手合わせ
しかも
(……侍なのか?)
黒髪は後ろに結っており、刀に武士の服を異世界風にアレンジしたものを着ている。
「そこまでだ、双方剣を収めろ!」
いつまでも見ている訳にはいかないので止めに入る。
「なんだこのガキは」
その言葉を聞いて騎士たちが即座に動いた。
「無礼者が!」
「殺すなよ、話が聞けなくなる」
そういうとチンピラは取り押さえられる。
「負い目がないなら抵抗するな、ややこしくなる」
少女にそう言うと刀を収めてくれた。
「かたじけない」
「残念ながらお前を助けたわけではない、話を聞いてお前が悪いならそれ相応の罰を受けてもらう」
「大丈夫でゴザル、身の潔白を証明できればいいのでござろう?」
「できるか?」
「もちろん!」
少女はこちらを見ながら強く頷く。
その時気づいたのだが少女の瞳は翡翠の色だった。
(黒髪だから黒目だと思ったんだがな)
「どうしたでござる?」
「いやきれいな目だと思ってな」
宝石のように思えてそう言った。
「う、うむ、ありがとう」
少女は褒められ慣れてないのか頬を染めている。
「それで話を聞きたいのだが」
「うむ、全部話そう!」
それからチンピラの話と少女の話、そして村人の話を聞いて悪いのはチンピラだと言うのが分かった。
少女は俺たちが来る少し前にこの村に到着したらしい。
そして宿をがないか探しているとあのチンピラ達に出会ってしまった。
彼らは少女の刀が高価な物だとわかると窃盗を企む。
一人が注意を引き、一人がほかの人たちから見えないように壁になる、そして最後に刀を盗む役目。
そして盗みを働こうとし、刀に触れた瞬間盗もうとした男が怪我をしたわけだ。
こうして双方武器を抜く事態になり。
そして人だかりが集まり俺たちがやってきたのが顛末だ。
「てことで君はもう自由だ」
「ありがたい」
ここで俺は気になったことを聞く。
「君はこの国の住民じゃないよな?」
「そうでござる、ここよりずっと東の国であるヒノクニと言われる場所から来たござるよ」
「なぜ?言っては何だがそんな遠くの国からくる理由は無いような気がするのだが」
すると少女は顔を伏せる。
「武者修行でござる」
「は?修行?こんな遠くの国で?」
侍なんてものがいないこの国で武者修行なんてできないと思うのだが………
「修業とは名前だけ、本当は口減らしと厄介者払い」
「……お前みたいな年齢でも家を追い出されるのか?」
「そうでござる、ヒノクニでは10になれば戦場に出てもおかしくはない年齢だから」
それは何とも言えないな。
「じゃあ旅をしているのは安住の地を探してか?」
「(コクコク)」
俺は少し考える。
「武者修行と言ったか、じゃあ腕に自信はあるのか?」
「ある、同年代には負けたことがない」
…見た感じ俺と大差なさそうだが?
「ちなみに年は?」
「7つでござる」
「俺と2つしか変わらないじゃないか……」
大差なかった。
「あとさっきのチンピラなら瞬殺で殺せる……でござる」
そのござる口調はなんなんだ?
「武士がよくこう言ったでござるよ」
あっそう
「では少し腕試しをしてみないか?」
「……あなたと?」
いぶかし気にこちらを見る。
「そうだ」
「残念だけど、子供に剣を振るう趣味は無い」
「……武者修行しているんだろ、なら挑戦を受けろ」
「…わかりもうした」
俺たちは場所を移して戦うことになった。
「ではルールはお互いに有効打を一撃入れられた方が負けでよろしいか?」
「問題ない」
おれは短槍の具合を確かめながら返答する。
「じゃあこの石が地面に落ちたら始まりでござる」
少女は石を空に投げる。
石は重力に引かれて地面に落ちる
コツンッ
ダッ!
俺と少女は共に駆けだす。
俺は槍を前に出し貫くように少女は刀をいまだに鞘に納めながら走ってくる。
(抜刀術か)
俺は刀の間合いの外から槍で突くのだが少女は間合いでもないのに抜刀して横に薙ぎ払う。
(これは・・・『飛雷身』)
即座に体に雷を纏わせて加速する。
「え?!」
「マジかよ」
少女は俺が避けたことに対して、俺は俺の居た先の木に斬撃の痕が付くのに対して驚いている。
(速度も十分な斬撃が飛んでくる、厄介だ)
(あの移動速度…おそらく雷ね、避ける時に帯電していたし…)
共にある程度の予測を立てて戦力を考える。
「『飛雷身』」
俺は少女の斜め後ろに移動すると槍を振るい一撃入れようとする。
「『風柳』」
だが槍は刀で受け止められたと思ったら全く感触がなく振り抜けてしまう。
その隙を見逃さず二の太刀で俺に切りかかってくる。
その攻撃を槍を体を軸に回転させて一撃を防ぐ。
「「……」」
切り結ぶと俺は槍を振り払い距離を取る。
「仕方ない、耐えてくれよ」
「そちらも防いでくださいね」
俺は槍を投げる体勢を取り、少女は腰を低くし鞘に刀を収める。
「『雷霆槍』」
「『草薙』」
轟雷の槍と暴風の斬撃がぶつかり合う。
俺はその衝撃を食らい吹き飛ばされる。
ドゴッ
そして吹き飛ばされた先で頭をぶつけて気を失ってしまった。




