やはり使わないと!!
あらかじめ用意できていたので炎でのダメージはほとんどなかった。
『ワイバーンだがな、攻めるべきタイミングは二つ、着地した瞬間とブレスが弱まり始めたタイミングだ』
ワイバーンのブレスは何も無尽蔵に放てるわけではない、ブレスはあくまで息を吐きだすとともに炎を吐き出しているだけ、つまりブレスが切れるということは息が途切れることと同義だ。
ブレスの炎が弱まると水の膜を突き抜けて、弱くなった炎の中を走りワイバーンの足元に近づく。
僕たちの姿は炎で見えにくくなっているのでワイバーンは簡単に見失った。
「アーク!」
「うん」
僕とオルドは視線を躱してお互いの意図を確認し合う。
翼と融合している腕に近寄り、足場にして背中を駆けあがっていく。
僕は背中でオルドはそのまま腹の下に潜り込み攻撃する手はずなのだ。
「ガァアア!!」
ワイバーンは何とか僕たちを払おうとしているが、排除することができない。
(ジェナさんの言った通りだ)
『いいか、魔物にはインファイトに強いものとそうでない者がいる、その点では竜ならまだしも腕と翼が融合しているワイバーンだと懐に入られると相当弱い……それでも力業で振り払われることが多いがな』
ワイバーンは動き回り何とか僕たちを振り払おうとしているが、振り払いで言えばトロールの方がまだ手強かった。
ギンッ!!
剣で無理に切りつけると鱗で弾かれる。
(やっぱり関節や鱗の間を狙わないと)
オルドのように衝撃を中に通すことは剣ではできない。
(仕方ない、使うしかないか)
ユニークスキルと使うと僕たちがどこのだれかがばれてしまうから極力使わないようにしようとしたのだが。
「アーク!!」
考えているうちに尻尾が迫っていた。
「くっ!!」
何とか身をよじって躱そうとするが尻尾が腕に当たってしまう。
ゴギャ!!
「っっっ!!!!!!!!!!!!!!!!」
僕は三人の元に吹き飛ばされる。
「アーク君!!」
ソフィアが駆け寄って来てすぐに回復を掛けてくれる。
だが、それでも片腕は真っ赤に腫れて思うように動かない。
「これではアークは……」
「っ大丈夫、まだいける!」
幸いやられたのは利き腕ではない方だ。
剣を取る。
現在はオルド一人でワイバーンの気を引いている。
それでは長く持たすことはできないだろう。
「まって、アーク」
リズが呼び止めると一つの草を渡してくる。
「これを噛んで、そうすれば少しは痛みがなくなるはず」
「ありがとう」
草を噛むと渋みが広がって舌が痺れたが、次第に腕の痛みが無くなっていく。
「でも時間が経つと痛みは戻ってくるから注意してね」
「ああ!!」
痛みが無くなるだけでも十分だ。
僕が駆けだすと水の塊がワイバーンの顔を覆うようにし、僕に視線がいかないようにしてくれる。
「オルド!!」
「おせーぞ!!」
オルドの体にはいくつのも擦り傷が出来ている。
「アーク交代だ!!」
「え?!でも!!」
「腹の下なら目立たない!!」
僕はオルドの言いたいことが瞬時に理解できた。
「ありがとう!!」
オルドは場所を変わると背中を駆けあがっていく。
そして代わりに僕はお腹の下に潜り込む。
「ここなら『太陽の光剣』」
トロールの時のように大きくすればいいのだが、今回はさすがに時間がない。
出来たのはショートソード並みの大きさだ。
「はっ!!」
作り出した光剣で切りかかると固い鱗ですら簡単に切り裂くことができる。
ギャアアアアアアアアアアアアアアアア!!
ものすごい叫び声が聞こえてくる。
さすがのこれは痛かったのだろう。
「うわっ!?」
先ほどとは比べ物にならないほど暴れまわる。
僕たちは迫りくる尻尾や足を何とか躱す。
すると風が巻き起こる。
「!?飛んだ!!」
ワイバーンは軽く飛びあがり僕たちから距離を取る。
僕の横にオルドが下りてきた。
「どうする、飛び上がっちまうと俺たちの攻撃手段がないぞ」
すると水の塊が僕たちは包み込む。
ゴォォオオオオオオオオオオ!!
上から火焔が降り注いで、闘技場すべてを炎で包んだ。




