なぜここに?
それからほかのエルフの生活も見ていたがどれもある程度似通っていた。
「バアル様、方針は決まりましたか?」
馬車の中でリンがどうするのかを聞いてくる。
「ああ、魔道具を売る」
「「???」」
一緒にいたラインハルトまで頭を傾げている。
「エルフに困っている部分なんてないと思いますが?」
現にほとんどの魔道具の役割を魔法で何とかしている。
だけどな
「それは火を使ったり氷を使ったりと原始的な部分が多いんだよ」
冷蔵庫みたく氷要らずに物を冷やしたり、レンジみたく焦げ目をつけずに物を温めたりなどはできない。
ということでアルムに相談しアルム派のエルフに魔道具を配っていった。
「で進捗はどうだ?」
「そうだね、思ったよりも好評だよ。いろんなエルフがあの魔道具を求めている状態になったね」
魔道具を配ってから2週間が経過した。
現在、アルムの離れで報告を聞いている。
進捗としてはかなりの要領で進んでいるようだ。
「にしてもいいね、これ」
アルムも自室でマッサージチェアに座っている。
「おかげで人族、もっといえば君との交流を求めてくるエルフがかなり増えたよ」
「意外ですね、様々な魔法を使えるエルフなのに魔道具に頼るなんて」
リンは必要ない物なのだからそこまで需要がないと思っていた。
「そうじゃないんだよ、エルフだって楽できる部分は楽をしたいんだよ」
例えば、川からは遠いが水道を引いている家と真横に川が流れていて水道を引いていない家、どちらがいいかとなる。
すると当然前者が多い結果となる。
エルフが使っている冷蔵庫はその日の気温によって氷の解ける速度が違く、不安定だが、イドラ商会の冷蔵庫は周囲の気温など関係なく、さらにはいつまで稼働できるかなどの機能も付いているから便利さが違う。
他にも似たようなもので魔道具が便利だと多くのエルフが気付いた。
「これで人族の印象は多少緩和されたか?」
「そうだと言いたいけどまだ微妙だね」
アルムの話だと原因は誘拐にあるようだ。
「大半のエルフは誘拐をしているのが人族だということを知っているからね」
それは仲良くしようとは思わないな。
「ならどうするんだ?」
「君の権限で僕たちに人攫いをしている奴らを潰す許可をくれれば問題ないよ」
「それぐらいならすぐに取ってこよう、それと一つ頼みがあるんだが―――」
残念ながら俺の名前だけでは効果が薄い、なので一度アズリウスに戻り王宮と連絡をとることになった。
「ということで人攫いをしている組織を潰す許可をください」
『ふむ、よかろう。もともと我はそんな組織を認めた覚えはないのでな』
アズリウス戻ると魔道具が使えるのですんなりと連絡を取ることができた。
「それとですね、グラス殿に人攫いの組織を洗い出してほしいのです」
『交渉材料になりそうなのか?』
「ええ、確実に」
『わかった、我から指示を出しておこう』
「ありがとうございます」
ということで連絡が来るまでで待機することになった。
(アルムに連絡だけしておくか)
事前にアルムよりもらった紙に問題ないことを書くと鳥の姿になって飛んでいく。
「……これ便利だよな」
速度は俺の魔道具の方が格段に速いが距離は魔道具を中継するため限られる、だがこの紙だと時間はかかるが距離に制限はなくなる。
暇になったので屋台などを巡る。
「「………」」
「「「「「………」」」」」
すると偶然なのか良く知っている顔に出会った。
「なぜここに」
(それはこっちのセリフだ)
すると五人の後ろからもう一人やってくるのがわかる。
「あ、ぁの」
何やらフードを被った気弱そうな少女だ。
身長は俺達よりも少し小さいくらい、たぶん4歳くらいだろう。
「ぁれ?」
すると少女は俺の方を見て首をかしげている。
「お兄さん、ノストニアから来た?」
「「「「「!?」」」」」
「へぇ~」
……………俺の予想が正しければ、こいつは。
「バアル、終わったの?」
今度は俺の背後からクラリスがやってきた。
「って、その子は……」
「クラリスさま!!」
少女はクラリスに飛びつく。
「なんでこんなところにいるのですか?」
クラリスの護衛をしていたリンはアークたちをみてそうつぶやく。




