報酬とこれからの動き
「ふぅ~」
風呂は一つの露天風呂のみで周囲にはシャワーのように使えそうな蔦がある。
露天風呂に浸かり、空を見上げると星空が見える。
(光源があまりないからはっきりと見えるな)
空には天の川を連想させるぐらいの星が見えている。
チャプン
すると横に誰かが入ってきた。
「どうだい、城自慢の浴場は」
「最高ですね」
入ってきたのは桃色の髪をしている青年、アルム王太子だ。
「さっきみたいな口調でいいぞ」
「では遠慮なく」
「それと僕が来るのは感じ取っていたかな」
気配で近づいてくるのがわかっていたのであまり驚きがない。
「やはりアルカナ持ちだからかお互いの感覚がはっきりとわかるね」
「……アルムもそうなのか?」
よく見ると、髪に隠れてはいるが額の場所に腕の紋様と同じようなものが入っている。
「ああ、私は【皇帝】のアルカナだ、君は?」
「……俺は【塔】のアルカナ」
そういうと笑顔になり嬉しそうになる。
「良かったよ最初に【塔】と出会えるなんて、しかも友好的に」
「どういうことだ?」
まるで【塔】に警戒しているような物言いだ。
「あれ?バアルはアルカナについて知らないの?」
「ああ、ダンジョンの報酬で出た」
その後に槍が壊れ、仕方なく使うと契約者となったことを伝える。
「じゃあ何にも知らないのか」
「アルカナには何か秘密があるのか?」
「ああ」
「教えてもらえないか?」
すると少し考えこむ。
「……じゃあ今回僕に協力してくれるなら教えよう」
「人族との交易を進めろと?」
それにアルムは首を振る。
「君たちも馬鹿じゃない、内乱の火種なんて持ち込まれたくないだろう?」
「そうだな、それが嫌で俺は拒否したわけだしな」
「だからこの国と交易したいと思わせるようにする、それに協力してくれ」
翌朝、朝食を済ますとアルムの側近に案内してもらいアルムの元に向かう。
「やぁバアル、よく眠れたかい」
机の上で書類仕事をしているアルム。
「で昨日の話の続きをお願いします」
昨日風呂で受けた提案を俺は呑んだ。
「まず君たちの方だが僕が無理に政策を推し進めて国が割れるのが嫌なんだろう?」
「ああ、俺達からしたら交易して敵対の対象になるよりは交易せずにかかわらない方が無難だ」
火中の栗を無理に拾う必要はないからな。
正直どうしても交易をしたいわけではない、グロウス王国だけでも自給率は1を超えているからだ。
主目的は貴重な素材なので、そんなリスクを負ってまで欲しい代物ではない。
「で、どうやって交流したいと思わせる?」
「いくつかネタはあるんだけど、どれも微妙でね」
アルムは人族の食事、嗜好品、遊びなどでエルフの興味を向けようとしているがなかなかうまくいかないのだとか。
「なぁエルフの生活を見せてくれないか?」
何かヒントになるかもしれないと思い調べることにした。
「こんな感じですね」
俺はアルムの理解者であるルーアというエルフの元にお邪魔することになった。
今いるのはルーアの家で樹の洞に作られた家だ。
「食器は全部木製、家具もか」
鉄製なのは包丁や武器に使われているぐらいだ。
ここで重要なことに気づく。
「食料の保存はどうやっているんだ?」
「ここにありますよ」
木製の箱の中に氷と木の実やらが詰め込まれている。
「これだけか?」
「はい」
これは使いにくい、なにせ解凍しなければすぐさま使うことはできないのだ。
それに水気がダメなものは保存できない。
「使えるな」
「????」
他にもレンジなどは需要がありそうだ。
「火などはどうしているんだ」
「火や水は魔法で作り出せるので」
そう言って火の玉と水の球を作り出す。
(なるほどな、魔力の多いエルフだからこそだな)
人とは違い長時間維持することが難なくできる。
それゆえに人族が普通に頼っている部分がないのだ。
「……?鉄はどこから作っているんだ?」
「鉄ですか、鉄は土魔法で抽出して作り出していますよ」
(ワァオ、ほんとうに万能だな)
地面から鉄分を抽出し、形成する。魔法をかじっているからこそ、どれほどの魔力を必要とするか理解できてしまう。
(……これなら十分やりようはあるな)




