期待外れ
あれからいくつもの道を行ったり戻ったりしてようやくゴールにたどり着いた。
道中では拳サイズの蜘蛛が体に纏わりついていたり、暗闇からずっとこっちを見ている黒猫がいたりして少し騒がしくなったが、怪我らしい怪我もしないでここまでこれた。
次の階層はどこかの屋敷の中だ。
「ここは?」
「魔女の館よ」
魔物の種類は下の階の6種類と、この階で出てくる魔女の7種類だ。
「クリア条件はな、!?」
会話をしていると横から氷の槍が飛んでくる。
そちらを見ると青い仮面を着けたとんがり帽子をかぶった、いかにも魔女といった存在がこちらに杖を向けている。
次はセレナに向かって氷の槍を飛ばし始める。
氷柱をバベルですべて砕く。
そして『飛雷身』で斜め後ろに飛ぶとそのままバベルで魔女を両断する。
「それでクリア条件は?」
「え~と、クリア条件は魔女の魔法陣を破壊すること」
それからの話だと、魔女は魔法陣から無尽蔵に生み出されてくるみたいで早く倒さないと、どんどん難易度が上がっていくとのことだ。
「あと魔女の魔法陣は7つあって、それぞれ属性ごとに分かれているわ」
ということでさっさと行動するに限る。
出てくる魔女やほかの魔物を倒しながら進むと、一つ目の魔法陣のある場所にたどり着いた。
「これがか」
部屋の奥の床に魔法陣が書かれており中央に水晶が置かれている。
「あれを破壊すればいいんだな」
「はい」
ということで早速水晶を割ろうとしたのだが魔法陣の中、総てが炎で包まれた。
「この部屋の中にいるすべての魔女を倒さないとあの炎は燃え続けるの」
と言うことはさっさと殺しつくせばいいんだな。
ということで『飛雷身』からバベルを振り下ろす。
これを繰り返すだけで一分もしないで部屋の中の魔女はすべて消滅した。
また魔女が作り出されてもめんどくさいのでさっさと壊す。
「これで一つ」
周囲には魔女の魔石が散らばっている。
それを総て集める終わると部屋を出ようとするのだが。
「セレナ、なにやっている?」
セレナは部屋を出ようとはせずに止まっている。
「私……役立たず………」
何やら悲壮な顔をしている。
「おい」
「はい!」
「さっさと行くぞ」
今度は素直についてきた。
それから3つ同じように破壊をしたが、その際にどんどんセレナの顔が悲壮感が増していった。
「さっきからどうした、まるでまずい飯を食べた時の顔だぞ」
「………だって」
するとダムが決壊した時のようにしゃべりだした。
「だってこれ!完全な寄生じゃん!コアゲーマーとしてはこんな事態は屈辱なのよ!なによ、そのユニークスキル、チートじゃない!!!雷の速度で移動する、そんなの人間の目で追えるわけないじゃない!!ほかにもステータスの数値からまずおかしい!!なんで成人男性で10程度なのにその10倍ほどの数値なのよ!!しかも知能の部分だけやたらと高いし!!私にももっと強いユニークスキルが欲しかったわよ!!!!」
それからなにやらわからない言葉などが飛び出してきたが、すべての鬱憤を吐き出すことができたのだろう。
「はぁはぁはぁ」
「どうだ、すっきりしたか?」
「はい」
「じゃあ続きと行こう、と言いたいがこれから後はセレナお前にやってもらう」
「……同情ですか?」
まぁ先ほどのことと考えるとそう捕えられてもおかしくないだろう。
「違うといって信じるか?」
「……」
「確かにユニークスキルの差やステータスの差は存在する。だけどそれを埋めるようにするのが技術だろう。俺が見た限りではお前はまだユニークスキルを使いこなせてない」
「……どうしてそう思うんですか」
「前にお前が言ったじゃないか、思考を二つに分けることができるって」
「そうです」
「今やっているのは二つの脳で一つの体を動かしているだけだろ?」
「……はい」
セレナは接近戦に弱い、だから接近戦にすべてのリソースを割いている状態だ。
代わりに軽快に想像通りに動きやすくなるが、それはそのユニークスキルの真骨頂じゃない。
「なら今後からはユニークスキルを使わずに戦え」
「え?」
ということでセレナを引っ張り、残りの魔女の部屋に放り投げる。
「へ!ヘルプ!?」
魔女の魔法を避けながらこちらに助けを求めてくる。
「いいか、ユニークスキルを使わず、魔女を全滅させろよ」
「無茶を、ひぃ!?」
飛んできた岩塊をセレナは避ける。
「さすがに危険になったら助けるが、ユニークスキルを使ったなら一切助けないからな」
「そんな!?」
ということで必死になりながら躱し、そのまま魔法で戦う。
(まぁ、剣よりも魔法の方が今のところは戦いやすいだろう、っと『飛雷身』)
無論、俺も攻撃される対象だ、攻撃されては距離を取りを何度も繰り返す。
(そろそろ限界かな)
当然ながらセレナは多数を相手にしているのだ、じり貧になるのは当然だろう。
「期待外れだな」
「っ!?」
するとセレナの動きが変わり始めた。




