アルカナのデメリット
「いいな?」
「はい」
準備が整うと俺はリーパーの眼前に立つ。
ブンッ!
素早く鎌が振り下ろされるがバベルで弾く。
(バベルが透過しないなら都合がいい)
それから何度も打ち合い、癖を見抜く。
(縦の振り下ろしから左から振りぬき、そしたら柄で突き距離を取らさせられる、この動きが軸になっているな)
ある程度動きが読めたら本番だ。
「さて上手くやってくれよ、『真龍化』」
身体強化を発動する。
ギィィン!
本気で打ち合ったら若干力負けしているのがわかる
(この状態でも若干力負けしているな………違うな、この感覚はさっきと同じ)
ステータスが大幅に強化されたのにも関わらず先ほどと同じ感覚がする。
(結論は相手のステータスに合わせて変化する形か)
だが素早さは力ほどに変化させられないのか明らかに俺の方が速くなっている。
それから何度も打ち合いほんの少しの隙を探す。
そしてすぐさまその隙が訪れる。
大振りで右から振りぬかれる。
「『パワークラッシュ』!!」
鎌を真下から強引に打ち上げる。
さすがに鎌を放すことはなかったが腕を上げることには成功した。
そしてその瞬間
「『太刀風』!!」
リンが放った風の斬撃が自由自在に動きローブを翻す。
そしてその瞬間に
「『怒リノ鉄槌』」
剥き出しになった、ほんのり透けている体に打ち込む。
俺が見た中身は薄い幽霊の体だったのだ。
ならば光属性の攻撃である『怒リノ鉄槌』はかなりの効果があるだろうと踏んだ。
結果はどうだ
アァアアアアァアアァァァァァ
亡者の叫びのような声を上げ下の方から消えかかっている。
『………ふむ、今代のアルカナ持ちに倒されるとはな』
「!?」
頭上からしわがれた声が聞こえてくる。
上を見るとローブの中に老人の顔があった。
「は、え、だれ?」
『ふむ近代の【塔】は何も知らないのか』
すこし冷静になろう。
こいつは俺のことをアルカナ持ちと言った、つまりはこいつもアルカナシリーズのことは知っている。
「それよりあなたは?」
『私か?私はアルカナ【死神】の保持者、ヴィクスだ、いや“だった”だがね』
「アルカナ?塔?死神?」
混乱しているリンは置いておいて話を進める。
「まだ戦うか?」
まずこれが知りたい。
敵じゃないなら問題ない、だが敵の場合は
『いや、すでに勝負はついたよ、その証拠に足元から消えかかっているだろう?』
ヴィクスの言う通り既に膝まで無くなっている。
『それにしてもすごいな、アルカナだけでなくユニークスキル持ちか』
何で知っているんだ?
『何で知っているかって顔だね、簡単だよ、先ほどの殺し合いは私も見ていたから』
「あなた自身が戦っていたわけじゃないんですね?」
『いかにも、私は呑まれた存在、だが既に死が確定した状態になったから理性も元に戻ったのだろう』
「待て、呑まれた?どういうことだそれは」
俺もバベルを使用していればこのような状態になるのか?!
『安心しろ、普通の使い方をしていれば呑まれることはないだろう』
「じゃあ、なんでそんな存在になったんだ?」
『簡単だ、我を見失ったからだよ』
ヴィクスの話だと、彼はかつてアルカナシリーズの【死神】を持っていたらしい。
そしてある出来事があり、殺意ですべての意識が塗りつぶされるとこのような状態になっていたとか。
『ほかにもいろいろ聞きたいことがあるが時間だ』
首から下はすべて消えている。
『ああ、いま私も行くよ、リル』
最後にそう言って消えていった。
色々気になることがあったがとりあえずダンジョンをクリアする。




