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一つの別れ

「バアル様!!」

「リン、穴の周りを削って埋めろ!!」

「『嵐撃』!!」


俺が告げるとすぐさまリンは刀を抜き、『嵐撃』を穴に向けて放つ。


ガガガガガガガ


岩が削れ、穴に落ちていく。


そしてかなりの足場を削り、ようやく穴が埋まった。


「はぁあ~~~」


どっと疲れた。


「あんなやつが潜んでいるとは思わなかった」

「本当ですね、生きている心地がしなかったですよ」

『まったくだ』


俺、リン、狼はぐたっとする。


「あれってそこまで強いんですか?」

「「『……………………』」」

「な、なんですか?」


(((鈍感はいいよな)))


三人(二人と一匹)は同じ感想を抱く。






「そういえば、あの樹がどうしたんだ?」


蛇が現れる前の狼の態度が気になる。


『そうだ!?急いで戻らないと!!!!』


何やら焦燥感を含んだ念話が伝わる。


「お、おい」

『急いで戻る!!!!!』


そういうと俺たちを引っ張り連れていく。










それからまた1日かけてあの森に戻って来た。


『じいちゃん、!?』


二日ぶりに見た樹は枯れ果てた姿になっていた。


「どうしてだ?あと三日は大丈夫のはずだろ?」


多少読み違えるとしてもここまで大幅に読み違えはしないと思うのだが。


『………俺のせいだ』


話を聞くと、狼と樹は契約で繋がっている。


それは魔力の受け渡しをしたり、呪いなどの肩代わりすることができる。


そして疑問に感じてた黒い液体に触れても無事だった理由、それがこれだった。


「つまりはあの黒い液体の影響を肩代わりしたせいで樹がこんなになっているわけか」

『ああ………』


狼は悔やみきれない顔をしている。


なにせ助けようと出かけたのに自分のせいで死にかけているのだ。


『……おぉお、戻って来たか』


意識が戻ったのか念話をしてくる。


「大丈夫なのか?」

『………』


無言なのが答えだ。


『ごめん、じいちゃん』

『いや、これも定めじゃよ』


弱々しい声には満足げな感情が混じっている。


(狼を守れたんだ、悔いはないということなんだろう)


だが狼はそうもいかない。


『じいちゃん、じいちゃん!!!』


何度も何度も呼び掛ける。


『よく頑張ったな、だがこれからは注意しなさい、もう儂は守ってやることはできないのだから』

『いやだ、いやだよ』


だが狼は樹に体を擦らせて離れないようにしている。


『ではこの子を頼んでも良いか?』

「ああ、だが狼が嫌だというなら世話はしないぞ」

『それでいい』


俺たちは成り行きを見守る。


『狼よ、一ついいか』

『……なに』

『儂に名を付けさせてくれないか』


それに狼は静かに頷く。


『ではウルでどうだ』

『…………うん』


鑑定のモノクルで見ると狼にウルという名前が付いた。


『よかった、これで心残りもない。ではウル、最後にお主の手で介錯を頼む』

『!?』


これには狼も動揺する。


『誰かの命を繋ぐ、だができればウル、お前の命を繋ぐ役割をしたいのだ』

『………………………………分かった』


悩みに悩んで狼、いや、ウルは樹の気持ちを受け入れた。


『ではウル』

『……なに?』

『元気でな』

『!?…………うん』


そういうとウルは樹に爪を立てる。


すると先ほどまであった気配が消える。


「ウル、俺たちは三日後にもう一度ここに訪れる。樹にお前のことを託されはしたが、それはお前が決めろ」


そう告げて俺は一度泊まった町に戻っていった。


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