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北の統治者

結局ガルバの話を受けることにした。


話を吟味するとこの事態を解決させた方が様々なメリットがあると考えた。


そのために再び王都に訪れる。


「では、今回の件は受けてくれるのだな?」


王城の一室でグラス殿とアーサー陛下と面談している。


「ええ、内容は使節団の救出でいいですか?」

「ああ、だが手荒な手段は一切使うな」


陛下がくぎを刺す。


「わかっております、その際に一つお願いがあるのですが」

「言ってみよ」

「今回騒ぎを起こした貴族どもの処罰を私に任せてほしいのです」


今回、使節団を救出するにはこの条件が最低限必要だ。


「ふむ………………よかろう」


陛下は快諾して使節団で騒ぎを起こした犯人を好きに処罰できる権限を授ける書類を授けてもらった。


「バアル君、できるだけ穏便にな」

「もちろんわかっていますよ」


笑顔で答えたつもりだがなぜだがグラス殿と陛下の顔色は強張る。


(なんでそんな反応なんだよ)


なんか釈然としないが退室し、アズバン領への準備をする。









今回は俺とリン、それと護衛のラインハルト、それと話を持ってきたガルバの四人でノストニアに向かっている。


本当はもう少し人員を持ってきたかったが、警戒されている時点で最低限にすべきだ。


「さ、寒い、ですね」


防寒はしているがリンはまだ寒いらしい。


アズバン領の都市アズリウスではかなりの雪が積もっている。


道行く人たちは一生懸命雪かきしている。


(除雪機を作れば売れそうだな)


冬なのに全員が汗を掻きながら作業している。


「アズバン領ではかなりの雪が降ります、なので積もったらすぐに雪かきしないと家が壊れてしまいますから、下手をすると一夜で家が崩れて死人が出たということも多々聞きます」


馬車の中では同行しているガルバが外のことを説明してくれている。


そのくらい雪の量がすごいのだ。


「どかした雪はどうするんだ?」

「あのように一部にまとめてアズバン家が雇っている魔術師に火を出してもらい、溶かします」


視線の先には山のようになっている雪が周囲の数人によって溶かされている光景だ。


「見えてきましたよ、あれがアズバン邸です」


見えてきたのは3重の城壁に囲まれた、もはや城と言っていい建物だった。







「ようこそお越しくださいました、バアル様」


城の中に入るとメイドが列をなし、腰を折っている。


そして促されるがままに中に入ると豪華な部屋に案内された。


俺は椅子に座ると背後にリンとガルバが立っている。


ガルバは同じく椅子に座りそうなものだが、館を持っている貴族の許可がなければ座ってはいけない。


それがこの世界での貴族と平民のマナーだ。


俺に関しては王命で動いているので、この場合は館の主よりも立場が上になる。


ただここであまりにもな態度を取ればすぐさま噂になるがな。


しばらくして、入ってきたのが紫色の髪をした目つきの鋭い男性だった。


対面にしてみるとわかるが気が抜けない感覚がする。


「初めましてアズバン卿」


俺は立ち上がり握手を求める。


すると子供であることを何とも思わず普通に対応してくれる。


「初めまして、よく来てくれましたねバアル君」


本来なら王命を携えている俺に君づけは失礼になるが子供の外見でそうつけてしまったのだろう。


「ではさっそくアズバン家に協力してもらいたいのですが」

「それは王命に関することですかな?」

「ええ」

「……聞きましょう」


これがただの同格の貴族の頼み事なら聞く必要もないのだが、王命が関わっている以上無視はできなくなる。


「まずは私が受けた王命の内容です」

「私に教えてもいいのですか?」

「問題ないでしょう」


俺は陛下から使節団の救出を命じられたことを伝える。


「なるほど、それで私はどのように協力をすれば?」

「俺たちが交渉を行っている間、ノストニアを刺激しないようにしてもらえますか」


俺が懸念しているのは貴族が独自に雇った傭兵やら冒険者がノストニアに侵入し、戦闘になることだ。


これが起こればさらに交渉が難しくなる。


ましてはエルフは人探しのプロ、侵入してもすぐに見破られてしまう。


「ふむ、ではノストニア周辺に兵を配置し許可なきものが入れないようにしましょう」

「……ある程度距離は離してくださいね」


刺激しないようにと頼み込む。


「わかっていますよ、ほかには何かありますか?」

「いえ、これ以上頼るのは」


アズバン卿に頼めるのはここまでだ。


ここから先は部外秘になる。


「そうですか、ではなにかありましたらまた訪ねてきてください」


こうして俺たちはアズバン家を出る。

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