超特殊迷宮型ダンジョン
収穫祭では夜になっても明るく、屋台の人たちは酒を飲んだり談笑したり、腕相撲やらなんやらで楽しんでいる。
そんななか俺たちは学園のダンスホールまで来ている。
なかにはドレスコードをした貴族が多く集まっていた。
むろん俺たちも着替えている。
俺は青をベースとした服に、リンは深い緑色のドレスを、セレナは淡い黄色のドレスを着ている。
「で、これで最後なんだな」
「はい、ここで踊った相手とダンジョンに入ることができます」
……それは初耳なんだが。
「……踊った相手と?」
「はい!今回のダンジョンは男女のペアで挑むダンジョンです」
とりあえず、俺はセレナのほっぺを両方向に引っ張る。
「痛ひゃい!痛ひゃい!!」
「今すぐ知っていることを包み隠さずに全部話せ」
「わ、わかりました」
このダンジョンは学園祭を一緒に回った男女のペアでしか挑めないもので、その選定がこのダンスホールで踊った者となるのだそうだ。
ついでに俺の好感度をあげたくてダンジョンの話をしたそうだ。
「こ、これで全部じぇす!!」
「なるほどな」
ほっぺを放すとその部分をさすりながらブツブツと言っているセレナ。
「それは今日のみか?」
「いえ、収穫祭は一日一回挑めます」
俺は考える。
(連れて行けるのは一人だけか)
戦闘力の優れているリンか、少し微妙だが知識を持っているセレナ、どっちを連れていくべきか。
(これが未知のダンジョンならリン一択なんだがな)
知識があるのとないのでは全く違う。
「セレナ、ダンジョンはどのタイプだ?」
「迷宮型です、階層は全部で3階まで」
迷宮か……。
「道はランダムか?」
「はい、日にちごとに内部は変わっているはずです」
ならリンを連れていくのが一番かな。
「他には一階層は石造りで二階層は墓地で、三階層はどこかの屋敷のような場所です」
だがこいつの知識も捨てがたい。
聞いてもこいつが居なければわかんないものもあるかもしれないからな。
「最初はセレナを連れていく」
「やったー!!」
セレナは喜ぶが、リンはなにやら難しい顔をしている。
「次の日はリンと行くこれでいいか?」
「はい!」
ということで二人と一曲踊る。
「バアル様、次は私と!」
「ずるいわよ!バアル様、わたくしとも踊ってくださいませ」
すると続々と貴族令嬢がダンスを申し込んでくる。
(全員と踊る羽目になりそうだな)
既に踊ってしまったので断るのが難しい。
結局、ダンスパーティーが終わるまで踊り続けることとなった………
収穫祭も終わり学園には一人もいない中、俺はセレナに連れられてダンジョンに向かう
「えっと、大丈夫ですか」
セレナに心配されるほど疲れているように見えるのだろう。
「……問題ない、それでダンジョンはどこにできるんだ?」
「時計台です!!」
この学園にはひっそりと建っている時計台がある。
時計台は鐘を鳴らすこともないし上に上ることもできない、ただ本当に建っているだけなのでほとんどの生徒はその存在を知らないだろう。
「で、このどこにダンジョンがあるんだ?」
時計台に着いたのだがダンジョンらしき場所はどこにも見当たらない。
あるのは作業用に作られた鉄の扉だけだ。
「だから、ここですよ」
セレナは目の前の鉄の扉を指さす。
「は?ここ?」
セレナが近づくと扉が独りでに開く。
「ほら、あったでしょ」
セレナはない胸を張っている。
中を見てみると石造りの道が長く続いている。
明らかに時計台の大きさ以上の長さがある。
「なるほど、じゃあ行くか」
「はい!!!」




