裏組織として隠れ蓑がないと
「さて、ガルバお前はこの街に詳しいか?」
「ええ、なにせ本拠地ですから」
「ならデッドという情報屋を知らないか」
「……知っていますよ」
一瞬だけ鋭い目つきになった。
その後、素直に情報屋に案内してくれた。
「いらっしゃいませ……ってなんだよガルバかよ」
「やあ、ベルヒム」
「どうしたんだ?お前がここに来るなんて珍しいな」
「いや用事は私ではなくて」
するとベルヒムは俺に視線を向ける。
そして自然な動作で頭を下げる。
「ようこそおいでくださいました」
「俺が誰だかわかっているのか?」
「いえ、ただ高貴な方とは理解できます」
すると中に案内される。
中に入ると寂れた外見には似合わず貴族を招待できるくらい綺麗にされていた。
「……」
ガルバもこの対応には少し違和感を覚えているのだろう。
「デッドを呼びますので少々お待ちください」
ベルヒムが出ていくと部屋は静かになる。
「……バアル様はデッドのことをご存じなのですか」
気になったのかガルバが聞いてくる。
「そうだな、噂は良く聞いているよ」
すると扉が開きベルヒムとデッドが入ってくる。
「………今回はどうしましたか」
デッドの声色がすごく機嫌が悪そうだ。
「おい、ベルヒムお前は席を外せ」
「ラインハルト、ガルバ、お前もだ」
デッドはベルヒムに、俺はラインハルトとガルバにこの場から席を外すように言う。
「了解しやした」
「わかりました入り口で待っているので用が済んだら声をお掛けください」
三人は部屋から出ていく。
「久しぶりだな、牢屋以来か?」
「いえ、グラス隊長の前でもう一度」
軽く世間話をし、本題に入る。
「お前のことだ使節団のことをある程度調べているんじゃないか」
「……はい、こちらを」
取り出した書類にはどの貴族が参加し、どのような準備をしてノストニアに向かったのかが記されている。
「ふむ、すこし差異はあるがおおむね事前の情報通りだな、で詳しい現状は分かるか?」
「……残念ながら確認しているのはノストニアへ入る寸前までです」
それなら仕方がない。
「じゃあ情報共有しておこう、今回俺達はガルバの伝手を使ってエルフと接触するつもりだ」
「……たしかルーアといいましたね」
「そいつと接触して互いの妥協点を探す、お前らの報告だとそいつは新王側のエルフだと聞いているからな上手くいけば新王とも接触できるかもしれないからな」
これにはデッドも少し考えこむ。
「……正直、なんともいえません。失敗する可能性も成功する可能性もあると判断します」
「じゃあ、あとは俺たちの実力次第だろな」
デッドは頷く。
「それと一つ協力してほしいことがある」
「……なんでしょうか?」
「エルフの誘拐を生業としている組織を探し当ててくれ、最悪これを交渉の材料にするかもしれない」
「……アズバン家が関わっている組織だったとしてもですか?」
「それならアズバン家には生贄になってもらうしかないな」
「っ!?」
俺は笑顔で言うがデッドは強張る。
「現実的な話、そろそろ膿を切り出すいい機会だと俺は思っているよ」
この領地の情報は既に調べたが闇組織が多すぎだ、そろそろ一掃しないといけないと判断する。
「……」
デッドはこれには賛成しようとはしない。
なにせ外国の情報は外国の裏組織を通じて入ってきている部分がある。
情報部なのでこの決断には賛成しにくいんだろう。
だが逆を言えば国内の情報も他国に伝わってしまっている可能性がある。
「安心しろ、これから魔道具が普及すれば情報はもっと簡単に手に入る」
「………………………わかりました」
ということでデッドに組織の情報を調べてもらうようにした。




