使えそうな奴らでよかったよ~
30人も捕まると組織は十分と判断したのか、今度はアネットとその他、数人を連れて行った。
そして強制的に首輪を嵌められる。
「今しているこの首輪だな」
アネットが嵌めている首輪には魔法陣が描かれており、魔法の操作を妨害する力がある。
そのせいで魔法はおろか、引きちぎるほどの力を出すことはできなかったらしい。
他にも所有者の判断で首を絞めることができる機能もあったみたいで、なんどか体験してしまったりもしたそうだ。
これにはこの場の空気も重くなる。
「それでどうやって逃げてきたんだ?」
「それは――」
首輪をつけられると何やら箱の中に閉じ込められてどこかに運ばれていったのだとか。
「……怖かっただろうな」
「「「「「「「!?」」」」」」」
「???」
おい!!まて!!なんで共感しただけなのにお前たちがそこまで驚く!!!!
少し言いたいことはあるが話を続けさせる。
それから数日、食料と一緒に箱に閉じ込められていると大きな振動を受けた。
何事かと思うと、急に箱が投げ出されて衝撃と共に箱から放り出された。
何が起こったのか確認すると馬車が大きな熊になぎ倒されていた。
ガァアァァァ
熊は馬車の荷物に夢中になっているのかこちらには気づいていない。
「っ!?」
熊が興味を持っていたのは死体だった。
御者とその護衛数人が体から血を流して動く気配がしない。
グチュ、グチュ
咀嚼音が聞こえると怖くなって、そこから駆けだした。
それから森の中をさまよう。
「ぁれなに?」
森の中から見えたのは大きな町だった。
「それで王都にいたのか」
コクン
幸いなことに王都に近い場所だったことが救いだ。
魔力が使えない状況では凍える寒さに長時間耐えることは出来ない。
少女は森よりは安全だろうと王都のスラムに入り込み。
耳を隠して炊き出しに参加して食いつないでいたらしい。
「でも、なんでアークに接触したんだ?」
「……魔力が残っていたから」
(魔力が?)
そういえばエルフは魔力の可視化ができたな。
だけど
「攫った奴らの仲間だと思わなかったのか?」
「ち、ちがいますよ?!」
アークはうろたえる。
「それはないわよ」
だが横から否定の声が入る。
「なぜだクラリス」
「私たちエルフは魔力を見ることができるのは知っているわね?」
「ああ」
「けどそれは他の種族には見えない。だからエルフは子供のころに魔力の色を変えるやり方を教えるの」
つまり、それで危険かどうかを判断するとのこと。
例えば誘拐に会った際は魔力の色をとある色に変化させて助けを求めたり、その魔力を纏っている存在は危険と言うことを周囲に教えたりするのだとか。
今回の件だとアークに残っている魔力には警戒の色がついてなく、これで安全だと理解できるのだとか。
「俺にもついているのか?」
「もうつけてないわよ」
もう、ってことは付けてはいたんだな。
「だから安心してアークに助けを求めることが出来たんだな」
「ぅん」
ということで少女はアークたちに連れられてアズリウスにたどり着くことができたらしい。
さて少女はクラリスが保護するとして……
「どうすべきかな」
そこまで大きい組織だとエルフ達が自分たちで潰すといろいろと厄介ごとが起きそうだ。
(ここは無難に協力していくのが得策か)
エルフからは戦力をこちらからは情報を出して動きを制御できるようにするのが一番穏便に済ませられる。
俺は少女と楽し気に会話をしているアークを見る。
「……………使えるな」
幸い、デットと面識があり制御することもできるだろう。
さらには良くしてくれた人族の子供を蔑むほどエルフ達も落ちぶれていないだろう。
ニヤり
ビクッ!!×5
「アーク、君たちは冒険者だったよな」
「は、はい!そうですけど……」
「では君たちに依頼をしたい」




