それぞれの思惑
それから僕たちは自身の持てる力を使いジェナさんに挑んだがすべてが軽くいなされた。
「「はぁはぁはぁ」」
「まぁ確かに同年代からすれば馬鹿みたいに強いだろう。だが私の知る限りじゃまだまだ半人前だな」
息を上げて倒れている僕たちに比べてジェナさんは汗一つかいてない。
「しかし、お前たち本当にトロールを倒したのか?これくらいの実力なら倒せるはずがないんだが」
ジェナさんが僕たちの実力を訝しんでいてる。
「………今はユニークスキルを使っていませんから」
「なんだお前たちはユニークスキル持ちか」
「いえ、僕だけです」
「………なるほど、それでトロールに勝てたんだな?」
「はい」
正直ユニークスキルが無ければとっくの昔に死んでいただろう。
「なるほど、それでか。だが言わせてもらうぞ。現在のお前たちは実力不足過ぎる」
「……三人がいればもう少し」
思わず口に出てしまった。
「三人?ああ、あの子たちも戦えるのか」
僕は頷く。
「トロールの時は他の三人もいたのか?」
「……はい」
「なるほどな、とりあえず二人の力量は理解した教会に戻るぞ」
僕たちは疲れた体に鞭打って教会に戻って来た。
部屋に戻るとすぐさまベッドに入る。
(ダメだ……疲れすぎて……意識……が……―――)
あまりにも体が疲れすぎていて眠ってしまった。
目を覚ますと夜になっていた。
「オルドは……まだ寝ているのか」
隣のベッドではだらしなく寝ているオルドがいた。
部屋の外に出ると廊下には明かりもなく足音もしない、かなり遅い時間まで眠っていたらしい。
(お腹……減った)
さすがに昼から何も食べていないので空腹だ。
「ん?明かりが」
以前にエルダさんがジェナさんを紹介した部屋から光が漏れてきている。
(こんな夜遅くに誰だろう?)
扉の隙間から中を覗くとエルダさん、ジェナさん、ベルヒムさんがいた。
「―――あの五人に闘技場で戦わせるなんて!!」
中からエルダさんの怒声が聞こえる。
「仕方ないだろう。あいつらが勝手に頷きやがったんだぜ」
「それを止めるのがあなたの役割でもあるのよ!!」
エルダさんとジェナさんが言い合っている。
「とりあえず落ち着け」
ベルヒムさんが仲裁に入る。
「俺も調べてみたがオークションまで日にちがない。オークションに参加させてくれそうなところはあそこ以外ないのも事実だ」
「ですが、その交換条件にあの子たちを使うなんて!!」
「ではどうする?エルフ達にオークション会場自体を襲撃してもらうか?」
「!?そんなことをしたら!!」
「ああ、あそこにはプライドだけはくそたけぇ貴族もいる。ケガさせられた報復にノストニアにちょっかいかけるかもな」
「それじゃあだめだわ。教会もノストニアとの国交樹立させたいのだから」
「なら、自然にオークションに参加しなければならない」
「でも…」
「そこは安心しろ。私ができるだけあいつらを鍛えてやるから、最悪は乱入して有耶無耶にでもしてやるさ」
「……わかったわ」
「納得してくれたようで何よりだ。それでエルフ達から連絡が来た」
ベルヒムさんは一つの紙を取り出した。
「なんて来たんだ?」
するとベルヒムさんは手紙を読み上げる。
『オークションに参加するのは願ってもない。だがこれは人が起こした罪だ。
人族が速やかに対象を受け渡すなら、我らもこれ以上騒ぎを起こすことはない。
だがその約束が守られないのなら我らは拳を振り上げることになるだろう』
僕はいまいちよくわからない内容だ。
「どういうことだ?」
「つまりはオークションに参加させてくれることは感謝する、だがこの件は人が起こした事であり、オークションで買い戻すか、横から掻っ攫うなどし、保護をして受け渡せばこの問題は水に流してやる。だがそれができないなら強硬手段に出るぞって意味だ」
「なるほどな、じゃあどうする?」
「一番穏便なのは普通に買い戻すことなのだが……」
「お金の問題がネックですね」
「ああ、裏オークションでも珍しいエルフだ、子供だということを差し置いてもかなりの値が付くだろうな」
「じゃあ、攫った組織を襲って取り戻すか?」
「……それができればどれほどいいか」
ベルヒムさんの言葉は暗かった。
「ならどうするの?」
するとベルヒムさんが渋い顔をする。
「ここは事情を話して協力してくれそうな金持ちを探すしかないだろう」
「こんな大ごとに好き好んで首を突っ込む商人がいるのか?」
三人は唸っている。




