二つの素材
収穫祭最後の日。
この日は父上と母上が来ることになっていた。
「それにしても学園なんて久しぶりだな」
「そうですね」
学園祭に二人と弟と妹、それにその世話係に護衛と結構な大所帯になっていた。
「では案内を頼むよ」
「謹んで辞退します」
「あら、どうして?」
正直に言うと気疲れしているからゆっくりとしていたいのが本音だ。
「俺が案内するよりも学園がどう変わったか見つけるのが楽しいと思いませんか」
「ふむ、それもそうだな」
「そうね、じゃあ代わりに二人の面倒見ててね」
ということで俺が二人の面倒を見ることになった。
「これはこれで面倒だな」
ベンチに座りながら左右に置いてある籠の中を見る。
中にはこんもりとクッションや布が置かれ、快適な場所になるように配慮されている。
「かわいいですね~」
「ほっぺ、ぷにぷにしているわ」
リンとセレナは二人にかかりっきりになっている。
その時ふと気になったことがある。
「そういえばセレナ、ダンジョンの報酬は何を手に入れたんだ?」
「えっと………これです」
―――――
闇石の欠片
★×3
闇属性の魔力が宿った石。これを使用し闇魔法を行使すると術の規模が上がる。
―――――
―――――
ルビーのブレスレット
★×3
ルビーが装飾された腕輪。女性に人気。
―――――
「はずれだな」
「まぁそうなんですよね」
「だが、壺で合成するアクセサリーじゃないのか?」
「ううん、必要なのはダイヤモンドのネックレスよ」
てかそれならどこかの店で売っているんじゃ?
「店売りでもレア度が3ないとできなくて」
熟練の職人なら10個に一つぐらいは作れるだろう。
「それに金額が高いから私じゃ買えそうにないから……」
セレナは平民の出だ。
今は俺が雇ってはいるが給金はイドラ商会の幹部と同じほどしか渡してない。
(まぁ金貨7枚は優に超えるだろうからな)
ダンジョン産のアクセサリーは形が変わらずただ削ってあるだけなのだ。
だが職人が作ったアクセサリーは違う。
きちんと宝石の形が特別になっているのだ。
「それくらいは経費で出してやる、代わりにもう一つの素材も教えろ」
「本当に!!」
セレナは喜んで話し始めた。
「必要なのは純魔石、それもレア度3以上の」
純魔石とはダンジョンの宝箱からしか出ない素材だ。
魔石にも火石、水石、土石、風石、雷石、光石、闇石とあるが、これは属性魔力が籠っている魔石だ。
そして純魔石、つまりはどの属性にも属さない魔石はかなりの希少性を持つのだ。
理由は魔物にある。
魔物は一定以上の実力を持った存在なら、体内のどこかに魔石を保有している。
だが、魔物には何らかの属性を持つものが大多数だ。
ゴブリンなら火と土、オークなら火と水と言った具合にだ。
だから基本はダンジョンの宝箱などでしか手に入れることができない。
あとは極稀に純粋な魔力だけを持つ場合があるぐらいだ。
つまり手に入れようとしているのはかなりの希少性がある。
「いいだろう、商会に言って買い付けてもらっておく」
「はい!ありがとうございます!!!」
「それとリンは何か欲しいものとかあるか?」
セレナだけ贔屓したらおなじく雇っているリンに不満が出るだろう、ここは一応聞いておく。
「そうですね…………ではどこかおいしいお店に連れて行ってください」
「了解だ」
そして何の騒ぎもなく最後の収穫祭を終えた。




