意外な協力者
狼がリンを警戒しているうちにモノクルを取り出して、鑑定する。
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Name:
Race:白亜狼
Lv:15
状態:警戒
HP:577/577
MP:874/874
STR:34
VIT:17
DEX:28
AGI:57
INT:24
《スキル》
【狼牙:14】【狼爪:15】【防毛:7】【身体強化:19】【魔力察知:10】【臭気探知:21】【獣の勘:9】【夜目:18】【念話:5】【光闇耐性:――】
《種族スキル》
【群れで個となる】
《ユニークスキル》
【孤独ノ月狼】
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(ほどほどのステータスだな)
これならリンが圧倒できるだろう。
「………あれって」
セレナは狼を見ながら何かをつぶやいている。
おそらく知っている魔物だったのだろう。
それと鑑定をしたがバレたのか一瞬視線がこちらに向いた。
(まぁ、それでもリンを無視はできないだろうな)
既にリンは身体強化を使い、身構えている。
そしてしばらくの間二人は動きを止めた。
(何をそんなに警戒している?ユニークスキルを持っていたのは意外だが、正直素のステータスで圧倒しているだろうに)
だがそれでも動こうとしない。
「なんで二人は動かないんですか?」
「さぁ?」
これは本当にわからない。
だがリンが警戒しているってことは何かしらがあるのだろう。
(戦闘の勘だとリンはずば抜けているからな)
俺の『飛雷身』も勘だけで行先を当てるくらいだ。
「リン」
「バアル様、手を出さないでください」
そう短く告げて狼と視線を交わす。
すると突如として狼は振り返りそのまま森の中を進んでいく。
そしてリンはそれについて行く。
「おい、なにが」
「バアル様、今はついてきてください」
俺は肩をすくめながらリンの後に続く。
「あとで説明してもらうぞ」
狼に連れられてながら進むと一際大きな樹木が見える場所にたどり着いた。
(聖樹とはまた違ったすごさを持っているな)
あれは植物的にあり得ないくらいの高さを誇っていたが。
こちらは常識を残しつつ最上級に成長した太い木と言った印象だ。
そんな木の洞に狼は入っていく。
『よく来たな客人よ』
すると、頭に響いてくる声が聞こえた。
(これって)
アグラベルグも使っていた【念話】だ。
(だが……どこからだ)
あの狼の可能性はあるのだが、今やる理由がわからない。
『戸惑っておるな』
「ああ、お前はどこにいるんだ?」
『目の前におるではないか』
(目の前?)
目の前にはあの白い狼しかいない。
『ちなみにこの狼ではないぞ』
「………」
いや、じゃあどこだよ。
『わからんか?目の前にある樹じゃよ』
「は?」
即座にモノクルを取り出して鑑定をする。
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Name:
Race:千年魔樹
Lv:341
状態:衰弱・呪い
HP:3456/3456
MP:12454/12454
STR:―
VIT:247
DEX:―
AGI:―
INT:442
《スキル》
【風魔法:54】【土魔法:54】【超自然回復:56】【土壌回復:104】【魔力察知:45】【思考加速:504】【限界突破:52】【言語理解:88】【念話:176】【魔法耐性:245】【火炎耐性:34】
《種族スキル》
【伸縮枝槍】【幻惑】【光合成】【成長】【守護契約】
《ユニークスキル》
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目の前の樹は何とトレントだった。
『わかったかな?』
「ああ」
俺は警戒を強める。
なんせアグラベルグよりもレベルが高い。
構成から魔法タイプ、それもMPが大量にあり防御力すらも堅い。
(となると生半可な攻撃を加えても意味がない)
植物らしく動くことがない戦闘スタイルだ。
『警戒するな、客人と言ったであろう』
「……わるいな、出会った魔物たちは出会い頭に攻撃してくる奴らばっかりでな」
知性があるアグラでさえ、些細なことで戦闘になったぐらいだ。
「で、俺たちを招いた理由は何だ」
『せっかちじゃのう、もう少し会話を楽しもうとは思わないのか?』
「あいにく用事がある、しょうもないことで時間をつぶしたくはない」
すると狼の耳がピクリと揺れる。
『その用事はこの地の事であろう』
「…何が起こっているのか知っているのか?」
『詳しい事は分からん、季節が二順前ぐらいから何やら不穏な気配が漂ってきた。するとたちまち同胞が衰弱していき、死滅して行きおった』
頭に響く声はとても悲しそうだった。
「お前は無事なのか?」
『ああ、我は耐性があるからな魔法などの効力はあまり効かんのだ』
先ほど見たステータスの中に【魔法耐性】があったな。
『いずれ朽ち果てるのは自然の定めだ、だが何かしらの手段で同胞が死滅していくのをただ見ているのは我慢ならん』
「ふ~ん、その何かしらの手段を使ったのが俺達だとは思わないのか?」
『昨日からお主たちを監視していた、その様子を見るにお主たちもこの異常をどうにかしたいのだろう』
「演技しているとは思わなかったのか?」
知性を持っているなら疑うのが普通だろう。
『そこはこの狼を信頼しておるからな』
『……その黒……嘘……なかった』
『すまんな、まだこいつは念話が稚拙でな』
「……正直驚いた」
この狼もかなりの知性があることが今のやり取りで理解できた。
「なるほど、さっきのやり取りは俺たちを見極めてきたわけか」
『そうじゃ、この者は勘が鋭いからな』
ということで樹と狼は俺たちを信用したらしい。




