、お目付け役としてつけられたラインハルトという騎士もいる。
「ちょっと待て、なんでこんなことになっているんだ」
「ええ、詳しい説明を求めるわ」
ジェナとエルダは誘拐組織を潰すことを聞くと予想通り困惑し、説明を求めた。
「そうですね、事の発端は商人であるガルバ殿ですね」
ラインハルトが説明し始める。
貴族の一部が暴走し交易ができなくなってしまうこと、それでは困るガルバがゼブルス公爵嫡男に助けを求めたこと、そのあとにルーアを介してノストニアに接触したこと。
そしてそこでエルフ達の国交樹立のために誘拐組織をぶっ潰すことになったこと。
これらを説明する。
「はっ、冗談じゃねえ、好き好んでそんな危なっかしい真似ができるか」
「こちらとしてもできることは全くと言っていいほどないと思いますが」
二人とも今回の件には消極的だ。
(それもそうだろうな)
以前の時は放っておけばこの街が襲撃されるリスクが出てきたから協力したに過ぎないから、二人は協力したに過ぎない。
「ではいくらで協力してもらえますか」
ラインハルトの問いにジェナは手を広げる。
「金貨50枚、これくらいの金額を貰わなければやってらんねぇ」
これにはアークたちが驚いている。
なにせ平民が10年働いてようやく金貨1枚手に入るかなのだ。
「前金に金貨5枚、成功報酬に45枚であるならば快諾しましょう」
「……それでいい」
ラインハルトは一切考えるそぶりもなく快諾する。
「で私たちはなにをすれば?」
「少し待ってくれ」
するとラインハルトは懐から書類を取り出す。
失礼と思いながらも隣に移動してのぞき込むと、そこにはびっしりと指示が掛かれていた。
中には協力を得ることができない場合や貴族の乱入、組織の反攻を受けた場合などの対処法も書かれていた。
(ここまでするなら自分で動けばいいものを……)
これで人を動かすのはかなり大変だ。
「まずエルダ殿は教会はその大きな人脈を貸してもらいます」
「人脈ですか……」
「ええ、冒険者や職人、果ては領主までもつながりがあるとデッドから伺っていますが?」
エルダは私に見せたことのない鋭い視線をほんの一瞬だけデッドに向ける。
「……そうですね私のできうる限りの協力はさせてもらえますよ」
「ええ、それで構いません。ですがこの依頼はゼブルス家嫡男であるバアルさまからということをお忘れなく」
ほどほどに協力して難を逃れようとするエルダに釘を刺す、ラインハルト。
「それで具体的にはどうすれば?」
「簡単ですよ、教会の幅広い伝手を生かして噂を流してほしいのです」
「噂?」
「まぁこれは後処理の一面なので、今は状況を理解だけはしておいてください」
「……なるほど、わかりました」
両者(一名カンペ)はお互いの会話で納得したようだ。
「エルダはいいとして私はどうすんだ?」
今度はジェナが自分の役割を尋ねる。
「簡単に言うとAランク戦闘者という肩書を借りたい」
そういうと少し頭の弱いジェナでも理解ができたようだ。
今回参加するのは無名の人ばかり、もし肩書が必要な場合はジェナを使うということなのだろう。
「では全員が納得してくれたところでこれからの話をします」
それからバアル様の案通りに話は進んでいく。




