それぞれの実力
「……そういえばデッドから連絡はあった?」
「いや、一報は入れたがまだ来ない。おそらく以前の件が相当厄介なんだろう」
「それが何か気になるけど」
「こいつが言うわけないもんなぁ」
二人はベルヒムさんに詰め寄ってもしゃべらないのは知っている。
「私たちが救出できなかったらどうなるんだろうな」
「やめろ、想像させるんじゃない」
「少なくとも半壊になると思っていた方がよさそうね」
それから会話は進まず、じきにお開きとなった。
僕は話を聞いたからか空腹を忘れてベッドに戻った。
翌朝、いつも通り朝食を取り終わるとあの部屋に呼び出された。
「お前ら、オークションの日時が分かった」
なかには三人が既に待っていた。
「いつなのですか?」
「裏のオークションは三日後の正午から開催されるようだ」
「参加はできそうなのですか?」
「ああ。アークとオルドの計らいで問題なく受けられるようになった」
「まぁ代わりにお前たちが体を張ることになったけどな」
すると三人の目線がこちらに向く。
「ねぇアーク、聞いていないのですが」
笑顔ではあるのだが一種のすごみがあるソフィア。
「じ、実は―――」
僕は昨日の経緯を話した。
「―――つまりはオルドが勝手に話し合いに参加したと?」
僕の隣でオルドは正座させられている。
「まったく、私でも手に余りそうなものを………ガキども今日から三日間は私が戦闘の指導をする」
「ジェナ、手加減してあげてね」
「わかったと言いたいが、今回は無理だ死のギリギリで鍛えないとマズいだろう」
「「「お願いします!!」」」
こうして僕たちはジェナさんに指導してもらうことになった。
「さて昨日はこの二人を見たが、お前たちは何を使うんだ?」
僕たちは昨日の訓練場に来ている。
「私は主に神聖魔法を」
「私は精霊魔法に剣を使います」
「弓と短剣で~す」
「遠距離は専門外だな、仕方ないカリナ、最初はお前の腕前を見る、来い」
そう言って二人は離れていき模擬戦を始める。
「ひゅ~すごいね~カリナをああも簡単にあしらうとは~」
リズの言う通り、カリナは頑張っているが昨日の僕たちのように扱われている。
「お前は二人と違いきちんと剣術を習っているようだが、それでもまだまだだ」
「は……はぁい」
模擬戦が終わるとカリナの息が上がっている。
「おい、神官娘。さっさと癒してやれ」
「は、はい。神霊よ彼の者に癒しを“回復”」
ソフィアの魔法でカリナは回復する。
「神聖魔法に関しては中級ぐらいか」
ジェナさんはソフィアの腕前を計る。
「おい、ほかには何が使える?」
「えっと、初級神聖魔法の回復、聖ナル矢、それと中級神聖魔法の自然の祝福、炎霊宿り、聖壁です」
神聖魔法とは光魔法の上位版である。その力はほとんど回復や支援強化のみと言っていいほどだ。
「なるほどな。次にカリナ、お前も精霊魔法が使えるって言っていたな?どんなのだ?」
「はい。私が契約しているのは“泉の奔流”という水精霊の一種です」
精霊。それは魔力に意志を持った存在のことを指す。
この種族については謎ばかりでよくわかっていない。
ただ一つ言えることは契約をすると力を貸してくれる存在ということだけ。
「どんなことができる?」
「それは……ん、んーー!!」
カリナは手を前に出すと水が生み出され、それが自由自在に動き回る。
「こんな感じにできます」
「ほぉ、規模はどのくらい大きくできる」
「数分でいいのであれば大体家一つ分くらいです」
「分裂させたりは?」
「できなくもないですが、多くすればするほど大きさがドンドン小さくなっていきます」
ジェナさんは次々にカリナに質問していく。
「ねぇ~私は~?」
その間、リズはほったらかしになっていた。
「ああ、すまんすまん。じゃあお前は私に向けて矢を撃ってみろ」
「え……でも…」
矢は先端を布で包んであるけど当たれば結構痛い。
「問題ない。お前みたいなひよっこの矢なんて当たるはずがないからさ」
「むっか~!」
リズは矢を番え代わる代わる早打ちを行うが矢はすべて躱されていく。
「う~ん、まぁ普通だな」
「っ!!!!!!」
さらに速度を上げ矢を放っていくが先ほどと同じように躱されていく。
最後には矢が無くなりリズは何もできなくなった。
「そんな……」
珍しくリズは落ち込んでいる。
「お前は弓についてなんか勘違いしていないか?」
「……勘違いですか?」
「ああ、お前の矢を見ていたら分かったけど、アレは獣を射る時と同じ感じだったぞ」
「!?」
リズは猟師の家系だ、それも当然と言えば当然だろう。
「お前が今まで相手にしてきたのは知恵の無い獣だけだっただろう?」
ジェナさんの問いに頷くリズ。
「だがこれからはそれだけじゃだめだ。知恵のある生物は矢の軌道から自分が誘われることを推測できるようになる。さっきの私みたいに」
リズはジェナさんの動きを予測して矢を放っていた、だがその予測が読まれ対策されたら先ほどのように当たることは無くなるのだそうだ。
「こればかりは経験が物を言うからな………」
つまりは実践あるのみだ。
「さてじゃあ最後に全員で私に掛かってこい」




