協力の条件
「それで話って?」
人混みを抜けて空いているテーブルに座る。
広場には落ち着いて話し合いができるようにテーブルが設置されている。
そして今ソフィアはベルヒムさんを呼びに行っている。
「あとで本格的な話し合いになるんだけど」
「じゃあ要点だけ言って」
「わかった、僕たちはルーアの弟探しに協力したいと思っているんだ」
「いらないわ」
すぐさま返された返答に僕は固まる。
「なんで?」
「確かにありがたいは、でもねこれからは私と仲間たちと協力して捜索に当たるの、そこに人である貴方たちが関わると情報が漏れる可能性が出てくるのよ」
ルーアの言う通り、僕たちが原因でエルフ側の情報が洩れる可能性がある限り信用はしにくいだろう。
「それになんで協力したいの?親切心?同情?それならむしろ邪魔になるから関わらないで」
「……ルーアの手伝いをしたいって言ったら信じてくれるかな?」
しばらくルーアは固まる。
「少し前に会ったばかりよ?」
「……ソフィアがね君の弟のことを考えたんだ」
ソフィアが屋台の少年を見てルーアの弟の現状を考えとても悲しんだことを伝える。
「そぅ、彼女らしいわね……分かったわ、手伝いたいって言うんなら話は通してみるけどおそらく信用はしてもらえないと思うわよ?」
「それなら心配ない、俺たちも目的があるからな」
後ろから声が聞こえてくる。
「ベルヒムさん」
「おう、待たせたな」
ベルヒムさん達が合流した。
「それでこいつがそうなのか?」
「はい、弟を探しているルーアさんです」
ベルヒムさんもルーアもお互いに警戒している。
「アーク、この人は?」
「俺はベルヒム、この街のしがない情報屋に雇われている者さ」
お互いが相手を探ろうとする。
「それで目的って?」
「おう、こっちの事情でエルフにこの街を襲撃されるのは少し勘弁してほしいんのさ」
「弟の件にこの街が関わっていると?」
「十中八九な、それも正確に言えば裏の組織の一つがだ」
「ふぅん、で、なんでそれが襲撃されると困るの?」
これには僕たちも疑問に思う。
裏の組織、つまりは犯罪組織ならば潰れても問題ないのでは?
「お前たちの襲撃が組織一つで収まるか?それにないくつかの犯罪組織はアズバン家が絡んでいるんだぞ」
これには何も言えなくなる。
(確かに、それだとエルフが都市その物を対象にしそうだ)
「確かにね私たちが本気で暴れるなら、かなりの被害が出るでしょうね。それにこの領地を治めているアズバン公爵家が関わっているならば領地に属するものすべてが敵になる可能性があるわ」
事前に聞かされてはいたけどルーアさんの口からきくと衝撃が違った。
「俺はそんなことを望んじゃいない、だから協力してその組織を差し出そうとしているのさ」
「なるほど……いいわ、話を通しておいてあげる」
この言葉にベルヒムさんは安堵の息を吐いた。
それからルーアは仲間に話を付け再び話し合いの場を設けることになった。
日が落ちると僕たちは教会の一室に戻っていた。
「良かったねソフィア」
「はい!!!」
ソフィアは助けることができると笑顔になっている。
「にしてもあの野郎の家が関わっているとはな」
オルドの言うあの野郎とはニゼルのことだ。
「本当に、貴族なら取り締まる方なのに」
カリナはニゼルだけでなくアズバン家にも嫌悪感を覚えたようだ。
その証拠に顔はしかめっ面になっている。
「~ん?誰か来たみたいだよ」
リズがそういうと扉がノックされる。
「皆さ~ん、エルダさんが帰ってきましたよ、それと同じくエルダさんが呼んでいますよ」
教会の子がエルダさんが帰ってきたことと、僕たちを呼んでいることを伝えてくれた。




