前回と違い
それから数日もしないうちに学年最後の試験が行われ結果が張り出された。
総合試験順位
一位エルド・セラ・グロウス:400点
一位イグニア・セラ・グロウス:400点
一位バアル・セラ・ゼブルス:400点
四位ユリア・セラ・グラキエス:398点
五位ニゼル・セラ・アズバン:391点
六位イルク・セラ・ヒューイ―:388点
七位アーク・ファラクス:375点
八位カムラ・セラ・ミカヒム:374点
九位リン・カゼナギ:372点
十位セレナ・エレスティナ:368点
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武術試験順位
一位イグニア・セラ・グロウス:100点
一位エルド・セラ・グロウス:100点
一位リン・カゼナギ:100点
一位バアル・セラ・ゼブルス:100点
五位ニゼル・セラ・アズバン:98点
六位カリナ・イシュタリナ:96点
七位マウル・セラ・アレスト:95点
八位オルド・バーフール:94点
九位ハーヴェイ・セラ・ファウヒン:92点
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夏休み前とかなり変わった結果が張り出されていた。
(俺、エルド、イグニア、それにニゼルが両方でトップ10に入っているのか)
夏休み前のあれが相当効いたのだろう。
ということでこれから冬の長期休暇が来るので帰る準備をしている。
「あ~~」
セレナがソファでうつ伏せになっている。
「あ~~~~~」
「なんだよ、さっきからうっとおしい」
「聞いてくださいよ、まさかのリンさんに学力で負けてしまったんですよ」
前世の年齢で言えば高校生が小学生に同じテストで負けるような感覚だろう。
「お前はきちんと復習しなかったじゃないか」
「うぐっ」
ゲームの知識があるからと高をくくって勉強しなかったセレナに非があるだろう。
「で、リンさんはどこに行っているんですか?」
「今、道中での食料の買い出しを頼んでいる、すぐに戻るだろう、それよりもさっさと準備をしろ」
「は~い」
こうして俺はリンとセレナ、カルス、ノエル、カリンを連れてゼブルス領に帰還する。
「はぁ?不作ですか?」
実家に戻るとすぐに父上から呼び出しを受けた。
「そうなんだよ、ここ2年ほど麦の収穫が落ち込んでいてね」
そういいながら、去年、一昨年の収穫量が書かれた書類を見せてくる。
「はぁ、あまりおかしい数値ではないと思いますが」
去年は凶作、一昨年は不作と言った感じだが。
別に特段おかしいとは思えない。
「じゃあ文官に調べてもらった今年の予想収穫量がこれになる」
「……………は!?」
記されてあった数値は今までで見たことがない数値だ。
(おかしい、さすがにこの減り方は異常、いや、何者かが手を加えているな)
これで父上に呼び出された意味が分かった。
「でどうしろと?」
「簡単に言うとこの事態の解決をお願いしたい」
ということでリンとセレナを連れて一番大きい農作地に来ている。
「あの~なんで私が呼ばれたんですか?」
セレナは自分が連れてこられたのか疑問に思っている。
まぁ、理由なんて一つなんだが。
「セレナ、お前の知識で物の値段が急激に上がる騒動は無かったか?」
「???…………ないわね」
そうか、オークションの時のようにあらかじめ情報を得られれば相当楽だったのに。
「バアル様、何で値上がりと関係があるのですか?」
リンは疑問を浮かべている。
「…………いいか説明するとだな」
この世界では貨幣の価値はどれだけ作物を生産できたかで決まる。
まぁ細かく言えば一概には言えないが。
作物が少ないと物の物価が上がり、作物が多いと物の物価が下がりやすい傾向があるのだ。
(向こうだと為替やら貴金属なんやらでお金の価値が変動するからめんどくさいが、こちらは割と単純になっている)
通貨の基本価値が食料で換算で来ているからあまり難しくはない。
そのことを一通り説明する。
「ふむ………なるほど」
反応を見るに細かい部分は覚えず、大部分だけ理解した感じだな。
「で、値上がりから今回の原因にたどり着けると考えたが空振りだったか」
「ごめんなさい」
「謝る必要はない、もとよりあればいいなという程度だ。セレナを呼んだのには魔法の知識が使えるかと思ってだ」
以前学園の図書館で魔法を覚えさせたのはこういう時に使えるからだ。
「それでなんでこの場所に?」
俺は一冊の資料を見せる。
「一昨年、一番収穫が少なかったのはこの場所なんだ、そして次の年はさらにひどくなり、周辺もつられるように収穫量が落ちて行っている」
予想が正しければここが不作の理由のはずなのだが。
「なんか寂れた場所ですね」
そこには草木すら生えない大地が広がっていた。
(毒?にしては広がりすぎだ、こんな広範囲に使うとなれば嫌でも人目に付くだろう。ほかには周囲の栄養すら取り込む草木……は、ないな。すべての草木がくたびれている、自身も滅ぼす植物なんていないだろうし。あと残っている可能性は急激な土壌の変化だ、が、文官の調べで土壌に変化はなかったらしい、だとすると…………魔物の影響か、もしくは)
「……呪い」
セレナの口から考えていた言葉が出てくる。




