エルダ(聞いてないんだけど!!!)
翌日、朝早くから僕たちはエルダさんに呼び出され、教会の一室に入ると。
「よう待たせたな」
そこには昨日の店員が既にいる。
僕たちとエルダさんは席に着く。
「まず、結論から言おう、今回の件でデッドは手伝うことになった」
「そう、意外ねデッドのことだから受けないと思っていたんだけど」
「今回は事がことだからな」
エルダと店員は親しそうに話を始める。
「なにせ攫われたのがエルフだ、場合によっちゃ国が動く案件だ」
「…………は?」
店員の言葉にエルダさんが固まる。
「ベルヒム、それ本当なの?」
「ああ、本当だ、そこの少年たちの反応で確信できた」
この二人の反応に違和感を覚える。
「あのさ~あのさ~なんで国の介入を怖がっているの?王国が動けば一発で解決じゃん」
リズの言葉はまさに僕が抱いた疑問そのものだ。
「まぁガキだからそこんところはよくわかってないか」
そういうとガラの悪い店員、ベルヒムさんが説明してくれた。
まずはエルフについてだ、彼らは人よりも強く賢い。人との一対一ならほぼ確実に勝つことができる。だが生物として優れている半面繁殖力がとても弱い。彼らは長い寿命もあるし、戦闘以外で数を減らすことはなかなかないのだ。だからか彼らは結束力が高く、子供は国全体で守る宝という認識をしているほどだ。
「過去に人さらいが原因で戦争が起こったことがあるんだよ」
今回のように人さらいが原因で戦争になった歴史がある。
その結果は悲惨としか言えかったらしい。
「領主が誘拐に関わったことが判明したら、奴らは小さな領地総ての人々を殺しつくしたんだよ」
その話を聞いて冷や汗を感じた。
「本当にそこまでするんでしょうか?」
「断言できるわ」
エルダさんが同意したことにより真実であることが理解できた。
「ですが戦争になるなど……」
「理性があるならそんなことをしないと思うが」
ソフィアとカリナは未だにその話が信じられないようだ。
「なぁなんで死刑なんてものが存在すると思う?」
「……それはそこまでの罪を起こしたからです」
ベルヒムの質問にソフィアが答える。
「じゃあなんで一族総てを死刑にした記録があるんだ?全員が罪を犯したわけじゃないだろう?」
「………そうしなければ再び罪が起こる可能性があるからです」
この答えを聞いて僕はベルヒムさんの言いたいことが理解できた。
「そうだ、再び馬鹿なことを犯さないようにするために奴らは皆殺しにするんだよ」
そこまで脅せば手を出す危険性が嫌でも理解できる。
「それほどまでに彼らは仲間が不当な目に合うのが許せないのよ」
エルダさんの言葉にすべてが詰まっていた。
エルフたちはどんなことをしてでも攫われた子供を取り戻す気でいるのと。
「理解できたかガキども」
全員が頷く、僕たちはようやく事の重大さに気づいた。
「それでこれからどうするつもり?」
「まずはそのエルフに接触したい、協力してもらえるか?」
エルダさんとベルヒムさんがこちらに協力を求めてくる。
「もちろんです、僕たちはまず何をすれば」
「まずは俺たちもその攫われた弟を助けるのに手を貸すというのを伝えてほしい」
そうすれば少なくとも皆殺しにはならないだろう、とベルヒムさんはつぶやく。
「でも僕たちは居場所がわかりませんよ」
「そこは大丈夫だ、容姿や名前を教えてもらえればこちらで調べる」
ということで僕たちはルーアの名前と容姿を伝える。
「エルダ、すまんが俺はすぐに動く」
「私も動くとするわ」
「それはいいが、その前にガキたちに説明はしてやれ」
そういいベルヒムさんはすぐに出て行ってしまった。




