枢機卿まで上り詰めただけはあるな
「さぁて、そろそろ反撃に出るとするか」
『強がりを、貴様はここで腐り果てる運命っ!?』
口上の最中にリッチの真横に移動するとそのままバベルをぶち込む。
『グベバ!?』
吹き飛ぶと同時に『怒リノ鉄槌』を発動させ、もう一度『飛雷身』で飛ぶ。
『!?【怨念の障壁】』
何とか防御しようと怨霊の姿をした盾を出現させるのだが。
「ふん!!」
バキン!!!!
『怒リノ鉄槌』を維持したまま『パワースイング』で振りぬくと、障壁をブチ破りリッチの左腕を削り取る。
『なぜだ!?なぜ!!私は力を得た!!!これならば貴様に勝てるはずなのに!!!!!【死者の呪縛】』
欠けた体から複数の骨の鎖が伸びてしばりつけようとしてくる。
(だけどスピードが全く足りない)
『飛雷身』で簡単に避けられる。
『くっ、こうなれば―――』
なにやら長々しく詠唱を綴る。
だが
「そんな状態は殴ってくれって言っているもんだぞ」
すぐさま目の前に飛ぶと殴りかかるのだが。
ガン!
光の障壁に阻まれる。
「はぁ!?なんでアンデッドが光魔法を使っているんだよ!?」
『光魔法ではない、神聖魔法だ!!!』
「どっちでもいいわ!!」
『良くない!!!』
どうやら先ほどの詠唱は光魔法を使うための物だったらしい。
『だから神聖魔法だと言っているだろうが!!!!』
「知るか!!お前ら教会の連中はそう言っているがな、アレは完全な光属性の魔法だよ!!!」
ベースは完全に光属性だ。ならそれは光魔法って言っていいだろう。
『貴様みたいな不届き者は死ぬがいい!!『聖天斬』』
光属性の斬撃が襲い掛かってくる。
『【自然の祝福】【神の祝福】』
強化の魔法を掛ける。
「なんで光属性の魔法が掛かっているのにダメージがないんだよ!!」
普通はアンデッドに光魔法は効果てきめんだろうが!!!
『ははは!!知らないのか、神聖魔法は単純に攻撃性があるものと回復効果があるもののみアンデッドにダメージが入るのだよ!!』
ということは強化系の魔法は普通に使える訳か。
「とりあえずさっさと滅べ!」
背後に『飛雷身』で背後に飛んでそのままバベルを振り下ろすのだが。
ゴン!!
何やら白い盾が現れてバベルを防ぐ。
『もうその奇襲は通じんよ!!』
すると再び同じ詠唱を行う。
(そんな隙はあたえない)
すぐさま死角に飛び再び振り下ろすのだが。
『そう来ると思っていたよ!!【怨みの奔流】』
リッチの体から闇のようなものがにじみ出て周囲を飲み込む。
「厄介な手だな」
何よりも俺が移動した瞬間に自身の周囲を攻撃してくる。
これでは移動した意味がなくなる。
(さっきの一撃で殺せなかったのは痛いな)
光の盾とあの闇で『飛雷身』からの一撃がなかなか入らない。
『ふむ、やはり一度使った後すぐさま使うのは無理なようだな』
「………」
リッチの言う通り『飛雷身』は連続で使うのは難しい。
なにせ『飛雷身』は視認し認識した場所に飛ぶのだ、飛んだ瞬間にすぐさま周囲を完全認識するのはなかなか骨が折れる。
例えるなら手元に注意しなければいけない状態で周囲を注意しろと言われているようなものだ。
『【怨みの奔流】!!』
「っいてぇ!!!」
『飛雷身』のタイミングが間に合わずに腕の一部が飲み込まれてしまった。
すぐさま見てみると黒く浸食されている。
「リン!!!」
「はい【浄化】!!」
すぐさまリンの傍に飛び治療を頼む。
リンが【浄化】を使うと腕の黒い部分が消えていく。
『ふむ、呪術に対しての回復手段はあるのか……ではこちらでどうだろう【悪縛の天輪】』
すると今度は光の輪が現れ、俺に向かって飛んでくる。
スケルトンを蹴飛ばし、変わり身にする。
すると光の輪はスケルトンを中に納めて動きを阻害する。
「ねぇ【浄化】であのリッチ倒せないの?」
何やらセレナが助言をしてくる。
「残念だが【浄化】はアンデッドには意味ないぞ」
【浄化】は異常を正常に戻すだけ、つまりはアンデッドという種族に異常がなければ意味がない。
(前世の知識に引っ張られているな)
前世ならエクソシストやらなんやらでお祓いするイメージだが、この世界では物理的にぶっ壊してから魔法でとどめを刺すだけだ。
「『天雷』」
『【怨霊の奔流】』
正面から放つと対抗して先ほどの闇を放ってくる。
(埒が明かないな)
奇襲もなぜだがタイミングが知られているし、真正面からは自然回復力の違いで少し不利だ。
(なら多数で攻めたいんだが……)
リンたちは強化されたスケルトンに手間取っている。
「……………こうするしかないか」
考えをまとめ、実行する。




