情報屋の常識
「それであなたたちはその人たちに会ったらどうするの?」
エルダの言葉に僕たちは顔を見合わせた。
「……ノープランなわけね」
「はぃ」
ソフィアの声は消えそうなほどだった。
「仕方ない」
そういうとエルダさんは紙を取り出し、そこに名前と住所を書いた。
「ここにいる人に会いなさい、そうすれば力になってくれるわよ、私からの紹介ってことも忘れずに伝えなさい」
「ここには誰がいるのですか?」
「この街一番の情報屋よ」
と言うことで翌日僕たちはエルダさんに教えられた場所にやってきた。
「ここだよな?」
「そのはずなんですが……」
「ぼろいね~」
「口が悪いですよリズ」
僕たちがやってきたのはボロボロの店だ。
中からはお酒の匂いが漂ってきている。
「ごめんください」
「あ~あぁ?ここはガキの来る場所じゃねぇぞ」
中に入るとカウンターに足を置いているガラの悪い店員が一人いるだけだった。
「この場所にデッドさんはいますか?」
するとさきほどまでこちらを見下ろしていた雰囲気がガラリと変わる。
「おまえ、どこでそれを」
するとガラの悪い店員から威圧が放たれた。
「教会のエルダさんからです」
「おめぇは教会のシスターか」
「まだ見習いですが」
「なるほどな、だがそいつは今は留守だ」
「そうですか……ではまた改めてご挨拶に来ます」
ソフィアに続いて店を出ようとすると店員が頭を掻いて困惑した雰囲気を出し始めた。
「おい、お前たちはエルダから何も聞いてないのか?」
「はい、この街一番の情報屋だとしか」
「他には?」
「????何も聞いていませんよ」
すると店員はめんどくさそうな顔をする。
「はぁ、仕方ねえ」
店員は近くに人がいないことを確認すると深く座り込む。
「いいか、ここはデッドに依頼を行う場所だ」
それはなんとなくわかる。
「で、さっきのは符号だ」
「符号?」
「そうだ、デッドは多忙でな、受ける依頼はある程度絞っているんだ。で子供だから説明するが他言するんじゃねぇぞ」
僕たちは頷く。
「留守と言うことを伝える、そのあとはお前たちの方が金額と依頼のことを俺におおざっぱでいいから伝えるんだ。まぁ子供の頼み事なんてたかが知れているだろうから受けないと思うがな」
そう言って笑う。
「エルダの紹介ならあまり無下にもできないな………それで何の情報が欲しいんだ?」
ようやく本題に入る。
「僕たちが依頼したいのは人攫いのことなんですが」
すると店員はギョッとした顔をした。
「……それはお前たちの友達か?」
「いえ、少し前に知り合った方が弟を攫われたそうなので」
「手伝うってか……かぁ~~~めんどくさい案件持ってくるじゃねぇか」
そういうと難しい顔をする。
「依頼の件を伝える代わりに教えろ、どの国の奴が攫われた?」
僕たちは何も言ってないのにルーアが他国の人だって見抜いている。
だが僕たちは顔を見合わす。
なぜならルーアはエルフなのだ。
ただでさえエルフは珍しく、現れても辺境の村に10年に数度程度だとホーカスさんに教えられていた。
「待て、その反応………っ~~~~~~あ゛~~~~」
店員の顔がすごいことになっている。
「そいつはエルフか?」
「「「「「!!」」」」」
「その反応で理解できた」
そういうと店員は考え込む。
「今日は帰れ、明日教会の方に顔を出すから」
そう言って僕たちは店を追い出される。
今日はそのまま教会に帰ることにした。




