誰にでも欠点はある
ルーアがエルフだと判明してから数日、僕らはホーカスさんの出す依頼を終え巡礼の証を受け取った。
「それじゃあシスターソフィア、これにてこの地での巡礼は終了です」
「ありがとうございました」
「いや、少し堅苦しくなったけどお礼を言うのはこっちの方だよ」
ホーカスさんの依頼は教会を掃除してほしいだったり、子供たちと遊んでほしいだったり、屋根を修理するからその手伝いをしてほしいなどの雑用だけだった。
「それと彼女についてなのだが」
ホーカスさんの言う彼女とはルーアのことだ。
ルーアはここ数日で村の人たちが誘拐に関わってないと知り、さらにはこの村を通ってほかの村まで連れ去られた証拠が出てきたのだ。
そのことを仲間に説明するために途中まで一緒に行くことになっている。
「大丈夫ですよ、ルーアは」
ホーカスさんはエルフたちの報復をとても恐れている。
「だが彼女の気持ちは理解できているつもりだ、だからこの村に危害が及ばない限りは協力すると伝えてくれ」
ホーカスさんもルーアの現状は理解しているのだろう。
「アークくん、僕たちは準備できているよ」
馬車の準備を終えたマークスさんが声を掛けてくる。
「ではホーカスさん僕たちはアズリアスに戻ります」
「ええ、貴方たちが来てくれて楽しかったですよ、機会があったらまた来てくださいね」
「お世話になりました」
こうして僕たちは巡礼の目的地ををあとにした。
「ねぇ、貴方たちはなんでこの地に来たの?」
マークスさんの馬車の中でルーアさんが話しかけてきた。
「俺たちはソフィアの付き添いでここまで来たんだ」
「付き添い?」
「ええ、私の神光教には巡礼と言うものがありましてね――――」
神光教の説明をルーアにするソフィア。
「また始まってしまった……」
カリナが嘆いているようにソフィアの説明はとても長いのだ。
僕もこれで半日ほど費やされたことがあるくらいだ。
「でも~盲目的じゃない分まだましだと思うよ」
リズの言う通りソフィアはほかの宗教なども認めている。
まぁ殺人を強要する悪徳宗教などは毛嫌いするけど。
「俺はマークスさんと外を見張っているよ」
「私も行こう」
オルドとカリナは見張りと名目を付けて逃げた。
「アークにリズも聞いて行きますか?」
「ごめ~ん、昨日あんまり寝てなくて寝不足なの、だから道中に昼寝したいな~って」
ずるいぞリズ!!!
「ではアークは」
「ぼ、僕も」
「何かあるんですか」
「……なにもありません」
ソフィアの純粋な瞳に嘘はつけなかった。
その後、日が暮れるまで僕とルーアは神光教の成り立ちについて教えられることになった。
「ねぇそろそろ野営の準備をする………どうしたの」
「いえ、説法をといてたのですがなにやらどんどん元気がなくなっていきまして」
「そう…………そろそろ日が落ちる、その前にテントを張るって」
「わかりました」
カリナが入って来て野営することを伝えに来た。
「ねぇ、なんなのあの子」
ルーアはソフィアに少し恐怖したようだ。
「ま、まぁ、あれで悪気があるわけじゃないから」
「それは分かるけど限度ってものがあるでしょうに」
あれでも善意でやっていてくれているので文句は言いづらい。
外に出るとすでにオルドとカリナがテント作りを行っている。
「おう、どうだったソフィアのお話は」
平然と逃げたオルドがそういってにやけている。
「ソフィア、オルドがあとで僕たちが聞いた話を聞きたいって」
「おい!?」
「あら、いいですよ」
平然と見捨た罰だ、お前も同じ目にあってこい。
「その時はアークも一緒だよな」
(お前も道ずれにしてやる!!)
「僕は一度聞いたから大丈夫だよ」
(そっちが見捨てたのが最初じゃん!!)
それから道づれにしようとするオルドとそれを避ける僕の静かな戦いが始まる。
「また馬鹿なことやっている~」
「本当にな普通に必要ないっていえばやめてくれるのに」
二人の言葉は醜い争いをしている僕たちには届いていなかった。




