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優しきソフィア

それから数日掛けてアズバン領の都市アズリウスに戻る。


「止まれ、身分証はあるか」


街に入ろうとすると門番に止められる。


僕たちは身分証をマークスさんは商業許可証を出す。


「おい、そこの君は?」

「私だけ身分証がないの」

「では入る際に銀貨一枚を徴収するのだが」


ルーアは道中に狩った獲物を換金してお金を得ていた。


「はい」

「うむ、では入れ」


僕たちはすんなりと町に入れた。


「にしても魔法ってすごいな」


門番がルーアを見ても不審がらなかったのには訳がある。


「『幻写し(ファントムヴィジョン)』よ」


ルーアの使っている魔法で人族の耳に見せているのだ。


エルフは基本的には耳さえ同じであれば綺麗なヒューマンにしか見えない。


「お前ら、おれはこれから自分の店に戻るけど、どうするんだ?」

「私は知り合いのいる宿に泊まるわ」

「僕たちは教会に行きます」


と言うことでマークスさんとルーアは途中で別れる。



「ただいま戻りましたシスターエルダ」


教会に戻ってくるとソフィアはエルダさんに巡礼を完了したことを伝えに行った。


「お疲れ様です、あとは王都に戻れば今回の巡礼は無事終わりですね」


だがソフィアは少し不満げな顔をしている。


「どうしましたか?」

「いえ……何でもありません」


その後、僕たちは教会の一室に泊まることになった。


「………」


もう少しで王都に帰れるのにソフィアの様子が少しおかしい。


「どうしたんだソフィアは」

「わからないよ」


カリナも何やらソフィアがおかしいのは気づいている。


それからもソフィアは何やら考え込んでいる。


「アーク、ソフィアを連れて少し外に出かけてきたらどうだ?」

「……そうだね」


カリナの提案で僕はソフィアを外に連れ出す。


「あれ、おいしそうだね」

「ええ……そうですね」

「面白いもの売っているよ」

「……そうですね」

「見て動物の芸だよ」

「………そうですね」


屋台でおいしそうなものを渡したり、変な形の工芸品をみせたり、なにやら大通りで芸をしているのを見ているのだが一向にソフィアの元気が出ない。


「っあ………」


ソフィアは屋台の手伝いをしている子供を見ている。


「…………」


とりあえず近くの椅子に座る。


「ねぇ何を悩んでいるのか教えてくれないかな」

「アーク」

「僕は頼りないかもしれないけど話を聞くくらいならできるよ」


そういうとポツポツと話してくれた。


「私は人は清らかに生きられる種族だと思っています。教えにあるように汚い人も居ることも知っています、ですがいつかは改心して清らかになれるのだと」


優しいソフィアは人の可能性を否定しないのだろう。


「ですが私が思っているよりも人は汚かったです………見てください、人さらいに合ったエルフの子はあのように笑えているでしょうか」


ソフィアは父親であろう屋台の人の手伝いをしている子供を見る。


仕事は辛そうだけど父親と楽しく笑っている子供。


「私は歯がゆくて仕方がありません、悔しくて仕方がありません」


ああ、優しい、優しすぎるソフィアは攫われた子を思って心を痛めているのだろう。


「じゃあ、ルーアを手伝おうよ」

「え?」

「確かに僕たちは力も権力もない、なら今できることを一生懸命やろうよ」


するとソフィアは少し考えこんで立ち上がった。


「そうですね、ありがとうございます、アーク」

「元気が戻ってよかったよ」

「アーク、私はルーアの手助けをしたいと思います、手伝ってくれますか?」


ソフィアが手を差し出してくるので力強く握る。

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