今出てくんなよ!!
いつの間にか俺は目を閉じていた。
(ああぁ、空は青いな)
洞窟だったのだが神罰の光で穴が開き空が見えている。
「バアル様!ご無事ですか!!」
リンが駆け寄ってくる。
「そっちこそ巻き込まれなかったか?」
一応、できるだけ距離を縮めて発動したのだが。
「ええ、十分に距離が離れていたので」
体を起こし周囲を見る。
周りにはエルフの森の時のような跡が多くある。
その中にサルカザの装備も落ちていた。
「セレナは?」
「バアル様が生きているのがわかったのでアレの解析をお願いしています」
セレナは白い杖とその周囲の魔法陣を調べている。
俺も起き上がりセレナに近づく。
「どうだ何かわかったか?」
「あ、バアル様、目を覚ましたのね」
ひとまず無事を喜んでくれる。
「ああ、それでどうだ解呪の仕方は分かったか?」
するとセレナはほんのりと笑う。
「はい、使われているのは簡単な呪いです」
使われているのは【反転の呪式】と言うもので、ある程度強力な魔具の触媒と膨大な魔力さえあれば発動できる簡易的な呪いらしい。
「魔力に関してはあの王冠で賄えるからな」
それほどまでに『死の王冠』の魔力回復は強力だった。
「で、触媒になったのは……」
―――――
豊穣の儀式杖
★×7
【豊穣ノ大地】【地ノ祝福】
そこにあるだけで周囲の大地を豊かにする杖。この杖を持つ者には大地の祝福があるだろう。
―――――
「…使えるな」
おそらくこれも教会から盗んできたんだろう。
そして【反転の呪式】により効果が真逆になったのが、今回の不作の原因と言うことだ。
(サルカザはモンスターになった。そのモンスターが死んでこの装備を残したのならドロップアイテムと言えるだろう)
ということでこれはもらってしまおう。
「で、どう破壊するんだ?」
「……破壊した際に発動する魔術式もないので普通に破壊すればいいだけです」
ということで早速破壊して杖を回収する。
「バアルさま、これは……」
セレナがもってきたのは『死の王冠』だ。
「…………使い道に困るな」
「ですよね~」
とりあえず『亜空庫』に仕舞っておく。
「狼はどうなっている?」
黒い液体にしっかりと浸かったのだ、何かしらの症状が出てもおかしくわない。
『問題ない………だが』
「(問題ない?)……だが?」
『じいちゃん、反応が』
何やら悲愴な感情が念話と共に送られてくる。
ひとまず、もと来た道を戻ろうとするのだが。
ズズズズズズズズズ
来た道から嫌な音が聞こえてくる。
「……バアル様」
リンもとても暗い声をする。
本能的に強敵の気配を感じているからだろう。
狼も背中の毛も逆立ち全力で牙をむいている。
そして入り口から現れたのはとてつもない大蛇だ。
即座に鑑定のモノクルを使用する。
―――――
Name:
Race:山巻大毒蛇
Lv:2710
状態:普通
HP:54218/54218
MP:22454/22454
STR:542
VIT:843
DEX:242
AGI:219
INT:344
《スキル》
【蛇王牙:145】【森薙尾:154】【王威圧:291】【毒霧吐き:243】【身体強化Ⅱ:457】【駿蛇行:249】【暗視:876】【隠密:75】【潜水:242】【超伸縮:138】【振動感知:348】【熱感知:667】【超自然回復:245】【過食:686】【消化強化:333】【魔力視:―】【限界突破:417】
《種族スキル》
【蛇ノ王】【蛇眼】【脱皮】
《ユニークスキル》
【総呑ノ毒蛇】
―――――
「っ!?」
どう考えても対処できる相手ではない。
「全員逃げろ!!!【飛雷身】!?」
俺が全員に言うと同時に蛇は飲み込もうとしてくる。
(でかいにもほどがあるだろう!!!)
以前見たワイバーンですら簡単に飲み込めるだろう。
出口は蛇の胴体で埋まりつくしており使えない。
「(となると)リン、上に逃げろ」
俺が開けた部分から逃げてもらう。
リンは頷くとユニークスキルを使い、セレナと狼を浮き上がらせる。
リンは度重なる修練を重ね、ある程度はユニークスキルが制御できるようになっていた。
ズズズズ
蛇はリンたちの方向を向く。
「(まずい)『天雷』」
注意を引くために眼前に電撃を当てる。
ギョロ
すると目がこちらの方を向く。
「!?」
目が合うとそのまま体が凍り付いたように動かなくなる。
ジャア!!
「!!『飛雷身』!!!!」
かろうじてとびかかってくるのが見えたので瞬時に『飛雷身』で飛ぶ。
(目が合った瞬間から体が動かなくなった……)
おそらく【蛇眼】の効果だろう。
(リンたちはあと少しか)
穴の下から見るが外まであと少しというところだろう。
「もう少し時間を稼ぎたいところだけど……」
魔力が底を着きそうだ。
外までの『飛雷身』用の魔力は確実に温存しておかないといけない。
「こんなことならマナエリクサーを置いてくるんじゃなかった」
研究用にするために俺の工房に置いてある。
ジ
蛇は俺のことを見つめている。
「そろそろだな」
時間的にリンたちも外に出た頃合いだろう。
ということで『飛雷身』で瞬時に外に出る。




